ブログ引越し検討中 (仮住まい)

yahooブログからの引越しを検討中です。現在テスト使用中。

規則と習慣

所属している研究所は、セキュリティにうるさい。

身分証とパス(キーカード)が一体化していて、
建物に入る時、出る時、実験室に入る時、出る時、ドア横のスキャナーにそれを通さないと、ドアが開かない。
身分証の職位と部署が、通れる通路、開けられるドアの範囲とリンクしている。
薬品庫の鍵の保管場所や、液体窒素のバルブにもスキャナーがついていて、
誰がいつどこに移動して、何をしたかが、すべて記録されることになっている。

当然、来訪者も来訪者用のパスを受け取り、それがなければ建物の中を動き回れない。
いたるところで監視カメラも動いている。
高価な貴金属(実験に用いる)もあるし、放射性物質や、化学薬品、もちろん毒物・劇物もあるから、
そのセキュリティシステムは必要なものなんだろうし、それを守らせるうるささも必要なものだ。

一方、そういうセキュリティシステムがあっても、
監視カメラを壊した上で、ドアのガラスを割り、強引に実験室に入り込んで、貴金属を持ち去る輩が居る。


さて。
来訪者だ。

それなりのサイズの研究所だから、いろんな人がやってくる。
他の有名大学で教授をなさっている方や、今は定年退職されて名誉教授になっている方もやってくる。

彼らが教授をしていたときの大学の来訪者管理や、
(現在でもそうかもしれないが)比較的甘いセキュリティシステムを非難するつもりはない。
事故や事件が起きなければ、その場で最小限の警戒で、研究や仕事を進めていけばいい、と思う。


が―――――

うちの研究所に来たときにカードキーの登録をせず、
他の人が開けたドアに強引に割り込んだあげく、(←マンションのゲートで新聞勧誘員がやるようなやつ)
「来訪者は登録してカードを………」 と伝えるうちの職員に、
「なんて無礼なことを言うんだ、呼ばれたから来ているんだ、私が誰だと思ってるんだ」 
と、キレるのはやめていただきたい。
われわれは貴方を知っていたとしても、
ドアの開閉システムに貴方の顔と経歴を読みとるスキャナーはない。

年寄りでも若者でも、有名教授でも、セールスマンでも、
建物に入退室するときのルールは同じだ。
カードキーである自分のパスをかざし、ドアを開けて通行する。
例外はトイレに行くときですら一人で行動しない、来賓の皇族や、大臣たちだけだ。
じゃないと、フロア違いのトイレにも行けなくなったりするんだわ
あるいは、隣の建物の自販機に行って、戻って来れなかったりするんだわ
つい、他人に「どうぞ」、と譲られてドアを通ってしまった所長や理事長が、
(カードの入退室回数に矛盾が生じて)次のドアでロックアウトされることだって、ままあるのだ。


老教授は不機嫌そうに、
知り合いである教授に注意をする(←いや、ドアの通り方を教えてあげただけ)若手職員を、無礼だ――という。
セキュリティレベルを上げないと、安全を保てない研究所を、職員のレベルが低いのではないか――という。
防犯や事故対策が必要な、現代が、昔に比べて病んでいる――という。

いや、我々はそんな大げさなことは言ってないんだよ、
危険な設備に入るときには、必ず登録してください、って言ってるだけなんだよ
私のことくらい覚えておけ、って、思ってるかもしれないけど、
偉大な研究をした人だけど、今は入構登録もできなくなっちゃったボケ老人、って、覚えられるだけだよ。


どこもかしこも老人トラブル、どうにかならんかな、もう。