読書録 『ソウルケイジ』
『ストロベリーナイト』 に続いて、光文社文庫 誉田哲也 『ソウルケイジ』 読了。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%BD%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%82%A4%E3%82%B8-%E8%AA%89%E7%94%B0-%E5%93%B2%E4%B9%9F/dp/4334925421
ファンも多そうなので石を投げられるかもしれないが、
女警部補、姫川玲子は今回もおバカ炸裂である。
『ジウ I 』 の美咲さんの脳内お花畑に勝るとも劣らない、ぶっ飛びぶりである。
前作を読んだとき、姫川警部補を
「感情や発言が(話の都合で)行き当たりばったりに揺れ動く、美人刑事」
という現実味のないキャラ設定のミス、と、解釈したが、こちらを読んで思い直した。
彼女はもともと
「その場その場の感情に流されt突っ走ってしまう、現実味のない刑事」 という設定なのだ。
“きっかけは、よく分からないが、きっと何かがあったのだ”
“とくに根拠はない。ただ、なんとなくないと感じたのだ”
そんなドライビングフォースで、証拠物品は持ち出すわ、命令違反はするわで突き進んでいく。
まるで 『ベビー@メール』 の勢いだ。
#アマゾンを見てもわかってくれると思うが、ベビー@メールは世紀の怪作だと思っている。
#ベビー@メールの読書録 http://blogs.yahoo.co.jp/green_zebra_2008/26475675.html
##念のために言っておきますが、誉田氏、文章はめちゃくちゃいいです。読みやすいです。
##山田某と比べてはいけません。
しかも、彼女の ”なんとなく”や”何か”は、のちに解明されることもない。
(彼女がどうしてそう思ったかなどを読者にわかるチャンスがない)
にもかかわらず、彼女は偶然犯人に突き当り、結果オーライ、めでたしめでたし。
お花畑の美咲さんは、それでも善意でコーディネートされてたからまだしも、
姫川に至っては、事件うんぬんよりも、同僚の刑事に抜いたの抜かれたのが優先する身勝手ぶりだ。
他の刑事たちがまともに働いているところに彼女が出てくるたび、
読者が 「しょうがねえなあ、こいつ」 と、思われる発言や態度をする。
もう、しょうがねえなあ~の役回りと決めて書かれているとしか思えなく (読めなく) なってきた。
というのも、姫川以外のキャラクターは、刑事も犯人側もそこそこしっかり描かれていて、
その連中によって、無理なく話が運ばれて行くからだ。
姫川の直観によって話が進んでいった前作に比較すると、断然、警察小説としてのレベルが高い気がする。
今回の 『ソウル・ケイジ』 のほとんどは正統派警部補、日下の推理、調査で解決に至っており、
姫川はその周りで、直感勝負で踊っていただけである。
主人公や話のドライバーとしては、なんだかなあ、の性格でも、
並列して捜査をする刑事群の一人なら、(姫川の特質も) 楽しい。
そういう意味で、無理に彼女を主人公に据えたりしなければ、このシリーズは続くのかもしれない。
以降、恒例のネタばれ感想 読む方は反転して読んでください。
・前作に引き続き、今回も冒頭にトラップもどき。
バラバラ死体でなぜか手首だけ捨て忘れたようで、他がなかなか出てこなくて、って言ったら、
指紋を取らせたいからに決まってるじゃーん(涙)
まさかストレートにこれをネタにしたりしないよな、と思って読んでたのに、その通り、って、おいおい (^_^;
・真犯人の高岡 (内藤) の遺体を見つけるところは、姫川の勘に頼った書き方になっているが、
そもそも、直接会話をしたにもかかわらず取り逃がしたことの失態を問われないはずはない。
なんでスルーするんだ(涙) せめてどっぷり反省するか始末書を書けっ
・川原での遺留物の捜索は、普通は犬なんかも使うと思うんだが、
どうしてすぐそばのホームレスの居住に隠れた真犯人の匂いに気付かないですむのだろう(涙)
しかも彼は、死体を解体して、血だらけになった直後だ。匂いは残ってなかったん?
