（創作）飲み会にて

 

先輩は酒乱だ。

あるところまで全然顔に出なくて、でも、一定量を超えると爆発する。

ぼくは彼がどのくらい飲むと爆発するか聞いているし、その場に出くわしたこともあるから、

飲んでいるアルコール量を見張っていて、そろそろ危険領域だなあ、と思ったら控えさせるのが役目だ。

 

そのアルコール量だが、ビールだったら何杯、日本酒だったら何杯、ウォッカだったら・・・・・・・・

と、アルコール度数から考えなければならないので、結構、面倒くさい。

慣れないと何をやっているのだかわからなくなる。

 

おまけに、つまみに出てきたアサリの酒蒸し、こいつのアルコール度がいつにもまして高いような気がする。

「どのくらいアルコール入ってるんだろう？」、と聞いたぼくに、

「酒蒸しなんて平気ですよ。酔い潰れるためには１０キロくらい食べなければ」　と、店員は笑うが、

酒蒸しだけで酔い潰れようと言うのではない。

こういう店に来て、アルコール摂取が、つまみからだけのはずがないじゃないか。

ビールと日本酒で酔っているところに、最後の一撃がアサリの酒蒸しだったらどーするというのだ。

 

あ～、先輩ったら焼酎飲んでるよ。　薄いのも大量に飲んじゃうからバカにならないんだ。

焼酎のアルコール度数って、どのくらいだっけか？　

お代わりするごとに濃さが変わってる気がする、メニュウに書いてある度数なんて、あてになるもんじゃない。

 

なんだかもう、嫌になってきたなあ。　

いっそ先に帰ってしまおうか。

でもなあ、ここで暴れさせると、酒乱のいるクラブって、新入生に敬遠される可能性があるんだよな。

 

悩んでいたら、先輩が話しかけてきた。

「平気平気、今日は俺、酔ってないって。　お前も安心して飲め」 

ダメだ、酔っ払いの　「酔ってない」　ほど信用できないものはない。

安心なんて、いつも口だけだ。

 

 

　　　　　　　（今しがた思いついたショートショート。酒を別のものに置き換えて読んでいただいても結構です）