ブログ引越し検討中 (仮住まい)

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犠牲・あるいは「スマホがああ!!」

スマホが○○○!!!!

となったら、普通はなんと入れるだろう?
割れた、壊れた、消えた…… などで、「溶けた」 っていうのは少ないんじゃないかと思うんだ。

<仕事1>
昨日、別の研究所に所属している共同研究者が打ち合わせに来ていた。
来年の1月に測定予定の試料が30個くらいあって、クリアしないとは一緒に某巨大企業にドヤされる。
測定の実験条件も何も決まってないから、「今日中に予備実験をやってしまおうか」という話になる。

 「でも俺、フッ酸(注1)扱ったことないし、怖え~」
    「私は半導体屋だったんで、扱い慣れてるし、ドラフトがあるから平気ですよ」
 「んじゃ俺、脱脂作業(注2)のほうをやります。 サクラメント(←ポリエチレン手袋)貸してください」
    「3時にほかの予定入ってるんで、中抜けしていいっすか?」

<仕事2>
今年度末に国(文科省なんだか厚労省なんだか)が行う大きな科学系のイベントがあるので、
うちの装置もエントリーされている。そのためのプロモーションビデオ(?)を作ろうとしている。
普段の様子がいい、ということで撮影に来るそうだ。
年内、って、今日(←昨日ね)しかないじゃん。 

<仕事3>
書類仕事の催促が電話できた。
助言を求められてるレベルで責任はないものなので、「実験してるから、あとで、対応する」、と言ったら、
「本日4時までなんですぅ」と、泣かれる。
口頭で対応するから、面談でいいか、と、時間調整をした。 
中抜けその2になるのか、フッ酸使ってる実験室に、事務官を呼ぶのか…… ちょっとデンジャラス?

<仕事4>
撮影前の打ち合わせに、化学の白衣(物理系の開襟診察着でなく、首や袖口まで詰まったやつ)のまま、
物理系のほうの実験室に行ったら、いい解析結果が出た、とポスドクさんが興奮してた。
冬休み中に論文を書くためには、今日中にディスカッションをするのか。 
共同研究者も呼び出す必要があるよな、そうか―― それも今日なのか。

<事件の背景>
化学室のほうの実験室で、ドラフトの前で、は二人で
塩酸やら硫酸やらフッ酸やらアセトン、エタノールを並べて、実験をしていた。
白衣とマスク・手袋はしていても、クリーンルームではないので、紙もスマホも持ち込みOKだし、会話も可能だ。
特に、山ほど連絡が入っていたので、研究所用のPHSと自分のスマホと、の研究所スマホを並べていた。
手袋はポリエチレン、試料ケースはポリスチレン、ビーカーはテフロン、
スマホ表面はガラスでその上にガラス樹脂のフィルム、スマホケース(裏と周囲のカバー)はポリカーボネート
まあ、日常的にはさっくりプラスチックとかビニールでまとめる人が多いんじゃないかと思う。

<そして事件>
フッ酸を使うときは、そりゃあ緊張してましたさ。いくら慣れてるとはいえ、20%溶液を使ってるわけだし、
金属のピンセットも、ガラスのビーカーも使えず、すべてテフロン対応したたし。
たとえば、フッ酸がガラスの表面に飛んだら、そこから溶けていくからね、
そして不用意にそれを素手で払おうとしたりしたら、皮膚に浸透して骨を溶かすからね。

でも、アセトンを使ってるときは、それほど緊張しない。
なんだかんだいって、肌についても水で洗えばいいし、除光液にだって入っている成分だもん。
で、電話が鳴った。
ポリエチレン手袋したまま、スマホをとった。 

あ……溶けた。   ←ポリカーボネートスマホケース。

イメージ 1

まあ、除光液でだって(こんなに劇的ではなくても)溶けるんだけどもね。
薬品とプラスチックの組み合わせには気をつけましょう。

そして、そんな犠牲の上に、本日の休日は成り立っています。

教育上あまりよくないので、内緒記事にします(←ハイヒールに穴を開けたときもそうだったな)
以下、注意書きの1と2
水素とフッ素とからなる無機化合物で、分子式が HF と表される無色の気体または液体。
水溶液はフッ化水素酸はフッ酸と俗称される。
毒物及び劇物取締法の医薬用外毒物で、経口最小致死量 = 1.5 g、スプーン一杯(9%溶液)で死亡の事例もある。
吸引すると、灼熱感、咳、めまい、頭痛、息苦しさ、吐き気、息切れ、咽頭痛、嘔吐などの症状が現われる。
目に入った場合は発赤、痛み、重度の熱傷を起こす。皮膚に接触すると、体内に容易に浸透し、骨を侵す。
浴びた量が多いと死に至る。血中カルシウム濃度低により低カルシウム血症を引き起こすためであり、
意識は明晰なまま、心室細動を起こし死亡する。  (ウィキペディアより抜粋)

半導体工場やめっき工場で使用するため、これを持ち出しての殺人事件が存在する。
半導体の研究者は、シリコン表面の自然酸化膜(薄~いガラスの膜)を溶かすためにこいつを頻繁に使う。
ドイツでは使用許可を取るのが難しくて、資格者(一応も)がたくさんサインをしないと持ち出せなかった。
当然学生は使用禁止だったので、「何でこんな雑用を」と思いながら、私と(ドイツ人教授)が使用してた。

アセトンは、
有機溶媒として広く用いられる有機化合物で、両親媒性の無色の液体で、ほとんどの油脂をよく溶かす。
危険有害性情報として、引火性の高いこと、眼刺激、生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い、
眠気又はめまいのおそれ、呼吸器への刺激のおそれ、長期又は反復ばく露による血液の障害のおそれ、
飲み込み・気道に侵入すると有害のおそれ、
吸引すると頭痛、気管支炎などを引き起こし、大量だと意識を失うこともある。(ウィキペディアより抜粋)

真空容器を使う人たちは、金属表面の脱脂に用いるため、これをバシャバシャ使う。
発がん性物質というはなしもある。どうなったのかな、あれ。
安い除光液に薄められて入っていたりする。つまり、アクリルも溶かす。 
気をつけたほうがいいと思うんだ。