降りる人が先

電車に乗り降りするときは、
電車から降りる人が先に降りて、彼らが降り終わってからホームで待っていた人たちが乗り込む。
これは東京ではかなり徹底されている動きで、
昔の特定国からの旅行者はともかく、最近では特定国アジア人旅行者もキューを守るようになった。

しかし、大阪より西になると、その動きも危うくなってきて、
並ばなくても乗降客たちがチャチャっと動いて滞らない大阪ならばまだしも、
研究施設のある相生に出張したときは、老いも若きも待たず並ばずドアに殺到し、
グチャグチャになってたのでひどく驚いた。
地元研究者に聞くと、人の流れが滞ろうが困ろうが、結果として時間がかかろうが、かの地はそういうものらしい。


さて。
某つくば駅の駅ビルで、化粧室に入った。
個室から出ようとしたとき、黒っぽいコートを着た中年女性が、
私をトイレの個室に押し返すように押し入ってきた

これは、ものすごく珍しい。

なぜなら電車とは違って、出る人が出てからじゃないと、トイレを使用することはできないからだ。
いや、出る人が出てからでなくてもいいと思ってるのかな　　知らん。
化粧の濃い、香水のきつい、それなりにおしゃれなおばさんだったのだが……

待っていた人たちも、ちょっと驚いたようで、
しかも彼女はその前に並んでいる人を押しのけてきたらしく、
腹に据えかねていたのか

　「切羽詰ってたんですかね……」

と、(個室の中まで聞こえるように）私に喋りかけてきた人がいた。


「聞こえたところで、日本語がわからないかもしれない」、とは、言わないでおいたが、
列を守らないにしても、これは新しいな、と、思った。