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クロッカスの反乱

さて………
ひと記事前に、大学の工作工場のことを書いたのだが。

実験系の研究室に所属していて、大学院まで行って、工場に入り浸っていたりして、
工員さんたちに信頼されて、自分で材質のロッド選びなどさせてもらえるようになると、
工場の倉庫の奥に、不思議な抜け道があるのを知るようになる。

元々、工場は目白から高田馬場に向けた斜面に建っていて、倉庫の半分は斜面に突っ込んでいる形になる。
つまり、その抜け道は、斜面の下を通る地下トンネルとなっているわけだ。

我々が現役の学生の頃、地下トンネルはゆるく曲がって目白警察などの方角に伸び、
文系の校舎が並ぶキャンパスの中央のほうまで繋がっていたはずだ。
            (念のために言っておくと、もちろん立ち入り禁止だ)

まあね、古い大学だから、防空壕の痕跡、という説明でもいいのだけどね(笑)

私たちは、あの抜け穴がどうなるのか、なんとなく気になっていた。
私たちと同世代の、(彼は10代から務めているから、で、当時学生だった我々よりずっと大人だった)
とは言え、今は工場の責任者になっている工員さんに、抜け穴のことを聞いてみた。

イメージ 1


この写真の、突き当たりの壁の右手になる。
塗り固められて、でも、その向こうはきちんと埋めたのかどうか分からない。

ピラミッド校舎をはじめ、学内の多くの建物が壊され、新しいビル型の校舎にとって代わられている。
我々が卒業してから工場の隣にも新しい建物ができて、地階もあるから、
抜け道はそこで分断されてしまっているだろう、とは思う。

    分断されたその向こうは?

土に埋まっているかな.....それとも、灯りをかざせば、細く、暗く続いているのが確認できるだろうか?
私たちの知る限り、一度もその本来の目的に使われることなく、その勤めを終えたわけだ。
危機対策の非常設備なのだから、使われなかったことは、幸せなことなのかもしれない。

この工場が壊されたら、地下道の扉を塗り固めた、その痕跡も消える。

        手を触れられる歴史が、ひとつ、消えるような気がする。



『クロッカスの反乱』 というのは、ギャビンライアルの小説で、メインストーリーはともかく、
いざというときに、英国女王や貴族、要人たちをいかに脱出させるか、というお話です。