ロマンスなんて始まらない
東京の東側の、いってみれば古くからある街に住んでいるので、周辺に高齢者が多い。
田舎の高齢者(**)ほどずうずうしくもないし、女性蔑視もしないが
**たとえば、山手線やつくばエクスプレスに高齢者は少ないが
**常磐線だと柏を過ぎたとたんに、乗り込んでくる高齢者が変わる。
**並ばない、譲らない、「女子供はどけっ」という感じ。
なんというか、ちょっかいを出してくる。しつこい。
まあ、葛飾柴又は老人社会だから、健康食品のお店などもいろいろと立ち並ぶ。
お婆さま方お爺さま方の講習会なのか勉強会というのか、健康食品のお店で定期的に教室みたいなのがある。
授業の合間(?)にワラワラと出てきて、路上でタバコを吸ったりしている(葛飾区の路上はほぼ禁煙)ので、
近隣の人で、迷惑だといっている人も少なくない。
なのに咥えタバコ、歩行タバコで喋りかけてくる。今朝は通勤途中、信号を待っていたら、ちょうど彼らの休憩時間に当たってしまった。
慌てて、喋りかけるなオーラを纏った(つもり)。
と、そこに救急車が走って来た。 周りの車にマイクで告げながら、赤信号を走り抜ける。
スピードからして、患者が乗っているだろうことは想像できたし、
一台だったので(事故でなく)急病人か、病院間の患者移動か―――
すぐ先に見える病院か、その次の総合病院か、上野方面まで行くのだろうか。
「看護婦さん……いや、お医者さんかな」
「………(救急車に見とれて、喋りかけるなオーラが乱れたか)」
「救急車を見る様子がね、心配でもない、迷惑でもない、同業者のようだった」
「………(同業者じゃねーし。それにだったらどーした)」
「私もね、病院にいたのでね」
「山■さん(仮名)は薬剤師さんだったのよね~」
「あらぁ、どちらの病院に……」
「うちのお隣のご主人もそこの××病院に勤めていて……」
身長170センチ前後、咥えタバコの臭いと体臭の強い爺さまは、周りの女性には人気者のようだ。「(私に向かって)どうだい? 当たっているだろ」
「い・い・え」
「ええ? そんなはずないよ。じゃあ主婦? 働いてないの?」
「急いでいるので――」 信号が変わったのをいいことに、横断歩道を歩き出す。
「ちょっと、あんた……」
ついてこようとしたので(どこ来るんだよ、健康食品店はそっち側やろ……)、小走りに逃げた。
正直に言えば、年齢云々は関係ない。
何回か書いているが、私は他人に喋りかけたくて、交流を持ちたくてウズウズしている人たちが苦手だ。
彼ら、なにげなく喋る、お茶でも、食事でも……と、その先を求めようとする人が多い。
私の会話の目的はあくまで内容・情報で、会話の雰囲気を楽しむ趣味や余裕は持ち合わせていない。
特に、世代や生活習慣のせいで感性がかけ離れた相手との会話は楽しくないし、めんどくさいだけだ。
違う世界でも楽しいこともなくはないが、別世界の中で興味のある対象はそれほど多くはないし、
まして別世界でさえあればいい、というはずもない。
ほら、あれだ、トーマス=マンの、「正道はひとつだけど、外れた道はたくさんある」 ってやつ。(←解釈違っ)
外れた道を進む者同士で好みや興味が一致するなんて、正道(あるいは中央道)で一致するよりずっと難しいということ、わかんないかなあ。
お爺さまお婆さま方、あるいは路上や電車で会話の相手を求めている人たちは、ネットをやればよいのに。
検索したり、彷徨ったりして、多くの人の中から自分と気の合う人を探せると思うんだけど。
で、ゆっくりと交流すれば、早とちりも思い違いも(対面よりは)少ないと思うんだけども。
―――いや、でも、思い込みにはネットのほうが陥りやすいか。 それはそれで怖いな。