ブログ引越し検討中 (仮住まい)

yahooブログからの引越しを検討中です。現在テスト使用中。

文字は巡る III

  
 
                   文字の重さ (an71pm original products)  http://blogs.yahoo.co.jp/an71pm/32463972.html 
                     文字は巡る I  http://blogs.yahoo.co.jp/green_zebra_2008/32508380.html
                     文字は巡る II  http://blogs.yahoo.co.jp/green_zebra_2008/32535991.html
 
                  (I.、II に続けて読んでみたら、後ろの方が気に入らなかったので、改訂しました。
                           この記事の二つ目のコメントまでは、初稿でいただいたものです)
 
 
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    パーキリアがいなくなった
 
  計測室にいるかもしれない と 思って 
  白のファイアに粉を渡しに行く時 見まわしたけど
  やっぱりいなかった
 
  でも だれも パーキリアを探さない  
  なにもいわない
  先輩達も 何人か消えた   
 
  だから そうなんだろう
  たぶん そうなんだろう
  
  だから ミリカも さがさないことにした
 
  
 
  あれは はじめてここにきて まだ 数時間の時だったと ミリカは思いだす
 
  先輩たちは 背表紙を叩くだけで 文字を落としていたのに 
  ミリカの本は 刷毛で撫でても たわしで擦っても 文字が落ちなかった
  擦って 擦って 羊皮紙が毛羽立ってきても 青緑色の文字が落ちなかった
  緑色の文字からは 海の匂いがした

  部屋には誰もいなくなった  
  あたりの飴色が深くなっていたから きっと夕方だ

  先生から 文字の粉を渡しなさい と言われていた計測室の人が
  ミリカの隣に来ていた

             ごめんなさい まだ 字が  採れなくて

  そのひとは ミリカの本を 見下ろして 
  爪と骨だけみたいな指で 羊皮紙に書かれた λの上の部分を カリカリ..... と引っ掻いた 
  青緑色が 少し 浮き上がった
 
             あ ・・・・・・・・・・・
 
  それから 骨だけの指でそれを摘んで ひゅるる.......る. ん と 引き上げた
 
  文字がほどけて 
     蜘蛛の糸よりもっと細い 青緑色の鞭が 
     天井まで   跳ねあがって  しなり
     と 同時に 両側の壁から大きな波が押し寄せて 目の前で砕けた
     部屋は海になった 
 
あわててテーブルにしがみつき 固く目を閉じた
 
      嵐の音 波の音  
 
      千切れた帆がはためく音 支柱の軋み
             波が船底を打つ音 誰かの叫び声    
 
                      助けて 流される  息ができない
 
 
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                             やがて
              嵐は潮の引く音に代わり 
         
  薄く眼をあけると  計測室の人が 文字の 糸を 手繰り集めていた 
  テーブルに 取り残された魚が しばらくパクパクしていたが 
  それも 消えた
 
  部屋は元の部屋に戻った
  計測室の人は 文字を丸めた糸玉を ミリカのボウルに入れてくれて
                 そのまま 何も言わずに部屋を出て行った
                 糸玉からは なんの匂いも しなかった

  白のファイア という人だ
  あんなに上手に文字を抜くのに いつもは 計測室から出てこない
 
                                      どうしてだろう
  でも ミリカは その日のことを 誰にも 話さなかった
 
 
  文字は 時々 波になる  うねりになる
  悪臭を発することもあるし 触れただけで 消える時もある
  だから油断をしてはいけない
 
  本をほどき 湯気にあて 湖の塩を振りかける 
  それから砕いて粉にして カートリッジに詰め 送り出す 
  それが外の世界で どんな文字になるのか  ミリカは考えない
  考えてはいけない と 先輩がいった    だから ミリカは考えない
 
  ボウルに入った文字は 無臭で清潔で サラサラだ
  
 
                   文字・・・・・・  サラサラの……‥・文字
 

 
ここでおしまいです。
 
もともとは、文字の重さ という an71pmさんの夢が、私の夢に飛び込んで来たので
それをお話風にアレンジしたものです。
 
近々、self liner note として、夢を書きとめたオリジナルメモを載せようかと思います。 
実をいえば、改訂前の方が、夢の内容を反映していましたが、トゲがあるので変えました。
                              だから、わたしの夢の方の世界観は、期待しないでください。
 
今回の写真は 前回と同じストラト修道院図書館、 それから ターナーの難破船救助の油絵 にしました。