ブログ引越し検討中 (仮住まい)

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誤診

 
とてもとても、暑い日だった。
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家には私と、弟と、ヒヨコが二匹いた。
露店で買ってきたか、
卵のおまけについてきたヒヨコだったと思う
ほのかに色が染められていた。
 
普段はケージの中で飼っていて、
時々、庭に出して遊んだ。
 
ヒヨコは庭で小さなミミズを見つけては、
仲間に取られないように咥えて走り、
そのせいで、仲間に見つかって
追いかけられたりした。
 
私たちはヒヨコを捕まえたり、逃げられたり、
ケージに戻すために追いかけたりする。
ヒヨコはケージから出るのが好きで、
私たちはヒヨコをケージから出すのが好きだった。
 
 
その日、ケージを開けると、片方のヒヨコは飛び出してきたのに、
もう片方はうずくまって出てこなかった。
 
夏休みの午後は、うんざりする様な蝉の声と、熱気だった。
ヒヨコもバテたのだろうかと、ケージから取り出すと、指の触れた羽の下が、驚くほど熱い。
体温計で測ったら、38度以上あった。
 
私たちは慌てた。
親は留守で頼れる人はどこにもいない。
 
風邪薬を飲ませようと思ったが、子供は勝手に薬箱に手を出せない。
人間の薬と、ヒヨコの薬は違うかもしれない。
 
仕方がないので、冷蔵庫から氷をたくさん出してきてビニール袋に入れ、即席の氷嚢を作った。
 
ヒヨコに触れさせようとしたらバタバタ暴れたので、ヒヨコと氷の袋をタオルで一緒に包んだ。
それにヒヨコの羽毛がホワホワしていて、熱が伝わりにくいと思ったので、
少しだけ毛の薄い羽の下にビニール袋と氷を挟み込むようにして包み込んだ。
 
ヒヨコはそれでもバタバタしていたが、30分もすると少しおとなしくなった。
 
羽の下を触ってみると、少し熱がひいたように思えた。
新しい氷をビニール袋に入れて、包みなおした。
 
それからまた1時間くらいして親が帰ってきたとき..... 
                   ヒヨコは完全に動かなくなっていた。
 
 
 
親に叱られたかどうかは、覚えていない。
 
覚えているのは、自分の手で、ヒヨコから体温を奪って殺してしまったのがわかったこと、
そのあとでヒヨコの体温は人間より高いと聞いた時のショックだけだ。
 
 
なぜ、そんなことを知らなかったのだろう?
 
なぜ、普段からヒヨコが温かいのを思い出さなかったのだろう?
 
なぜ、隣にいたもう一匹の体温を測る機転が利かなかったのだろう?
 
なぜ、わたしは、あんなことをしてしまったんだろう?
 
 
      …… 知識がないのは 罪だ ……
 
    …… ちゃんと、考えられないのも 罪だ……
 
           悪気がなかったなんて、何にもならない
 
 
 
小さな弟は、ヒヨコが天国に行けるように、長い時間、祈っていたけれど。
 
そういえば、もう一方のヒヨコがどうしたのかも、まったく記憶にない。
 
 
 
小学生の娘が、怪我をしたハムスターの足に薄めた消毒液をつけている。
 
彼女はハムスターの購入価格よりひとケタ以上高い治療費を払って
小さなペットを動物病院に連れて行く。
 
何かあると、まず、ハムスターの飼い方の本を調べる。
            わたしが、仕向けたわけでもないのだが……
 
 
そんな娘は、動物好きの私がニワトリにだけは近寄らないので、
母親はヒヨコが嫌いなのだと思っている。
 
   「ヒヨコを見ると....ママは、勉強しなきゃ、って思っちゃうんだよ」