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放射線とがん ---宇野賀津子先生のお話より---

     
             この記事を読むより、パストゥール通信を読んでくれ、と、言いたい。
                私のブログなんかより、よほど正しい情報が手に入るだろう。 
    パストゥール通信 特集 放射線とがん  http://www.louis-pasteur.or.jp/Ptsuushin2012.pdf
 

 
縁あって、本日はルイ・パスツール研究所の、宇野賀津子先生のご講演を聞いた。
何度か、このブログでもURLを出させていただいているが、
生物・医学系の宇野先生と、物理系、しかも湯川教授のお弟子さんだという坂東先生との議論の数々は、
双分野の科学者にとって有意義で、低線量放射線の人体に対する影響を
正しく理解していく上で、とても役に立つものだった。
   http://jein.jp/blog-einstein.html  過去にさかのぼると、議論の経緯などがわかる。
 
  #こうした有意義な議論がなぜ他でできていないのか、
  #反対派の意見を罵る感情的な叫びあいになってしまうのか不思議だったが、
  #宇野先生は知識や思考力はもとより、話し方、議論のテクニックが優れていらっしゃるのだと、わかった。
 
宇野賀津子先生は、福島(白河市)へでかけていって一般市民向けのご講演をしているそうだ。
毎回100人程度で、質疑応答の時間を長くし、(数値としては)効率的ではないのかもしれないけれど、
確実に相手を納得させるご講演なのだと思う。 その時に使用したという、スライドを見せていただいた。
 
まず、低線量の放射線には、高放射線の様な明らかな影響はないが、
低線量でも影響があるかもしれない、と、宇野先生が福島で説明している、ということを聞いて驚いた。 

これまで私の周りにいた医学・生物の人は、低線量放射線は安全だと言いきることが多く、
                   (一方で民間団体は確実に危険だという人が多く)、
自分と異なるの意見を持つ人を排除するのに夢中で、科学的な発言から外れる事が多かったからだ。

生活習慣の影響などに埋もれたり修復機能があるとしても、放射線被曝の影響がゼロのはずはないので、
私はこれまで、「影響がない」、と言い切ってしまう人の言葉は、信用できなかった
影響があると、大騒ぎしている人たちと同様、
影響がないと言っている人たちにも根拠となるデータが十分でないからだ。
影響はあるけれども、この理由で無視できる、
あるいはここからは危険という根拠が欲しいのだが、説明してくれた人はいない。
 
宇野先生は続ける、浴びてからの生き方で、がんのリスクは大きく変わる、と。
 
  ゼブラコメント:がんのリスクは被爆後の生き方で回避できる、という科学者の主張を、
      中途半端に耳にして、いい加減に言いふらす人が多すぎると思う。
      放射線を浴びて発がん性が上がっても、酒を控えたり、タバコを控えれば、
      肝臓がん、肺がんになる確率が減るのだから、との論理展開のブログをたまに見る。
      他の癌発生を抑えるのも無意味ではないから、その手のブログに反論を置いてくることはしないが、
      宇野先生のおっしゃる生き方の効果はそういう他の発癌リスクとの比較ではない。
 
ここから、しばらく、宇野先生のお話から私が解釈したことを書きます。
 
   宇野先生ご本人の発表資料にあたって欲しいけれど、
   検索して読みに行くことは面倒だけど、惰性で(?)私の記事を読んでくれる人へ向けて。
     (まず、説明をするのに、福岡県の,おんが病院のHPから、説明図を借ります。)
 
イメージ 1
 
生物にとって、危険なものはたくさんある。放射線宇宙線、そして酸素も危険。
酸素をうまく利用できるようになったのが、地球上にいる生物であるといえる。
 
で、DNAに損傷は、放射線による直接破壊よりも、
放射線活性酸素作ったことによる間接破壊の確率が高い(7割程度?)。
つまりは活性酸素が悪さをしているわけで、
タバコによる肺癌発生率の上昇も、タバコの煙が肺の中に活性酸素をたくさん発生させるからである。
この点で、タバコによる癌発生率と放射線被害の癌発生率を、単に統計だけではなく、ダイレクトに比較できる。
 
さて、次に活性酸素が生じるのは、タバコと放射線の影響だけではない。
活性酸素は当然のことながら、体内に山ほど生じている。
そして人間の体には、生じた活性酸素を分解したり無毒化したりする機能がある
 
      生物はエネルギーを得るため、ミトコンドリアで絶えず酸素を消費しているが、一部が活性酸素に変換されることがある。
      活性酸素は細胞に損傷を与え得るため、それを防ぐために抗酸化酵素活性酸素を消去、あるいは除去する。
      細胞内で、活性酸素を無害化する酵素もある。
      細胞内の酵素で分解しきれない余分な活性酸素が癌や生活習慣病、老化などの原因になる。
 
さらに、DNA分子の損傷はもともと、1日1細胞あたり最大50万回程度発生するので、
無毒化しきれなかった活性酸素が、DNAに損傷を与えても、
人間にはDNAを修復する機能があったり、修復できないDNAを自殺させる機構があったりする
  
      DNA修復については、残念ながらフォローしきれなかった、
      もともと、免疫学の先生なので、免疫関連のお話となる。
      インターフェロンとか、ポリメラーゼとか、ナチュラルキラー細胞、アポトーシスなどという言葉が飛び交っていたと思う。
     代替医療情報センター:癌修復の機能  http://www.1fgi.com/ft/mecanizumu.htm
 
