菜の花パスタの美学
今年(この春)初めての菜の花パスタを作った。
菜の花とパスタを茹でて、スクランブルエッグを作って、
と、作り方を聞かれれば、簡単なこの作り方を説明する。
でも、これって物は言いようなんだよ……
菜の花の軸の部分と、花の部分は茹で時間が違う。茹ですぎれば菜の花のほろ苦さが消える。
茹で時間は食べる人の好みでも違うし、菜の花の鮮度でも違う。
ボウルごと茹でているパスタの上に乗せて、温めて柔らかにしておく。
パスタも合える時間を計算しないと柔らか過ぎてしまうので、標準湯で時間よりも短くしておくのがコツだ。
生クリームや牛乳を入れたスクランブルエッグは、焼きあがった後に放置すると水分が出て不味くなる。
お弁当に入れるときなどに水分を出さないコツはあるが、そうすると幾分固くなるので、パスタにあわない。
これらを、同時に仕上がるように逆算して、過熱する。
なので、レンジ周りはこんな感じになる。
パスタと同時に茹で上げてお湯を切った菜の花の半分を、一緒にボウルのクリームチーズで和える。
なお、クリームチーズは塩胡椒の割合も、好みで大きく分かれるので、適当に調整する。
*剣士娘はクリームチーズを入れないほうが好きで、
*抹茶坊主は菜の花少なめ。 はパスタの麵が固いほうが好き。はなんでも食べる。
合えたクリーム菜の花パスタをお皿に移し、残りの菜の花とスクランブルエッグを飾りつける。
一つ一つの作業は単純だが、こんな風に時間に追われて、菜の花パスタが出来上がる。
ブロ友のけいあゆさんのレシピを見るにつけ、
料理って、たぶんかかれていないところにノウハウがあるんだよ、と、思う。
似たようなものは作れても、写真に撮影されるものは同じでも、たぶん、味と、食べる人の満足度が違う。
私は研究所に勤める実験系の研究者だ。
実験装置に関しては勘が働く。事故の起きる直前に安全措置を講じていたりする。
実はある程度(2,3,4年?)同一の、あるいは類似の装置にかかわっていれば、これはできるようになる。
勘には根拠がある。
各人が違うのだと思うが、実験装置の発する音や匂い、制御系コンピュータの立ち上がり時間の違いなど、
ほんのちょっとの違いに気づく。
私は音だ、スイッチを入れた瞬間から、何秒後にこの音になって、何秒後にこの音になって、
最終的に○分◎秒でノーマルモードのスタンバイサインが出る、というのを、たぶん、耳で覚えている。
ほかのことをしていても、耳に入ってくれば違和感はわかる。
ちょうど、柴犬の顔を見分けるように (←この判別を他人に伝えるのが一番難しい、と、思う)。
「あれ? 今ちょっとおかしくなかった? 立ち上げなおしてみて」
「そうですか? 俺は気づきませんでした」 ←今はこの人の担当装置。
「そ? でも、やってみてね」 ←気になったけど、用事があったのでそのまま別の部屋に移動。
でも、はそのまま進めて、その晩、トラブルが起きた。
もっとも、装置の立ち上げをやり直しても、の耳では気づかれなかったかもしれない。
仕事はできるのだが、自分の技術に自信を持ちすぎてしまっている、ちょっとだけ困った人だ。
自分の仕事はノウハウの範囲まで心得ているから、すごく大変なことをしていると思っていて、
他人の助言は言葉そのものとしか受け取らないから、大したことはない、と思ってしまう。
お料理レシピのノウハウと同じだよな、と、思う。
自分で繰り返さなきゃわからない。
だから、ちょっとした助言も、そのとおりに従ってみる必要がある。
あれさえなければ、奴はもっと良いポジションに―― いや、だったらあの年で私の部下になってないか。
元々、国立研究所員として必要な役人や公務員としての立ち回りは、まったくできない人だ。
それなら、研究面くらいきちんとやれ、トラブルを起こすな、と、思うのだが。## もっとも、役人の立ち回りできない人はたくさんいるし、それができる人を「研究者として不純」だといって馬鹿にする人もいる。
## 「てめーら誰の研究予算で仕事してると思ってるんだ、馬鹿野郎」 と、思う。 ## 奴はそこまでは愚かではない。
## いささか日本人っぽくないかもしれないが、何の金で、何のために奴を雇えているか、私ははじめに伝えてあるからだ。
トラブル回避の費用は大したことないし(←それでも私の部署のお金を支払う)
時間の遅れも一週間くらいだから、まあ、いいだろう。
我が部署はマニュアル重視主義で、装置に付帯したマニュアルと、個々人のラボノートが膨大にある。
の個人的なマニュアルに、さんの言葉には、ひとまず素直に従っておく。
という項目が増えるといいのだがね……