緑色は陽気なのか
どこで人種差別的な発言になるか分からないので、限定記事した方がいいのかな。
写真は、昨年12月に出来たばかりの、ダブリン空港第2ターミナル。
エアリンガスは、アイルランドの航空会社で、ロンドンダブリン間1ユーロとか、
とにかくディスカウントの航空券を売るので有名だ。
機内食は有料、下手をしたら、自分で荷物を機体まで運ばせられたりする。
でも、こんな綺麗なシャムロック色に染められているので、
私はこの航空会社が結構気に入っている。
(フランクフルトからダブリンに向かうのは、時間の都合でルフトハンザを使いました)
昔書いた事があったかな、
アイルランド独特の緑色は、クローバーに似た植物の色だ。
クローバーに似たシャムロックばかりでなく、
Ever green と呼ばれる芝生もこんな濃い緑色で、
雪の積もっている下でも、緑色を保っているという。
むかしむかし、高校生くらいだったころ、
オスカー=ワイルドが大好きだったりした。
ケルト人は、Blue Blood という青く高貴な血液を持っていて
だから、芸術と文学に秀でている、という逸話が好きだった。
ワイルドの、美しさだけ追及するような、
暖かさと冷たさの同居した戯曲も好きだった。
大学教授がダブリン大学出身だったので、
質問がてら、ダブリンの話を聞きに行った。
偏ったニュースしか入って来ない時期をむかえた。
一転したのは、私の研究室の卒業生が、
ダブリン大学に就職した時だ。
気軽に共同研究や研究室訪問が出来るようになった。
そして知ることになったリアルなアイルランド気質。
この性格でどうやったらテロリストができるんだろうか?
まず、とにかく親切で好意的である。
アルコールが大好きで、飲むのも大好き。
ダブリンは首都のはずなのに、田舎の気質と言ったらいいのか、のんびりゆったり構えている。
街の風景が英国に似ていて、人がのんびりしているので、不思議なギャップを感じる。
次に、いい加減なのだ。
時間にルーズだし、サボるし、約束忘れるし、基本的に本人も周囲も困った状況に陥りやすい。
しょっちゅう困った状況に陥って、で、親切心でそれをクリアする。
最後に、めっちゃくちゃ陽気。 飲んでいれば幸せ。
日本人スタッフ 「実験装置壊れた~ 直るかなあ」
ゲルマンスタッフ 「どうしよう? 保険に入っていただろうか?」
アイリッシュの学生 「じゃあ、飲もう」
日&独 「???」
アイリッシュの学生 「今日は仕事できないし、明日になったら直ってるかもしれないし」
日&独 「直ってるわけねーよ」
困った状況というか、どうしようもなくなった時にも、全然困った様子を見せない。
インテルが来ていたり、そのほかの大企業が工場を作って、イケイケの状態で羽振りが良かった。
銀行にお金を借りる時でも、「それだけでいいのか? もっと貸そうか?」 と、
他の国の人々が、心配するくらい、経済発展に酔っていた。
元東側諸国の労働力が流れ込んで、その国々が工場や企業に土地と労働力を提供するようになって、
だからアイルランドが経済危機に陥ったのは、当然といえば当然だろう。
で、そんな経済状態の国が、どうだったかというと、
以前来ていた頃と全然変わらない (^^; 陽気でお人好しで、悪意もなくいい加減。
日本人研究者 「アイルランドの政治ってどうよ」
アイリッシュ社員 「発展するのが速かったからね~ はじけたのも当然だね」
ドイツ人研究者 「その割には、街の様子は楽しそうだね」
アイリッシュ社員 「だって我々には、ギネスがある」
日、独&米 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
アイリッシュ社員 「政治は政治、酒は酒。ほら、飲もう」
何があっても傷つけられない楽天さは、すごいと思う。
彼らに言わせると、政治話で悲観するフランス人は、理解しがたいのだそうだ。
街中で、何度もパトカーを見かけた。
英国女王がダブリンに来るから、そのための警備だ。
アイルランド人でも女王が来るのには緊張して、タクシーに乗っても店に入ってもすぐに話題になる。
昔、ロンドンの赤いダブルデッカーとまったく同じ二階建てバスを、
アイルランドグリーンに染めて走らせていた。
アイリッシュダンスが、手をほとんど動かさずに、後ろに組んだりして、
足だけでピョンピョン跳ねたり、楽しげなタップを踏んだりするのは、
昔、英国から、踊ることを禁じられていた時に、
「歩いているだけ」、「音に合わせて身体をちょっと動かしているだけ」、 と、いい逃れるためだったとか。
厳しい自然と、隣国に虐げられて、でも、その中で悔やんでいたら何もできない。
だから、それらを跳ね返すのは諦めて、今ある状況の中で、陽気でいる。
諦めるから、平穏。
そういえば、ハイクロス(アイルランドの十字架)の
真ん中にくっついている丸い輪っかは、
キリスト教でありながら、
転生思想を組み入れたものだという説がある。
次に生まれ変わる事を信じて、
ヴァイキングたちが、勇敢な死を嘆かないとか、
彼らの陽気さにつながる何かがあるような気がする。
研究室の卒業生も、私が親しくしていた人達も
申し合わせたようにアイルランドを出てしまった。
もう、この国に来る縁もないかもしれない。
空港で、ハイクロスのペンダントヘッドを購入した。
アイリッシュハープが刻まれているコインとともに、いつかまた、この街に来るまでのお守りに。
そっか。
さすがの歌鳥氏が、コメントの中で、私の言い表せなかった事を言葉にしてくれた。
アイルランド人がこれまでに知っている人達とは何か違うと思っていたのは、
ほとんどの楽天的な人達が、
きっとどうにかなるから、今は陽気に過ごそう。
というのに対して、彼らのは、
泣いても悲観してもどうにもならないから、楽しく過ごそう。 なのだろう。
翌朝、翌日、あるいはしばらく後に状況が改善されなかった時、
前者はその陽気さが終わるかもしれないけど、後者なら、ずっと陽気で居られるんだろうね。