つまり、宇野先生のおっしゃっるのは、低放射線で被曝しした場合にも、
その後の生き方で、DNAの修復能力を上げ、癌を回避する方法がたくさんある、という事なのだ。
 
また、変異鎖細胞(損傷DNAを含む細胞)が、そのまま癌につながるものではないとされている。
DNA(この場合遺伝子部分の意味)は、数回の変化(ミューテーションの意味かな? 不明です)を起こし、
20年程度かけて、癌細胞になっている、と、(他の生物寿命と癌死亡率の統計から)言われている。
20歳以下の子供の癌もあるので(←これは会場からの質問)、すべてが説明できるわけではないが、
その20年の間に、免疫機構で修復できる確率も高いはず、それが癌の抑制につながる、と、おっしゃる。
 
      免疫力が下った極端なのがエイズ(=後天性免疫不全症候群)なわけで、
      免疫力が下がると、癌の発生率も上がる。
 
癌細胞の除去につながるという、ナチュラルキラー細胞は、ストレスによって減少すると言う。
インタフェロン生産細胞も、恐怖やストレスにより低下する。 
宇野先生は、ご自分のインターフェロンα(INFα)を定期的に実測していて、
動物小屋で蛇に出くわした(突然、怖い思いをした)2時間後に測った時が、もっとも低下していた、とか。
                                     (生データを見せていただきました)
 
笑うと免疫機能が上がるというも、インターフェロンα(INFα)を実測して分かる通り、非科学的な議論ではない。
高齢女性のお化粧でも、食べものによっても免疫機能が上がる。
デザイナーフード、高酸化食品、フィトケミカル(カロテノイド、ポリフェノール)などの食品をとることでも、
免疫機能が上がる。
活性酸素を減らし、免疫機能の上がる生き方をして、
放射線由来の癌も、他の原因の癌も、発生を抑えましょう、と。
 
        以上、宇野先生のお話ではありますが、ここでの文責はゼブラにあります。
        解釈違いがある可能性もありますので、二次配布は、宇野先生のオリジナルをあたってください。
        検索すると、たくさん出てきますし、
        当ブログのように、宇野先生のお話から記事を書いている人も多いです。
 

 
免疫学の先生なので、免疫の話を中心に話していただいたし、
放射線の影響と同時に、高放射線の影響もあるわけだから、これがすべてではないとは思う。
活性酸素が仲介するDNA損傷も、それが100%というわけではない。
しかしながら、高放射線の影響を受ける範囲より、低放射線の影響範囲の方がはるかに広いわけで、
また、福島・白河市の聴衆にあわせたということもあるのだと思う。
  
少し前の記事に書いた、物理系と医学系の違いについても、
私は宇野先生と坂東先生の議論を傍受(←怪しいもんではないです、MLの傍観)していたため、
今ではかなり考え方に影響を受けたと思う。
放射線の利用の仕方の違いが、認識の違いに繋がるというのも、こんな風に説明されていた。
 
  物理系:放射線は良いことがないから、多少大瀬差に言っておいた方が後々、罪に問われない。
  医学系:放射線治療で多くの人命が助かっている、実際に治療ができる。
 
ここで、リスクを過少に言うのと同時に、過大に言うことも罪なのではないか、という主張をなさった。
確率論であり、エイズウィルスの時に、大問題になったにもかかわらず、
危険は大きく言っておく方が善良だと考える科学者が多い、と。
蚊の吸った血液の中にエイズウィルスが発見されたとか、血友病患者は半数がキャリアだとか、
たしかに、すべて確率論なのだから、皆無ではない。
しかし、限りなくゼロに近い、と言える。
物理学者は、医学系研究者より考慮に入れる確率が小さく、0.00…・1%を無視できない。
         これは、自分の習性として、生物系の方との共同研究の時に実感しています。
         パラメーターが大量にある時は、我々物理屋だって一つ一つの数値は、アバウトだもんな~。
         紫外線環境下で温度揺らぎがあって汚れてる表面からの熱脱離のプリ・エクスポネンシャルファクターってレベルか。
             
限りなくゼロに近い確率のリスクを、ありふれたことのように言い広め、人々を不安やパニックに陥れるのは、
免疫学の分野としては、実害につながることなので、許しがたいことなのだろう。
免疫を減らさないために、「不安はない」 と過小報告をするのは同意できないが、
宇野先生の話の放射線による初期影響の部分に嘘はなかった。
震災の前から存知あげているが (私は、元気のいいはねっかえりで騒々しい研究者だと思われていると思う)、
もともと、人当たりの柔らかい、温かい先生なのだが (一方坂東先生は熱い先生だ(笑)、たくさん救ってもらいました)
強い言葉や感情的な言葉ではないのに、真摯さと善良さがゆっくり伝わってきた。
 
チェルノブイリの事故のあとの癌発生は、ストレスで増えた効果もあるのではないか?
事故は免疫機能を思いっきり下げる事故だったはずだ。 宇野先生は推測する。
残念ながら、過去の癌発症に対して、ストレスと被曝の効果を分離・数値化する事はできないと思うが、
双方の効果が含まれているに違いないこと、その効果の片方は、
これから変えていけることを示す、非常に良いご講演だったと思う。
なお、宇野先生は、サイエンスコミュニケーションの技術の工夫や、
講演する時、議論する時に自分の立ち位置を明確にする必要性にも言及してらした。 
本日の講演者は何人かいたのだが、他の講演者の一人が、質問者に対して回答する前に
「○○系の人はみんなXXXだから」 と、いきなり分野としての相手を否定する発言をし、
              (質問者の質問は、XXX系なものではなかったので、完全に講演者の思い込みである)
異分野交流の場を、なんとなく白けさせてしまっていた。
相手をおだてる必要はないが、自分の思い込みを披露する事はない。その態度は説得力を減じてしまう。
この人のコミュニケーション能力は、宇野先生レベルには達していないんだな、と、思った。