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アライグマの憂鬱 あるいは 翻訳の難しさ

限定記事とする。

年末に書いたハムスター記事を、y*n_y*nという人が荒らしていったのだが、
その後何ヶ月も、屑コメントを投函し続けたので(←無言で消してた)
どう対処したらおとなしくなるのか、と、何度か対処法を探して検索した。

ハムスター記事のコメント欄でも対抗してくれている、
chukaさんという、米国在住の男性の他に、5ちゃんねるがヒットした。

イメージ 1  翻訳板と呼べるかどうか知らないが、翻訳家&翻訳業を目指す人のボードである。その中に、

       “コメントで絡んでる自称y*n_y*nがうるさい
        意味のあるコメントじゃなくて嫌みだけだわ
        こういう変なのに憑かれちゃったらブログ閉じるしかないな”
 
というのがあって、閉じるしかないな――とはあんまりだ、と思いながら、
そういわれてしまった人のブログを覗きに行った。
話題の人のようで、『家族破綻のリスク』との題名で、with NEWSにもその人の話が載っていた。


どうやらその人は私と同世代で、しかも、
ドイツの同じ研究所にいた可能性(支部が30くらいあるから勤務地は別だと思うが)があるようだ。

とまあ、この辺は前フリだからどうでもいい。
そんなきっかけで、読み始めることになった、この方のブログである。
ドイツ語好きの化学者、というハンドルなので、とりあえず、化学者さんと呼ぶ。 


で。私としては、とても面白いのだ、化学者さんのブログは。

聖書の解釈もいいが、翻訳ネタがいい。
yan婆のおかげで、極端に記事数が少なくなってしまったのを、惜しむばかりである。


私は語学は苦手だが、翻訳には興味がある。
映画が好きだったり、海外作家のSFが好きだったり、主に趣味側の理由だが、
日ごろから英語を使って仕事をしているから、というのもなくはない。

むかし、歌鳥氏 が管理する掲示板には、翻訳をやる方、語学の得意な方が何人かいて、
凝りに凝った翻訳話題で賑わっていた。
現在もお芝居の脚本を書いているであろう、ギリシャ在住だったという、Oさん(←ハンドルでなく本名)。
当時は数学科の大学院生で、今は会社を立ち上げているPさん(←ハンドルでなく本名)。
当時は米国の大学スタッフ、その後研究所の同僚になって、今は共同研究者のAさん(←ハンドルでなく本名)。
もちろん、歌鳥氏(←ペンネーム)もプロのもの書きさんだから、そりゃあ、言葉に敏感だよね。

何をどのように訳すか、読み手は誰か。 木下是雄(本名)も真っ青リテラシー修行の場だったわけだ。



さて、ここで一般的な翻訳でなく、科学翻訳を考える

UVカット、などでほぼ日本語化している紫外線 だが、
これは短縮しなければ、Ultra(超)violet (紫)である。
すでにUltravioletという単語になってはいるが、名残でUVだし、成り立ちは超紫。
物理学で意味を説明すれば、 可視光の紫色側の光で、エネルギーの高い光――という理由だ。

一方、赤外線は、Infra(下の)red(赤)である。
エネルギーゼロを基点にグラフを書いたときに、エネルギーの高いものが外側にいくから、
可視光の赤よりも、波長が長く、エネルギーの低い、エネルギーで考えたときの下側にある光、という意味だ。

日本語だと、可視光を中心に考えるから、可視光の両端の赤と紫よりも外側にある光、となって、
赤外線、紫外線という名になる。

イメージ 4

赤外線や、紫外線というものが純然と存在するから、同じものをさす言葉として、
Ultraviolet = 紫外線、Infrared = 赤外線 と、翻訳されている。

アライグマだってそうだ。
イメージ 2
熊、狸、犬―― 直訳してしまったら、いろんな動物名が混ざる。

どっちが身近で、どっちがわかりやすいか、把握しやすいかで、それぞれの地で呼び名が決まり、
真ん中に、そいつがいるから、言葉と言葉を対応させられる。
これが、たぶん実態(この場合はアライグマ)が、辞書的役割をしているんだと思う。


化学者さんの記事に、『光硬化樹脂』を翻訳する話題が出ていた。
光硬化樹脂を、UV-curing resinと訳してあったが、
波長は紫外線ではなく可視光だったから、light-curing resin であるべきではないか、と。

こういう人が翻訳してくれたら、ちゃんとサイエンスの観点でも正しい英文ができるだろうな、と思う。
学会発表文章の手直しや、論文向きの、英文校閲であるとも考える。


さて、この光硬化樹脂だ。
翻訳の相手や提出先が、Patent Office か Polymer Journal かで、使うべき言葉が変わると思うが、
我々(物理化学系の研究者)は、同じ物質を示すのに、
産業的には樹脂(Resin)、アカデミックには高分子(Polymer)を使っている気がする。

イメージ 3
                                 **ついでに 「エチレンはポリ化したらメチレン(CH2)と区別つかなくね?」 
                                    **と、ドイツ人のPolymer屋に食い下がった過去あり。

また、光に Light を使うか、Photo を使うかなども、もう、習慣でしかない。

硬化についても重合の結果の硬化なので、光硬化の訳ほとんどを、Photo polymerized (光重合) か、
Photo-active (光活性)、Light-active (光活性)、の言葉に対応させる。

日本語から英語に「訳」しているというより、
同じ現象を呼ぶ呼び名として、その国で名付けられているものを使う――アライグマと同じなわけだ。



今年の初め、Springerという出版社から、英文の参考書を出版した。
大学院生くらいの知識をターゲットにした専門書だから、日本文でも英文でも、専門用語的には楽だ。
前に書いていた週刊誌やブルーバックスの解説のほうが、よほどめんどくさい。

語学としての、日本語、英語の翻訳のほかに、
専門を一般に、あるいはA分野の内容やキーワードを、B分野の人にわかるように翻訳しなければならない。
どっちかというと、分野翻訳よりも、語学翻訳のほうが楽だ、私は。

もちろん、Springer に私が書いた英文は、Native の校正者に真っ赤に直されて帰ってきたけども。




先週、米国企業の方たちが日本に来て、打ち合わせをした。
自分の専門分野ではないから、専門分野の近い共同研究者を助っ人に呼んだ。(←上記のAさんである)

長年米国で仕事をしてただけあって、Aさんの英語はレベルが高い。
しゃべるのももちろんだが、分野間の翻訳できるのだ。

「γ-phase とかσ-phese とか何言ってんだよ、ぜんぜんわかんねーよ」 と仏頂面する私に、
「あ~ とりあえずいまは、BCC-like-phase と FCC-like-phase と思っててください」
      「We can separate ballistic, classical diffusion and quantum diffusion」 
        「???」
          「Normal diffusion & Hopping」  「ええええ、その訳って雑


通じりゃいい、というのが語学として正しくないのはわかっている。
でも、正しい英語・正しい訳を優先するか、内容を伝えることを優先するかと聞かれたら、内容だ。

化学者さんの翻訳は、正しい言葉で、正確な内容を伝える努力をしているように見える。
y*n_y*nはめんどくさくて不愉快なブロガーだったけど、
今となっては、「化学者さんのサイトを見つけるきっかけになったのだから、まあ、いいかな」、と思っている。


あとでアライグマ画像でも入れよう。