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不死身なのは妖精っぽいからなのか

ペルケオというのは酒蔵の妖精というか、イメージ 1
小柄なおじさんの姿をして、鼻を赤くして、
ドイツ風のビールジョッキを持った姿で
ドイツの酒場に飾られている、酔っ払い人形だ。
ハイデルベルグ城に置かれているのが、有名だ。

小柄で、酒飲みで、ドイツ語に堪能な木下是雄先生を、
同世代の先生方は、ふざけて、
「ペルケオ先生」 と、呼ぶことがあったという。
南極越冬隊に参加したり、エベレストに登ったり、元気な先生だ。

昨日も神戸大学の書棚に、木下是雄の『理科系の作文技術』があったので、

 「私、この先生に論文直されてたんですよ~」と、

半ば嘆き、半ば得意げに、手に取ったのだが、
何でも「理科系の作文技術」は1981年に初版が出て以来、毎年再販するという、
科学本としてはベストセラーなんだそうだ。
木下先生は、これ以外にも大量に執筆なさっていて、
一部の書籍については、私も学生の身分で閲読や校正を手伝わせてもらっていた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%A8%E4%B8%8B%E6%98%AF%E9%9B%84


ゼミで木下先生に教えられた言葉をアレンジして、今、私は学生たちを指導する。
私が学生の時には、すでに研究室所属の教授というよりも、
学長や院長として大学が学園全体のお仕事をしていたから、とてもお忙しくて、
でも木下先生の教え子である、准教授や助教たちが、我々を指導してくれていた。

学長だから、通常の退職年齢よりもずいぶん後に大学を去られたが、
そのあとも講義を受け持ったり、書籍を書かれたり、お忙しそうにしていた。
さすがにここ2年ほど、体調を崩されてホームで過ごされていたが、
鎌倉の優雅な新年会は、木下先生の教え子たちで集まっていたものだ。

喜寿のお祝い、米寿のお祝い、傘寿のお祝い、いろんなパーティをして、
いや、出版記念パーティなどもあって、時には皇族の方のご参列もあって、
だから、学生は別分野の社会人との会話にも慣れたし、パーティにも慣れてたな………

先生だって、我々と同じように、1年に1歳ずつ年を取られていたはずなのに、
妖精に似ているからなのかな、なんとなく、不死身だと思っていた。

100歳にお近かったんですね……・

教え子が先に逝ってしまうのを嘆いてらしたから、
天国で山本正樹先生たちを説教しているかもしれない。



私は忙しくて、先生の訃報のメールに気づかなかった。
同窓の夫に言われて、先ほど知った。

ちょうど先生がお亡くなりになった日、
私は、先生が開発なさった分光装置(世界中に普及)を使っていたと思う。
木下先生の直系は、山本先生にしても私にしても、光学の専門家だ。
以前は私も、眼球設計の講義を持っていた。

専門が少しずつ変わり、私は現在光学の分野で仕事をしていないが……
分光装置を使えば、研究者の素直な血が騒ぐ。

妖精も、永遠ではないんだな。
……………ご冥福を、お祈りいたします。