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ちょっと先輩 すごーく先輩

 
昔、私の研究所にいらした、大大大大大先輩である女性研究者のMさんが、
先日、交通事故でお亡くなりになりました。

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私の研究分野だと、いわゆる団塊の世代あたりからしばらく、女の研究者の全くいない時期がある。
例えば私の職場だと、私より、2,3年上くらいの人が、
    「30年ぶりの女性研究者採用っ!」 
などと騒がれていたらしいので、その人の上となると、今や70歳代の方々となってしまう。
Mさんのお孫さんは、私の娘と同い年だ。そのくらい、年齢層が違う。

当然、職場での重なりも短かかったわけだが、
そこはそれ、もともと数少ない女性研究者、私たちが女子学生や若手女性研究者についつい目がいくように、
彼女らも生意気な新人だった私たちを気にかけていてくれていたらしい。
配偶者も同じ研究所という研究者カップルのMさんは、そんな風に私に声をかけてくれる一人だった。

今でもその傾向が残っていると思うが、女性研究者はとにかく前向きで、
子供がいてもいなくても、仕事も家庭もがむしゃらに頑張っちゃう人が多いように思う。
男でもここまで根性ある人少ないよね、な努力の結果として、
やっと男性研究者と同じ立場に立てていたという、歴史的な事実があったのかもしれないが、
ときどきそれは、女性研究者に期待される項目の一つとして、鬱陶しい。

そんな中で、彼女は不思議なくらい、自然体の人だった。

肩肘を張らずに、かといって無気力でもなく、事務仕事は好きでなくて、研究は楽しい。
頭が良くて、自分の趣味を楽しんで、子供や孫と遊ぶ時間もあって。
つまり、大方の男性研究者と同じように、淡々と仕事をこなし、淡々と研究をし、
無理をしている様子が見えなかった。
すべての会社員が社長を目指しているわけもなく、それは研究者だって同じはずだ。
男性ならそれが当然で、職業の一つとして研究者を選ぶ人もいただろう。その人たちと同じ。

  学生時代と打って変わり、就職したとたんに、
  女性研究者は大変だ、育児と研究の両立は大変だ、職場のセクシャルハラスメントは熾烈で
  公務員は融通がきかなくて、前例のないことはやってくれなくて ……などなど、
  ネガティブな要素ばかりを耳にしていた私にとって、
  彼女の姿勢や、彼女の「大丈夫よ」という一言は、とても勇気づけられた。

  もしかすると、自然体でいるのは、突っ走る以上に大変なのかもしれないけど。
            

お通夜に行く前に、Mさんたちの30年あとの“ちょっと先輩”と話をした。

彼女も私も、かつて新人の時、Mさんのご主人と同じ部署だった。
あの研究部には、若い人が多かったと思う。
奥さまが職業を持っていた人も、多かったと思う。
居室のあった建物には、他の建物にはない女子トイレがあって、
今考えると、直属の上司はとてもリベラルな考えを持つ人だった。

30年ぶり、の“ちょっと先輩”の後に数人、女性研究者の採用が続くのだが、その時期に入った女性は皆、
同じ部署に配属されていたようだ。(←今考えると、ちょっと問題かも(笑))

「女を採用する、って すごく覚悟のいることだったんだと思うよ」 と、“ちょっと先輩”が言う。

採用した女性が、不公平を味わわないですむように、
他の(男の)新人と同じ研究環境はどの部署なら満たせるだろう? 
どの上司ならば、女性研究者を使いこなせるだろう?
当時の研究所の首脳陣は、きっと心を悩ませ、考え抜いたあげくに、
ここなら大丈夫、と覚悟を決めて、30年ぶりの女性研究者を採用したのだろう。

出身大学が桁外れにリベラルなところだったから、私は就職当時は (大学と比べて) 不満も多かった。
でも、“ちょっと先輩”に指摘されて考えると、確かに、我々が所属していた部署以上に、
当時の職場で環境のいい部署はなかったと思う。
研究所トップの思惑と覚悟が、あの当時の職場には十分行きわたっていなかったとしても、
「女性研究者の採用を国が推進してるから、うちも採用しましょうよ」
という、今の風潮とは、覚悟の仕方が違っていたのではないだろうか。


Mさんが、新人の頃は、どうだったんだろうな.........
職場結婚、研究者カップルが多いのは、今と同じかもしれない。


             あ...... 駄目だ
             暮れに亡くなった大学時代の恩師に比べると、職場での知人は関係が薄いし、
             プライベートでそれほど親しかったわけではないし、と、自分に言い聞かせ、
             淡々と書こうと思ったけど、やっぱり、悲しいや。


和紙を作ったり、糸を紡いだり、とても指先の器用な方だったので、
白い花の代わりに、綿花の写真を探しました。

ご冥福を、お祈りいたします。