犬を使わなかったにしても、会話までした姫川も井岡も、血の匂いにすら気付かなかったってのは、何事?
・血液型は、ABO判定だけということはない。
DNA鑑定なんてとこにすっ飛んで行く前に、人を判定する基準は山ほどある。
DNA鑑定の認識だっていい加減すぎ。 急がせたからアバウトな結果がでるというものではない。
まして切り落とした手首を他人の血液に付けることによって、ミスリードする確率が、そう高いはずもない。
・姫川の数々の証拠品持ち出しを、なんで結果オーライで不問にしちゃうかな。
結果オーライにならないのが公的組織なので、リアルな警察小説の多い昨今、
その辺をいい加減にスルーされてしまうと、どんどん作りものっぽさが増してしまう。
どっかで一文、姫川が始末書と格闘しているシーンを書けばいいので、
そのくらいのエクスキューズはして欲しい。
もともとの設定が架空でファニーな 『STシリーズ』 や 『恋する死体』 みたいな小説ならば
ドタバタシーンがあれば楽しいし、現場で悪ふざけをする警察組織があっても構わない。
ただ、誉田小説はエンタ系とはいえ、仮にも現実の警察組織をトレースした形で書き進んでいるのだ、
あまりに非現実的なのはいただけない。
このあたりは、私が普段、
取材魔として知られる真保裕一や、ジャーナリストでもある柴田哲孝の小説を
好んで読んでいるという理由もあるのかもしれない。
現実と一致しろというわけではない、リアルに見せる努力を、もう少しして欲しいのだ。
・高岡の正体、というか内藤の精神力や頭脳、父性、自制心はかなりのものだと思うのだが、
その理由をまったく言及していない。
だんだんに成長したというなら、そのきっかけなり流れを推測させる何かが欲しい。
・三島耕介の顔つきを見て、愛情を注がれて育った者の目だ。。。。と姫川が判断するくだりがあるが、
設定20代、子供も家族もない姫川に、この発言をさせるのは無理がある。
せめて今泉か日下、勝俣レベルの刑事が言うならともかく、
彼女がそういうことを言い出すのは、この場だけとってつけたようで変である。
・刑事たちの過去やら何やらを、言葉で説明しすぎ。
新人の女性刑事に、古くからいる刑事が、(当人たちが隠している風の部分を)
要点まとめてペラペラ話すというのも、いただけない、というよりは現実味がない。
だいたい、人間の性格は、いついつこういうことがあったから、それ以降こうなった、と
まるで設定資料のように決まるものではない。
ステロタイプを通り越して、薄っぺらくなる。
第一作で姫川の過去を語る必要がなかったのと同様、
使わない設定は読者に推測させるだけにして、「彼のあの性格は、こういう理由で」 などと、
資料を読み上げるがごとく解説しないでほしかった。
Tenguのラストシーンで、登場人物二人のこれからの行動が推測できるように、
何も書かなくても読者に伝わるものもあるのだ。
筆者に告げたい、
もう少し読者を信じろ & うまく伝えられるような技術を磨いてください。
・多分、こういうあたりは誰か身近な人に下読みをしてもらうか、
編集者がチェックを入れれば、ほんの少しの調整で違和感を払拭することが可能だと思う。
どうしてこのままなのだろう? もったいなく思うのは私だけだろうか?
