貧乏と多忙って音は似てるよね
5,6年も前でしょうか、怒涛に激務の数年間がありました。
当時は夕方6時くらいに携帯電話に事務局からかかってきた電話で、
「いえ、急ぎませんよ、明日の朝までで結構です」
なんて言われるのが当たり前でした。
お抹茶BOYも小さかったし、
夫も盛んに海外出張してた時だったから、ほんとに忙しかったなあ。
小さなミスもいっぱいしたし、思ったように仕事が進まなくて、部下の前で落ち込んでしまったりもした。
部下と言っても、気心の知れたポスドクさんだったから、ずいぶん気楽だったけど、
(その分彼のわがままも、いっぱい聞かされた気もしたけど) 限界を超えてる感じでした。
緊張感を持ってる実験中はまだいいとして、ひとたび装置を離れてフリーになるとボケまくってました。
当時、自分の実験室のある建物には、飲み物の自動販売機がなくて、
一番近い自動販売機は、300メートルくらい離れた、工作工場の入った建物でした。
工作工場には、実験用の小物を作ってもらうのにしょっちゅう出入りしていました。
その時も用事があったから、ついでに飲み物を買ってこよう、
と、設計図面を持ち、自分の実験室のある建物を出て……
まず300メートル
とにかく喉が渇いていたので、
まずは工場の自販機の前に立ち………………… お約束 財布忘れた
取りに戻ろうと肩を落とした所に偶然、図面を渡すはずの相手が現れ、「珈琲淹れたんで、飲んでかない?」
「いえ、ちょっと忘れ物取りに実験室に戻るので、すぐにまた来ます」 ←おい
再び300メートル
自分の実験室のある建物に戻り、部屋のドアを開けようとして、ふと、
工作工場で珈琲貰えば、自販機で飲み物買うことないじゃん、と、気付く。
もう一度300メートル
工作工場のある建物に戻り。 が。 「ざんね~ん、珈琲、今、無くなっちゃったよ」 ええええ・・・・・
やむなく再び自販機の前へ……………… あ、財布持ってきてない
またまた300メートル
自分の実験室のある建物に戻ったところ、部下が 「部品の仕上がり、いつですか?」
ええええ、と。話してくるの忘れた・・・・・・
「大丈夫っすか?」 っていう部下の声が、胸に突き刺さりました
しかも、代わりに図面持って工作工場に相談に行ってくれた部下が、
私の事を笑い話にして伝えてきてしまったので、すっかり有名になりました。
さきほど、既に退職した、当時の工員さんに会いました。
何年ぶりでしょうか。
「あんまり無理すんじゃないよ」 と、言われました。
「当時より、研究予算が少ないから、幾分マシです~」
「いやいや、貧乏ヒマなしって言うからねえ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あんた、意外にヌケてるから、怪我しないように気をつけなさいよ」
優しい微笑みが、悲しいです。
お金はともかくボケが減ったかどうかはわかりません。