ハロウィン
顔を見てすぐにわかった。
ハムスターだ。
4年前に死んだハムスターだ。
そいつは10歳くらいの少年の姿をして、台風の強い風と一緒にやってきて、
我が家のドアをピンポンした。
インターホンのカメラを真っ黒い目が見上げ、鼻の先がちょっと黒かった。
弟の友達だと認識したのか、擬人化されたハムスターとして受け入れたのか、
私はそいつをダイニングに招きいれて、椅子に座らせた。
テーブルの、生のカボチャをくりぬいて作ったジャックーオーランタンに、
火をつけたティーキャンドルを入れる。
物欲しげに手を伸ばしていたから、
「齧っちゃ駄目ですよ」 と言ったら、つかみかけていた爪をひゅっと引っ込めた。
マッシュカボチャと、カボチャケーキと、ぬるくて薄いアールグレイを振舞う。
彼は大胆に、それでいてチマチマと丁寧にカボチャに取り掛かり、
いつの間にか、ケーキの下に敷いたナフキンすらない。
――― 頬袋に詰めたのか。
彼がきた部屋は、ほの温かく、香ばしく、少しだけ油っぽく、臭い。
カボチャやヒマワリの種子と、乾いた藁のにおいだ、と思う。
そしてハムスターの匂いだ、と思う。
食べ終わった彼は、大きなあくびをする。
口を開くと種子の匂いが強くなって、
カボチャの中のキャンドルが、ぱちっ と音を立てた。
「美味しかった?」 と聞いたら、
「あっざーす」 と、礼を言い、降り始めた雨の中を帰って行った。
また、来年―――
(プチホラー、というか、オリジナルショートショートです。)
ハムスターだ。
4年前に死んだハムスターだ。
そいつは10歳くらいの少年の姿をして、台風の強い風と一緒にやってきて、
我が家のドアをピンポンした。
インターホンのカメラを真っ黒い目が見上げ、鼻の先がちょっと黒かった。
弟の友達だと認識したのか、擬人化されたハムスターとして受け入れたのか、
私はそいつをダイニングに招きいれて、椅子に座らせた。
テーブルの、生のカボチャをくりぬいて作ったジャックーオーランタンに、
火をつけたティーキャンドルを入れる。
物欲しげに手を伸ばしていたから、
「齧っちゃ駄目ですよ」 と言ったら、つかみかけていた爪をひゅっと引っ込めた。
マッシュカボチャと、カボチャケーキと、ぬるくて薄いアールグレイを振舞う。
彼は大胆に、それでいてチマチマと丁寧にカボチャに取り掛かり、
いつの間にか、ケーキの下に敷いたナフキンすらない。
――― 頬袋に詰めたのか。
彼がきた部屋は、ほの温かく、香ばしく、少しだけ油っぽく、臭い。
カボチャやヒマワリの種子と、乾いた藁のにおいだ、と思う。
そしてハムスターの匂いだ、と思う。
食べ終わった彼は、大きなあくびをする。
口を開くと種子の匂いが強くなって、
カボチャの中のキャンドルが、ぱちっ と音を立てた。
「美味しかった?」 と聞いたら、
「あっざーす」 と、礼を言い、降り始めた雨の中を帰って行った。
また、来年―――
(プチホラー、というか、オリジナルショートショートです。)