しかし………、こんな風に多々の穴はあるものの、すりかわりのトリック、犯人とその周りの人々、
ステロタイプ&正攻法に近いにしろ、前作に比べると格段に面白かった。
そしてふと思う、なんだ、今回、姫川は狂言回しの役だったのか。
女の警部補をここまで名ばかりの設定にされるのは気に入らないが、
この作者の女性の把握がそうなのなら仕方がないか。
とはいえ、狂言回しとしても、井岡と二人ではキャラが被る。
はっきり言おう、この小説に、姫川はいらない。
----------------
暴言に似合わないケージ写真は、ガラスのお店から拾わせて頂いたもののアレンジです。
http://www.garasunosato.net/onlineshop/glass_top.html
「燃えろ! ハムスター魂っ」
なんて言ってケージを齧ってるハム画像にしようかと思ったのは内緒
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%BD%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%82%A4%E3%82%B8-%E8%AA%89%E7%94%B0-%E5%93%B2%E4%B9%9F/dp/4334925421
ファンも多そうなので石を投げられるかもしれないが、
女警部補、姫川玲子は今回もおバカ炸裂である。
『ジウ I 』 の美咲さんの脳内お花畑に勝るとも劣らない、ぶっ飛びぶりである。
前作を読んだとき、姫川警部補を
「感情や発言が(話の都合で)行き当たりばったりに揺れ動く、美人刑事」
という現実味のないキャラ設定のミス、と、解釈したが、こちらを読んで思い直した。
彼女はもともと
「その場その場の感情に流されt突っ走ってしまう、現実味のない刑事」 という設定なのだ。
“きっかけは、よく分からないが、きっと何かがあったのだ”
“とくに根拠はない。ただ、なんとなくないと感じたのだ”
そんなドライビングフォースで、証拠物品は持ち出すわ、命令違反はするわで突き進んでいく。
まるで 『ベビー@メール』 の勢いだ。
#アマゾンを見てもわかってくれると思うが、ベビー@メールは世紀の怪作だと思っている。
#ベビー@メールの読書録 http://blogs.yahoo.co.jp/green_zebra_2008/26475675.html
##念のために言っておきますが、誉田氏、文章はめちゃくちゃいいです。読みやすいです。
##山田某と比べてはいけません。
しかも、彼女の ”なんとなく”や”何か”は、のちに解明されることもない。
(彼女がどうしてそう思ったかなどを読者にわかるチャンスがない)
にもかかわらず、彼女は偶然犯人に突き当り、結果オーライ、めでたしめでたし。
お花畑の美咲さんは、それでも善意でコーディネートされてたからまだしも、
姫川に至っては、事件うんぬんよりも、同僚の刑事に抜いたの抜かれたのが優先する身勝手ぶりだ。
他の刑事たちがまともに働いているところに彼女が出てくるたび、
読者が 「しょうがねえなあ、こいつ」 と、思われる発言や態度をする。
もう、しょうがねえなあ~の役回りと決めて書かれているとしか思えなく (読めなく) なってきた。
というのも、姫川以外のキャラクターは、刑事も犯人側もそこそこしっかり描かれていて、
その連中によって、無理なく話が運ばれて行くからだ。
姫川の直観によって話が進んでいった前作に比較すると、断然、警察小説としてのレベルが高い気がする。
今回の 『ソウル・ケイジ』 のほとんどは正統派警部補、日下の推理、調査で解決に至っており、
姫川はその周りで、直感勝負で踊っていただけである。
主人公や話のドライバーとしては、なんだかなあ、の性格でも、
並列して捜査をする刑事群の一人なら、(姫川の特質も) 楽しい。
そういう意味で、無理に彼女を主人公に据えたりしなければ、このシリーズは続くのかもしれない。
以降、恒例のネタばれ感想 読む方は反転して読んでください。
・前作に引き続き、今回も冒頭にトラップもどき。
バラバラ死体でなぜか手首だけ捨て忘れたようで、他がなかなか出てこなくて、って言ったら、
指紋を取らせたいからに決まってるじゃーん(涙)
まさかストレートにこれをネタにしたりしないよな、と思って読んでたのに、その通り、って、おいおい (^_^;
・真犯人の高岡 (内藤) の遺体を見つけるところは、姫川の勘に頼った書き方になっているが、
そもそも、直接会話をしたにもかかわらず取り逃がしたことの失態を問われないはずはない。
なんでスルーするんだ(涙) せめてどっぷり反省するか始末書を書けっ
・川原での遺留物の捜索は、普通は犬なんかも使うと思うんだが、
どうしてすぐそばのホームレスの居住に隠れた真犯人の匂いに気付かないですむのだろう(涙)
しかも彼は、死体を解体して、血だらけになった直後だ。匂いは残ってなかったん?
犬を使わなかったにしても、会話までした姫川も井岡も、血の匂いにすら気付かなかったってのは、何事?
