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世知辛いのぉ

仕事関連つれづれ。
他の分野の人にはぴんと来ないかもしれないが、なるべく一般化してボヤこうと思う。

自費出版

自費出版とは本を作るための経費を著者・作者が負担し、自費で出版する形態のものだ。
共同出版という名前を使うこともあるが、基本的には著者が経費負担する。

日本人は文章を書くのが好きな人が多い、と思う。
減ってきたとはいえ、文字中心のブロガーが相変わらず多いのもそうだし、
自分史を書きたい、という高齢者はたくさんいる。
普通の人の普通の人生を普通の人が書物にしても、書店で売れるとも思えないから、自費出版だ。

無料の電子出版サービスなどもあるのだが、中には悪質な自費出版詐欺がある。
「おもしろい」 「すばらしい」 「きっと売れます」 などと言葉巧みに高齢者を煽て、
装丁や紙質に凝った書物を何百、何千部も作らせる。
が、そんな本を書店に置いてもらえるわけもなく、だから、作った分を自分で買い取り、保管することになる。

○○賞なんていうおまけをつけてある業者もいる。
締め切りを作って投稿させて、一応選んで、受賞者に出版させる。 自費で。


フェイク・カンファレンス

国際会議に参加して、自分の研究を発表する、というと、かっこよく聞こえるかもしれないが、
今日び国際会議はピンからキリまである。

交通費を出して参加費を出して発表しに来てくれるなら、
誰でもいいから来てくれ、と思う会議運営者はたくさんいる。

自分で国際会議をオーガナイズするときは、我々だってそうだ。
参加者が少なければ国際会議が成立しない、会議場に見合った人数に来てもらわなきゃならない。
招待講演者は、参加費無料で招聘するが、交通費滞在費までを全額会議から支払えるかどうかは、
運営母体の財力や、どのくらいその研究者を呼びたいかで変わってくる。

招待講演と称して、幾分減額しただけの参加費を取り、交通費、宿泊費は参加者持ちならば、
招待講演者を増やせば増やすほど、大きな会議になるというわけだ。
下手をすると、超高級ホテルや、クルーザーを借り切ってその中で国際会議を行う、という形にし、
ホテルから会議主催団体に巨額のペイバックがきたり――― 
いや、むしろ、旅行代理店のようなところが中心になって国際会議をでっち上げる場合もある。

それらの会議を我々はフェイクカンファレンス、と呼んで、参加しないよう気をつけているが、
「俺は招待講演を依頼された!」  と、舞い上って参加してしまったり、
「会議名目で地中海クルーズができるなんて素敵」
「こんな観光地の高級ホテルに泊まれるなんてラッキー」
と、積極的に参加しようとする研究者や大学教員も―――残念ながら皆無ではない。

その交通費や宿泊費は、税金だったり大学生の学費から出ていたりするのにね。

  *もっとも……ほとんど学会発表の経験がなく、論文も書かない、つまり名前を知られていない教授には、
  *フェイクカンファレンスのお誘いすら来ないから、下には下がいる、ってことなんだけどもね。
  *そうそう、研究をすることが主体で、それ論文などでを発表することに意義を見出せないという教授がいるが、
  *論文を書けるのに書かないという人はまずいなくて、書けないんだよ・・・・・・。
  *でさ、国費や学生の学費を使って研究したものを、広く普及させるのは義務だからね。 
  *そこんとこ、間違わないでよね。 ←誰に言ってるんだ、誰に


■フェイク・ジャーナル■

この言葉は、今、私が作った。
ジャーナルが実際に出版されるという意味では、フェイクではない。
正しくは Predatory Journals(和訳語:ハゲタカ出版)という。
フェイク・カンファレンスこそ数年で有名になったが、学術誌にも“フェイク”っぽいものがあるってことだ。

今朝、知らぬ人からメールが来た。

「あなたの論文を送ってくれ」とか、「似たような研究をしているんだけど、意見交換しないか?」とか、
知らない人からメールが来ることは多々あるから、その手のメールは日本語でも英語でも気にしない。
しかも、私が以前執筆した論文のタイトルを書いていて、
「この研究は今どのくらい進んでいるのか、続きがあるなら、うちのジャーナル(学術誌)に書いてくれ」、
という内容だったから、一応まじめに読んだ。

が。 なにか、ひっかかる。

ひとつは「先日、お話したとおり」 という意味のことが書いてあるが、心当たりがない。
それに「貴方の論文を読んで」 と言っている割に、ピックアップ論文が古いし、
医学系薬学系物理系全部の範囲の広いジャーナルのようだ。
該当ジャーナルのHPも見てみたが、綺麗な割りに、なんとなく、焦点がぼけている。

だから……英語版の5チャンネルみたいな、研究者掲示板をのぞいてみた。

「掲載論文は厳しく審査するって言ってたのに、投稿したら2日で掲載決定の返事が来たの」
「新規性の高いことを書いて、反発が来ると思ったんだけど、スルーされた」
「掲載決定してから、掲載するには$300払えって言ってきた」
「え、うちは$500だったよ?」

……そういうことっスか。

なるほどね。 自費出版ジャーナルとでもいうのか。
まあ、500ドルはきっちり査読審査をしてくれるジャーナルなら、ぜんっぜん高くないとは思うけどね。

なお、某コロラド大学の先生がチェックしている、劣悪なジャーナルのリストがある。
著者の支払う論文投稿料(APC)の搾取(predatory)を目的としている、とみなせる出版社のリストだ。
海外(日本)からもアクセスできるのだが、それはそれとして、一人の人の判断基準だからな、ってのはある。

でも、私にメールが来たジャーナルは、そこにも出てた★    だめじゃん。

引っかかる人いるだろうなあ、多いだろうなあ。
掲載料払っちゃうんだろうなあ。


例によって、仲間と研究所の中に 【注意喚起メール】 を流す。

これでまた、大学格差が広がる、といえばそうなんだろうけど、
広く公表できないのは、場合によっては出版社の営業妨害になってしまうからだ。
掲載料を支払ってでも、査読がなくても自分の研究を発表したい人はいるのだからね。
それこそ、自費出版の自分史に満足している人たちと同様に。


ほんとにもう、世知辛いよなあ。



人海戦術で、関連記事を見つけました。 
https://www.enago.jp/academy/fakescience-tumor_201706/
https://www.enago.jp/academy/predatory-journal-1_201710/

でもって、上記記事の中に出てくる堅固な査読プロセスのシュプリンガー
去年キャーキャー言いつつ書いてた辞典が、まもなく出版予定♪
そりゃもう大変だったが、その割に参考文献の人名のミスなんかあって、緊張感ある著者校正だったよ。