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映画鑑賞録  『ザ・シューター 極大射程』

今更ながら、というか、
原作に惚れこんでいたので見るのを躊躇してた 『極大射程』 を観た。

原作は、2000年 「このミス (このミステリーがすごい)」海外編トップ、
SKYPerfectTV!ミステリーチャンネル海外編第一位の、スティーブンハンターの傑作。

私が読んだバージョンは、新潮文庫 スティーブン=ハンター『極大射程』佐藤和彦訳 
再々再読してたりする。
原題は 『Point of Impact』 なんだけど、ふと気付くと訳もいい。

  #ハンター作品は『ブラックライト』から読み始めたので、公手成幸訳も好きだ。


もうね、原作の方は文句なしだったわけですよ。
ボブ・リーの卑屈ではない偏屈ぶりも、リック・メンフィスの正義感も、
弁護士の偏見も、国家と名のつくものの身勝手ぶりも、あそこまで全員キャラが立ってる小説も珍しい。

映画は、ま、別物といっても過言ではない(笑)  
ボブの原作でのあだ名の、the nailer じゃなくて the shooter だし
     (ちょっとクラシックな言い方で気に入ってたんだけどね、釘打ち師)。
原作ではあまりにも女っ気ないからって、ドニーの未亡人、美人だし、たくさん出てくるし。
ベトナムじゃなくてアフリカだし。
ニック役のスターリング.....悪くはないが、イメージ違い過ぎ。

それでも、人の動きや、心意気などは、原作の通りだったと思う。
ただ、ベトナム戦争をやめて舞台を現代に持ってきたことで、
彼らが敵対するものが卑小になってしまったのだ。

『007』 シリーズも同様だと思うが、敵がアラブの富豪だったり、自国の上院議員だったり、
陰謀のきっかけも石油の採掘権だったり、個人の趣味だったり。
敵方のパワーと悪人ぶりが、スケールダウンしているのだ。
なんかねえ、国家の旗のもとに命を賭けるのに、物足りない。


でも、単に映画としてみる分には良かったですよ。痛快だったし。
ボブ・リーったら、素手で何人殺してるんだよ、っていうのは別として。
  (原作には、狙撃手は狙撃以外ではあまり人を殺さないようなことが出てた気がするのだ。
   シリーズ全部読んでるので、どの作品だったか忘れたけど)
             
………
ベトナム戦争ものの映画というと 『ランボー』 が出てくると思うのだが、
『極大射程』 の原作で、ボブ・リーは偏屈だけど、ランボーみたいに病んだ (?) ところがない。
本当の意味で静かに、孤独に暮らしている。他人を無理に寄せ付けないわけでもない。
何かを否定してその反対のことをするのではなく、自分の独自の判断基準で生きている。
だから、魅力があったのだが ……

そうそう、原作では、ドニーは20代だが、ボブ・リーは50代くらいの印象だった。
だから、映画化の話と主演を聞いたときには、おいおいおい......でした。

原作は、ボブ・リー=スワガーのシリーズの他に、彼の父親であるアール=スワガーのものがある。
双方とも傑作ばかりだと思うが、父親の方が普通のヒーローものっぽい。
時代が時代なので、人種差別意識が残る弁護士とか、赤外線スコープの話とか、
ロシアの狙撃手とか、その時代にしか成り立たない人生観や駆動力がいっぱい出てくる。
それらを綺麗に組み上げて、登場人物の行動規範にしているのが原作なので、
それを現代に持ってくるのは、幾分難しいかもしれない、と、思う。

その点、アール=スワガーのシリーズの方が、現代に巻きなおしてもうまく処理できるように思う。


………原作に惚れこんでいても、映画化してほしくない、とは思えないのが、映画好きの私です。