・血液型は、ABO判定だけということはない。
DNA鑑定なんてとこにすっ飛んで行く前に、人を判定する基準は山ほどある。
DNA鑑定の認識だっていい加減すぎ。 急がせたからアバウトな結果がでるというものではない。
まして切り落とした手首を他人の血液に付けることによって、ミスリードする確率が、そう高いはずもない。
・姫川の数々の証拠品持ち出しを、なんで結果オーライで不問にしちゃうかな。
結果オーライにならないのが公的組織なので、リアルな警察小説の多い昨今、
その辺をいい加減にスルーされてしまうと、どんどん作りものっぽさが増してしまう。
どっかで一文、姫川が始末書と格闘しているシーンを書けばいいので、
そのくらいのエクスキューズはして欲しい。
もともとの設定が架空でファニーな 『STシリーズ』 や 『恋する死体』 みたいな小説ならば
ドタバタシーンがあれば楽しいし、現場で悪ふざけをする警察組織があっても構わない。
ただ、誉田小説はエンタ系とはいえ、仮にも現実の警察組織をトレースした形で書き進んでいるのだ、
あまりに非現実的なのはいただけない。
このあたりは、私が普段、
取材魔として知られる真保裕一や、ジャーナリストでもある柴田哲孝の小説を
好んで読んでいるという理由もあるのかもしれない。
現実と一致しろというわけではない、リアルに見せる努力を、もう少しして欲しいのだ。
・高岡の正体、というか内藤の精神力や頭脳、父性、自制心はかなりのものだと思うのだが、
その理由をまったく言及していない。
だんだんに成長したというなら、そのきっかけなり流れを推測させる何かが欲しい。
・三島耕介の顔つきを見て、愛情を注がれて育った者の目だ。。。。と姫川が判断するくだりがあるが、
設定20代、子供も家族もない姫川に、この発言をさせるのは無理がある。
せめて今泉か日下、勝俣レベルの刑事が言うならともかく、
彼女がそういうことを言い出すのは、この場だけとってつけたようで変である。
・刑事たちの過去やら何やらを、言葉で説明しすぎ。
新人の女性刑事に、古くからいる刑事が、(当人たちが隠している風の部分を)
要点まとめてペラペラ話すというのも、いただけない、というよりは現実味がない。
だいたい、人間の性格は、いついつこういうことがあったから、それ以降こうなった、と
まるで設定資料のように決まるものではない。
ステロタイプを通り越して、薄っぺらくなる。
第一作で姫川の過去を語る必要がなかったのと同様、
使わない設定は読者に推測させるだけにして、「彼のあの性格は、こういう理由で」 などと、
資料を読み上げるがごとく解説しないでほしかった。
Tenguのラストシーンで、登場人物二人のこれからの行動が推測できるように、
何も書かなくても読者に伝わるものもあるのだ。
筆者に告げたい、
もう少し読者を信じろ & うまく伝えられるような技術を磨いてください。
・多分、こういうあたりは誰か身近な人に下読みをしてもらうか、
編集者がチェックを入れれば、ほんの少しの調整で違和感を払拭することが可能だと思う。
どうしてこのままなのだろう? もったいなく思うのは私だけだろうか?
しかし………、こんな風に多々の穴はあるものの、すりかわりのトリック、犯人とその周りの人々、
ステロタイプ&正攻法に近いにしろ、前作に比べると格段に面白かった。
そしてふと思う、なんだ、今回、姫川は狂言回しの役だったのか。
女の警部補をここまで名ばかりの設定にされるのは気に入らないが、
この作者の女性の把握がそうなのなら仕方がないか。
とはいえ、狂言回しとしても、井岡と二人ではキャラが被る。
はっきり言おう、この小説に、姫川はいらない。
----------------
暴言に似合わないケージ写真は、ガラスのお店から拾わせて頂いたもののアレンジです。
http://www.garasunosato.net/onlineshop/glass_top.html
「燃えろ! ハムスター魂っ」
なんて言ってケージを齧ってるハム画像にしようかと思ったのは内緒