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ひとまず終わった &金の話

千葉にある大学で、はじめて集中講義をすることになり、
二日続けて喋りまくってきた。 
90分授業を3コマ連続、それを二日続けてというのは、喉にかなりの負担をかけることがわかった。
2コマ連続はありがちなのだが、3コマ目で急に苦しくなるようだ。 

寝不足解消で長時間眠ったのに、今朝もまだ声が嗄れている気がする。

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習志野周辺には、大学がたくさんある。
日大生産工、東邦大学千葉工大も遠くないし、○○大学習志野キャンパスや○○大学習志野グランド――
などなどとても多い。 とんてもなく学生街だ。

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さて、初めての講義準備 (はじめていく大学の講義準備) は、なかなか大変なもので、
それは「学生が私の講義を受講するより前に受けている講義内容」 を、把握できていないという理由からだ。

学生たちは聞いたことの無いキーワードばかりではついてこれないし、
かといって、他の教授や講師が行った授業と同じ内容では、受講してもらう意味が無い。
それまでに彼らが持っている知識に、ちょうど上乗せすることができる講義が望まれるのだが、
そのちょうどよさが、その大学の講義を始めたばかりではわからない。

少し前から調査しておけばよかったのだが、直前に情報をもらったせいで、
このここ数日は準備のために毎日徹夜に近かった。

準備が大変なのは、相手が自分と同じ学部の学生ではない、という理由もある。
医学部系の学生に向けて講義をすることはこれまでにも何度かあったが、
今回は理学系と医学系の双方にわかるような講義を求められた。


 「……それって、医学部の学生が将来医者になって、
   医療機器を混乱無く使えるように、電気回路や放射線の話をするのと違うんですか?」

   「いえ、大学院や大学病院で研究する助けになるよう、ご専門の研究を噛み砕いて話してください」

 。oO *1

   「講義謝金は、2日で30万ほどでおねがいできますでしょうか。 税金引きますけど」

 「 *2 ――それは貰いすぎではないですか? ○○医大でも一コマ3万円(税込み)でしたよ」
     。oO *3

   「代替できないご専門の講義をしていただくので、本来のお仕事をお休みしてきていただいても
                                              損にならない設定にしています」

 。oO *4  


と、思いつつ、
講義を担当する教員がいないから非常勤講師を雇った――という話とは根本的に違う様子なので、
非常勤講義のスライドではなく、専門の研究をふんだんに入れた新しいスライドを作り始めた、
              500枚くらい。

   通常、専門のスライドは、ほとんどが英語で作ってある。
   物理専攻の大学院生には外国人留学生が大勢いて、
   国際会議でしゃべったような専門研究のスライドをそのまま流用する。
   参考までに国際会議の参加費用は、一人当たり日本円で5万円から10万円だから、
   そういう価格に見合った講演(といっても、国際会議の発表は一人15分~30分程度か)を準備する。


留学生がいないから日本語で講義をしてくれ、ということだし、
そもそも物理専攻の学生ではないので、  「講義言語だけでなくスライドも日本語でお願いします」  


というわけで、学会&ドイツで講義に使っていた大学院スライドを、
         500枚、ひたすらひたすら和訳。
          バイリンガル秘書さんを使うわけにいかないし、下請けしそうな娘は海外旅行中だし
―――死ぬかと思った。



学内に、彼岸花がたくさん咲いていた。

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学生たちの就職先を見越した産学連携事業や、
高校生から大学生への知識のギャップや心のギャップを少なくするための高大連携事業が行われている。

必要性はわかるし、学生や若い社会人たちに、順当に次のステップに上がっていってほしいのもわかる。
だが、上りにくいステップに、はしごをかけたり高さを下げたりして無理やり引き上げると、
たとえば、入試の問題を簡単にして、定員の人数を確保するような対策を講じると、
本来大学で指導するべき内容を、伝えられないことになる。

  かなり昔にも、ブログに書いているのだが、
  電磁気学を学ぶときに、高校数学(数Ⅲ)ができなければ話にならない。
  入試でその知識を求められなかったのだから、講義で数学までカバーすべきだ、と主張する学生がいる。
  その辺が米国の大学生と違う。
  日本学生の気持ちもわからないではないが、そのためにシラバスに受講に必要な知識が書かれている。
  全員とはいわないが、ドイツも米国も学生は受講に必要な知識を独自にかき集めてきて受講に臨む。
                         (入試の重さが欧米と日本で違うからなのだろうが―――)
  大学の講義と、高校までの講義が違うことを、学生もその父兄も理解してほしいんだけどな、と思う。

  日本語が十分わからない学生がいて、その子が専門の講義を聞き取れないからといって、
  講師が小学校中学校レベルの日本語を教え始めたら、他の学生、怒らないか?
  高校の数学や小学校の語学の授業は、そんなに高くつくのか?
  大学の学費と、専門知識の受講の権利を、そこまで無駄に使っていいのか?


昨日の学生たちは、大まじめで――いや、この大学が日ごろから厳しいのかもしれない―――
スライドの、彼らにとっては真新しいキーワードを次々写し取ろうとしていた。
どうにかして追いついてこようとする様子は、少し気の毒にも思えた。

全部理解するのはかなり大変だと思うし、世の中にこの分野のテキストは無い。
写し取るのに時間をとっていたら、話を聞くのが疎かになるし、全力で聞かなければ、理解は追いつかない。


     「配布できるスライドは、後でコピーを渡します。担当の事務局に連絡をください」

        ……甘やかしてるかな。いや、私もその昔、小柴先生のスライドを全コピーさせてもらったっけ。
        (なお、ひふみん(将棋プレイヤー)は小柴先生(ノーベル賞受賞者)にちょっと似てると思う)

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努力すべき部分と、手を抜く部分、他の人の手を借りて勧める部分、
社会人となったときにその判断をうまくしていけるよう、
大学生のうちに知識以外の側面も鍛えていってもらえたらいいな、と思う。

*1:医学部向けに専門を噛み砕く――って、砂になって粉になって、風化するんじゃね?

*2: え゛

*3:某ノーベル賞研究者に500人教室で講演してもらって、5万円しか払わなかったよ

*4:医学部設定、すげぇな &天野先生ごめんなさい