ブログ引越し検討中 (仮住まい)

yahooブログからの引越しを検討中です。現在テスト使用中。

トリアージ

左の腕はとうの昔に腐り落ちたが、
両足と右腕は残っている。 右腕……うん、残っている、親指は落ちたか。
右目は頭部右半分とともに潰れているから、左目のみで見る風景には遠近感がない。

食肉衝動はそれほど強くないが、喉が渇く。
人間を齧りたいと思うが、近づく間もなく、人間たちは悲鳴を上げて逃げていく。
人間の集まる場所に行こう、と思う。
他の死者たちも同じ方向に動き出した。

回転灯と白い壁は、どこか懐かしい、と思う。
多くの建物のようなバリケードも、ここにはない。
いや、患者を受け入れるために、ここにはバリケードを作らないことを知っていた気がする。

タンカ、ストレッチャー、怪我人、怪我人、怪我人。
それが一斉に建物の中に逃げ込んでいくのを、片目で捕らえ、追った。

廊下には動けない怪我人たちがうずくまっている、
その間を走り回る医者や看護婦の白衣も、血に汚れている。

診察着を腕まくりした若い医者の肩を掴んた。

医者は声も上げず、鋭い眼光で、まっすぐに俺を見た。
「死人は後だ、なにもできん」 
奴は身体を振りほどくと共に、俺に黒いタグを貼り付けた。
それからすぐに、うめき声を上げて腹を押さえていた別の患者の横に膝をつく―――

ふと、黒タグの意味を理解する自分に気がついた。
医者の向こうの手術中の文字や、開けっ放しの手術台が目に入ってきた。
一週間前、必死に生き残りの人々を助けようとしていた自分の姿も、思い出した。


……そっか。俺はもう助からないんだよな―――

ゾンビならゾンビらしく、人を食おうを思っていたが、なんだかどうでも良くなった。




地下鉄の中で、スマホに無料漫画のCMがあがったので、つい、読んだ。
可もなく不可もない学園ゾンビ漫画だった。

……が。私は影響されやすい。 

例によって、ゾンビの夢を見た。自分がゾンビになるのはいつものパターンだが、
バシッとトリアージされて落ちが付いたみたいな夢になったので、備忘録的に書き残す。

分類としては、自作のショートショートみたいなものかも。