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特例から当然につなげる根拠を探してみた

トラックバックをしてみたが、元記事はえらく古い。
私は2009年のこの記事に、
『私は実のところ、「なぜ、女性研究者を増やさなければならないのか?」が分からない。』 と、書いている。
その 『なぜ』 の答えを、ひとつ見つけたような気がするので、書いておく。

長文なので、興味のない人は読み飛ばしてくださいね。



【元々の自分個人の把握】
自分の将来の仕事について、その仕事をする適正と実力があるなら、
そこに性別や国籍、出身地や出身校で差別をするべきではない、とは思う。

私は性差別を受けたことがほとんどなくて、性差別が存在することもピンとこなかったから、
「女性研究者よりも男性研究者の方が多いのは、研究者適性を持った人が、女性より男性に多い結果」
なのだろうと思っていた。
適性を持った人が性別にかかわらず研究者になっているなら、
なぜ無理に女性研究者を増やさなければならないのか、わからなかった


【実際の研究者世界は……と言うと】
自分が数少ない女性研究者だと、政府や学会の委員会に引っ張り出されることが多い。
私はそこで、いかに研究者を目指す女子学生や、若手の女性研究者が、
男性社会である職場や大学でその進路を邪魔をされるかを聞くことになった。  

      う~ん………そうなの?  

彼らが言うように、差別のない希少な環境にいる女性しか研究者になれないなら男女比率は狂ってしまうが、
研究者にアンケートを取ったところで、断念した――つまり今研究者でない――人たちの理由は見えない。
邪魔や逆風に打ち勝って研究者になった女性の中には、
「どんな仕事でも苦労はつきものなの。女性研究者も戦って勝つべきだ」 という人がいるし、
私と同様に苦労せずに研究者になった人に向かって、
「あんたは特例」 「学閥がある人は別」 「ハラスメントにも気づかない鈍い女」 と、攻撃する人もいる。
自分の受けたハラスメントの恨み言と、その中で昇格していった女性への嫉妬にまみれた発言も存在し、
あまり良い雰囲気にはならないこともしばしばある。

     個々の例ばかりで、納得できるデータがないんだよね……

だがその手の話を書いたブログに、女性に失礼なコメントを入れる “意識の高いつもりの” 男性 もいて、
ああ、世の中にバカな発言する男がいるんだな、と思うと、現場で苦労する女性の立場も想像できる気がする。
    *参考までに、そいつの暴言を書いておくと
    *「職場に女性は必要だと思います。綺麗な女性がいれば、男はいい所を見せようとして、よく仕事しますから」


 
【世の中の製品と動物実験
・女性に効く薬と、男性に効く薬が違ったり、人種によって効果のある薬が異なることはご存知だろうか?
・妊娠中の女性はシートベルトが使えないのをご存知だろうか?
・実験動物にしている鼠は、オスだけだったのをご存知だろうか?

私は上の二つは知っていた。
アジア人種には副作用が出ず、米国人の何パーセントかには副作用が出る薬がある。
生理痛の薬を男が飲んでも何にもならないし、
シートベルトは急停車時にお腹の赤ちゃんを殺してしまう。
実験動物の性別をコントロールするのは、生理中の鼠がエラーのもとになると"考えられたから"だそうだ。

     実際には、オスねずみばかりの中に、メスねずみを入れたからエラーになったんであって、
     メスねずみばかりの中にオスねずみを入れれば、オスねすみ側がエラーになる程度だそうだ。
     メスねずみは生理があってもなくても、(オスねずみだけのときと同じ程度の)ばらつきの中に納まる。
     なんだ、それって、性差が出てるってことだったんじゃん。
     現場の研究者が、「性差」によるデータの違いに思い及ばなかったからに他ならない。
     それはもともと、扱いやすいオスねずみだけで、データを取れると考えたことにもつながる。
   

実際に雌雄で薬が変わるのなら、オス鼠だけで開発した薬は、人類の半分にしか効かないだろう。
ミスの理由は被実験体が製品を使う場を想定し、それを反映する様にサンプルを選ぶべきだったのに、
そうなっていなかったということだろう。
そしてそのミスがどうして生じたかを考えれば、研究者の現場に男性しかいなくて、
自分と被実験体の間に差がなかったから、そのまま世の中を反映していると誤解したためだ。


これから先、性別にかかわらず効く薬や、女性に効く薬ができたら、
人類の約半分への売り上げが倍増するだろうし、
一般男女及び妊婦にも使えるシートベルトが開発されたら、それがスタンダードになる―――よね?

で、被実験体からの連絡や、世の中のニーズを研究者がいちいち聞いて開発につなげるよりも、
現場にいろんな人がいる方が、絶対にうまくいく―――よね?

だって、こんなことは伝えるべきでないかも、と思う研究ネタだって、
自分の体調不良に関わっていれば、何かにつけてアンテナをはっているだろうし、
コソコソっと測ってみることもあるだろうし、開発モチベーションにもなるし。


【だから結局】
だから、研究開発現場にはいろんな人がいる方がいいのだ、男性も女性も、どんな人種も。
世の中の人数比率やを反映した研究現場である必要がある、ということだ。

そんな風のジェンダーバランスを調整し、良いバランスにコントロールすることは、
誰でも好きな職業を邪魔されずに選択できるから、という、個人的な要求から発生しているのはなく、
それが産業や製品開発に直結し、企業や研究機関の利益になること、
また、世の中人間、マイノリティ云々でなく、人類の半分を構成する女性が恩恵を受けることにつながるからだ。

現在、研究開発現場には女性が少なく、ジェンダーバランスを欠いている。
だからジェンダーバランスの調整のために、現在少ない女性を増やさなければならない、ということだ。
研究者としての適性があってもなくても女性を増やせ、となるのは行き過ぎかと思うけれど、
適性があるのに邪魔されて研究者になるのを断念する人がいたとしたら、こんな無駄なことはないよね。


【どうして気づいたのか】
先日、科学系の研究者と社会学系の研究者が両方参加する会議に参加した。
社会学系のジェンダー研究者が、いろいろ力強い事を叫んでいても、なんだかなあ、だったので、
話半分に聞いていたのだが、薬学系の動物実験が、オス鼠だけを使う話で、「何だそれ」、となった。
そして、ああ、そういう社会的なニーズのために、ジェンダーバランスが必要なんだな、と、理解した。
微弱放射線の影響を議論していた時、活性酸素っていうキーワードを得られたみたいな明快さだ。
「女性研究者を増やそう」という言い方を良しとする気はないけれど、
ジェンダーバランスを世の中に合わせる必要がある」というのはピンとくる。


そういえば昔、幼児と過ごす時間の長い母親向けのカメラを作って、ブレイクした企業があったなあ。
子供は動きやすい、母親の手はカメラマン男性の手より小さい、
男性好みの撮影テクニックのディテールよりも、撮りやすさが肝心。
開発には、女性社員がたくさん関わっていたと聞く。

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       うん。 今後は、これまでより少しだけ積極的にこの仕事ができそうだ。