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読書録 『悪魔は天使の胸の中に』

徳間文庫 柴田哲孝 『悪魔は天使の胸の中に』 読了――― 

  
   新宿、仙台、福岡など日本各地で、見知らぬ通行人の女性をバットで殴って、
   死傷させるという事件が連続発生。
   犯人は、殺害後、逃走せずに、現場で茫然としているという共通点があった。
   いずれも犯人はその場で逮捕。犯人同士に、接点はまったくない。

   新宿署の刑事・城島は元FBI心理捜査官エミコ・クルーニルと共に、恐るべき事件の真相に迫る。

                                               (「BOOK」データベースより)

面白い。
というかプロットがうまいので、ガンガン引き込まれる。
ただ、プロットのうまさ、王道さは、限りないチープさや、ジェットコースターストーリーの凡庸さとも繋がっていて、
柴田哲孝って、こんな2時間ドラマのシナリオみたいなプロットも作るのか、と、少々残念だった。

残念ではあるのだが、それはそれ、問答無用に面白い――――

いやいやいや、柴田作品なら、巷に溢れた警察小説とは一線を隔すジャーナリストならではの深さがあってさ、
刑事のプライベート問題と、犯人探しだけでは済まされない、社会問題提起があるはずじゃないの?
―――と、思っていたので、普通の警察小説として面白いだけじゃ、物足りなかったのだ。
ほんとに、どんなに面白かったとしても。

プロファイラーというのがもう警察小説としては手垢のついたモチーフだし、
ネタというか、トリックも、まさかそんなチャチなところに落とさないよね、と思っていたのに、そのまんま。
それに、家庭用パソコンからだと、そのトリック、うまく行ったり行かなかったりだと思うんだけどな。
無差別殺人―――加害者になってくれる人も適当に選んで、誰かが犯罪者になってくれればいいや、
と、真犯人が投げやりな態度でトリックを作っていた、というのなら、この成功率でもいいんだろうけど。

ラストもとってつけた感じで、時間の流れとか反撃トリックに使う画像とか、無理やり感があったかな。
ラストが駆け足になっちゃうのは、『TENGU』のときもそうだった。


それでも、ご都合主義的、短絡的にカップルを作らないのはこの作者のいいところだし、
クニークルが、「変な女」でもなく、この手の話のステロタイプの都合いい女でもないのもよかった。
たまに出てくる作者のオフザケも、鼻につくほどではなかった。
   (刑事が柴田作品を読んでいたり、アイドルの名が実在の女優のアナグラムになっていたり)


柴田哲孝は、警察ものじゃないほうがいいのかもしれないな。
刑事を書いている限り、有賀みたいなリアリティは期待できないのだと思う。

そうそう、ものすごくドラマ化がしやすそうだけど、やるなよ。
いい役者を遣えば使うほど、めっちゃチャチになるからな。