ブログ引越し検討中 (仮住まい)

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役人を尊敬する。

いい話も書いておこう、というわけで、新幹線で書いていたもの、その2.



東北大学の、E先生の研究紹介を聞いてきた。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の世界的な権威で、紫綬褒章ももらっている人だ。
http://www.youtube.com/watch?v=m6iKJhEBqSo  ←これでも見てほしい。

東北大学は2011年の震災で、被害を受けた。実験装置がたくさん壊れた。
東北大学だけではなく、仙台周辺の企業や、工場も大きな被害を受けた。
企業の中には、東北大学と共同研究をしていたところもあり、
そしてまた、復興を待てずに、研究部門を閉鎖してしまったところも少なくなかった。
その中には、こんな風に思う人たちがいた。
「自分たちはこれ以上余力はないけれど、ここで研究をやめてしまうのは惜しい」
だから、

「うちでは廃棄するしかない実験装置ですが、東北大でもらってくれませんか?」

E先生は、無料で引き取ったたくさんの装置で、
外部の企業の人たちが格安で装置を使えて、試験研究もできるセンターを作った。

その名も、「東北大学試作コインランドリー」   http://www.mu-sic.tohoku.ac.jp/coin/
実験装置や、試作装置を借りく金額は、1時間、ワンコイン(500円)と少々。


「無料でもらった装置を使わせるのに、東北大がお金を取るわけにはいかないでしょう?」


元々、山ほどの特許と、素晴らしい研究成果と、ネームバリューと、そして熱意を持った先生だ。
それまで東北大学内部での発言権が大きくなかったのは、
研究にかまけて大学運営の仕事をしてこなかったからだろう。

さて、センターを維持するには、お金がかかる。
センターにある装置のメンテナンスや、オペレーターの雇用費用だ。


東北大は大学法人で、だから、文部科学省の傘下だ。だから理事も文科キャリアが出向してくることが多い。
ところがある時、経済産業省のキャリア官僚が理事として東北大に着任した。
その理事とE先生は、一緒に各省庁を駆け回ることになる。

センターから出た研究の成果を「売れる」ように。
自分たちの仕事を販売して、メンテナンス費用や職員の雇用費用に使えるように。

税金を利用した研究成果がもたらす利益を、大学が得ることに対して、
文科省も大学教授たちも、大きなアレルギーがある。
文科省ルート以外の金を手に入れることには、大学は驚くほど懐疑的だ。
.                    (例外として大学病院があるが、あれは厚労省管轄みたいなもんだ)

でも、このままでは、企業が経営難になって研究室を手放してしまったように、
東北大もいつかセンターを閉鎖しなくてはならなくなるかもしれない。
センターでの研究がきっかけで、巨万の富を生み出す装置開発ができていても。
その後発展した研究があって利益を得ることが可能でも、
その収入をセンターに戻すことはできず、新しい研究を続けられなくなるかもしれない。

大学の先生方は、猛反対だったのだそうだ。もちろん、文科省の役人も大反対だ。

でも、E先生のアイディアや初期研究が、現在どのくらいの利益をもたらしているか、
大学だって文科省だってわかっている。
どれだけ多くの企業が、E研究室に資金提供し、共同研究をして、利益を得てきたかもわかっている。

彼らの説得で、結果的に、センターは、センターで開発した装置を販売できることになり、
また、特許による収入も(共同出願の企業と)シェアできることになった。
(公務員的に、よくそんなジャックポットを見つけたな、とか、
最小限の規約変更で、よくここまで自由度を挙げたな、とか
感心することしきりだったのだが、その辺はマニアックすぎるので書くのはやめておく)



本省から出向してきた理事なんて、大学の仕事を腰掛程度にしか思わず、
ろくな働きをしない人も少なくない。
だから、大学人や研究法人の研究者たちは、役人を嫌うことが多い。

でも……経産省のキャリア、いい仕事していったよな~

実際には名前を聞いた(E先生は普通に発表していた)彼を、私はこの仕事だけでも尊敬する。
また、E先生は、停滞した日本の産業を救えるんじゃないか、とさえ思う。
E先生も、打倒レアメタル高橋研(←みがく、と読む)先生も東北大なんだよな……
工学系の先生、ちゃんと夢とポリシーと知力でもって、日本経済をどうにかしようと思ってるんだよ。

代議士たちも、本当の意味で前例を覆し、日本のためになる仕事をしてほしいな。