(フランス) 雨のペール・ラシェーズ
ペール・ラシェーズに行ってきた。http://www.pere-lachaise.com/ <<バーチャルでお墓参りができて、おもしろい。
ここでも何度か書いた気がするが、ワイルドが好きになったのは、サロメを読んだからだ。
綺麗で馬鹿で、殺されてしまう、かわいそうな娘だと思った。<<ワイルドの戯曲
月明かりの中、薄絹を脱ぎながら踊る姿は、ただただ、ゾクゾクするくらい美しかった。 <<モローの絵画
ダブリン生まれのイギリス人であるオスカーワイルドは、パリのペールラシェーズに眠っている。
西村孝次の「オスカーワイルド全集」には、訳のほかにいろんな逸話が載っていて、
だから、私の中のワイルド像は、
悩んだり、取っ組み合いのけんかをしたり、気取ってみたり、落ち込んだり、と、人間味あふれる人物だ。
ゾクゾクするような美しい戯曲や、皮肉っぽい小説には、あまりそぐわない。
いつか、お墓参りに行きたいと思っていて、でも、これまでのパリ訪問では、チャンスを逃していた。
ペール・ラシェーズは観光客が全く来なくもないけれど、観光地、とは言えない。
地球の歩き方にも、タビトモにも取り上げられていない。だから、ネットで探すか、地図を見て行くしかない。
それでも、Line 2 の Phillipe Auguste で降りると、pere Lachaise 行きの矢印が出ていた。
入り口で地図がもらえると聞いていたのに、誰もいない。
ワイルドのお墓の場所は大体わかっているし、まあいいや、と、歩きはじめる。
朽ちたバイオリンケースがアルマンみたいだ、と思って近づいたら、彼のお墓だった。
アルマン・フェルナンデス(現代美術) http://en.wikipedia.org/wiki/Arman
雨の中、花を持って佇んでいる人がいた。墓石に書かれた没年が近い……
ここにお墓があることを知ってはいたが、
近くを歩いていた若者が地図を持っているかと、聞いてこなければ行かなかったかも。
目立たない所にあるのだが、若者たち(他には目もくれずショパンだけ)と一緒に探し当てた。
彼らは、一輪ずつ花を持ってきていて、像の足元に置いていった。
この人のお墓は、事前に場所を調べておいた。
お墓はほかの墓石と木の陰になって、とても目立たなくて、
場所は把握していたのに、見つけるのに苦労した。
華やかなお墓を思い描いていただけに、なんだか寂しかった。
次に来ることがあったら、白百合の花を持ってこよう。
雨は降ったりやんだり。
ペール・ラシェーズ墓地の中はとても広くて、人が少なくて、静かだ。
ドアがある石室は、一つ一つが〇〇家(Famille)の墓のようになっていて、
ステンドグラスが施されていたりする。
古いものも、新しいものも……… 家族のお参りに来ている人もいる。
オスカーワイルドのお墓を見つけた。
場所もチェックしていたし、形も知っていたので、遠くからでも見つけられる。
はっきり言って、とても目立つ。
でも、なんで彼のお墓だけガラスで囲われているのだろう?
理由はすぐにわかった。
通りかかった英語ツアーが、ワイルドファンがキスマークをつける、と、説明していた。
ワイルドの逸話の一つに、彼が米国に行ったとき、領事か何かで在米していた森有礼に会いたくて、
八方手を尽くしたけれど、森の日程が合わなくて残念がっていた、というものがあった。
彼は日本に興味があって、日本人に会うチャンスを探していたようだ。
だから、心の中で、「来たよ……」 と、伝えてみる。
きっと、毎年、何人もの日本人が、彼のお墓を訪れていると思うけれど。
お墓にはたくさんの花が手向けられている。ファンが多いのだろう。
行き過ぎのキスマークも、ガラスの囲いも、ファンの仕業故と思うと不愉快な気はしない。
ワイルドは、怒らずに、どこかで笑っている気がする。
こちらは、大勢が探して、説明のツアーが来ていた。
謎に包まれたシャンソン歌手。
50年くらい前に没しているのに、ここにもたくさん花束が手向けられていた。
気が付けば4時間近く散策していた。
考えることがたくさんあって、でも、なんだか気が済んだ。
もう、パリには来なくてもいいや、と、思うくらい満足した。
仕事で、きっと来るのだろうけど。
地下鉄の回数券が、一回分余っていたので、寄り道をする。
前回来た時に、一番好きになった教会、サン・シュルピス。
相変わらず、ここのマリアは美しくて………
キリストは、まるで、「任せなさい」、と言っているみたいに力強い。
ここにも、もっと長く居たいと思う。
ルーブルもよかったけど、次にパリに来る事があったら、休日はずっとサン・シュルピスにいよう……