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音響学をちょっとだけ

ブロ友さんが音の反射や大きさについて書いてらしたので、何となく思い出して。

以前、振動数と音の話をブログに書いたが、
これは発生した振動が、どうやって空間を伝わり、耳に届く(人間の鼓膜を揺らして音となる)か、と言う話だ。
                       何かを説明する時には、息子(小学生)に説明するつもりで文章を作るのだが、  
                       いろんなところにリンクも貼っているので、気になったら飛んでみてください。



音響学と言う講義を受けたことがある。 あまりポピュラーな学問ではない。

小さな音源を手に持ってかざす。
スチールの机に乗せる、木製の机に乗せる。
壁が背になるような場所に動かす。
部屋の角へ動かす。

    音源から出ている音の大きさは同じなのに、音源の場所を変えると、聞こえる音の大きさが変わる。
    ああ、耳に届く音は、空気振動で、その空気振動は、壁で反射されるんだ、と、直感的にわかる。

騒音の出にくい橋の設計や風防の設計、
どこからともなく聞こえてくる音源の調査などもやってらした教授だったと思う。
それらをとても面白おかしく解説してくださって、
(もちろん、その間には物理学としての数式が入るのだけど) 素晴らしく楽しかった。


受講した音響学は、主に気体の中を走る音波の話が中心だったのだが、
以下は自分で研究している固体物性の話題を絡めて説明する。 (だから、もちろん文責はね)


イメージ 1
オルゴールも、共鳴を工夫して、良い音を出してるよね。

接触しているものの振動>

オルゴールを木製の机に乗せると、音が響きよく、大きくなるのは、机が共鳴(力学的共鳴)するためだ。
自宅に36弁ながらリュージュのオルゴールがあるが、
そいつをテーブルに直置きすると、テーブルに振動が伝わり、部屋全体に音が拡がる。

音源であるオルゴールが、もっと細かく言うと、オルゴールの中の弁の振動が、
弁が固定されたオルゴールケースに伝わり、
オルゴールケースの振動が、そのまま机に伝わった状態だ。
机までが巨大オルゴールの一部になったと思ってもいい。

また、ものの振動と言うのは、固いものの方が遠くまで伝わる。
米国映画などで、列車が来るかどうか調べるのに、金属製の線路に耳をつけるのがそれだ。

ブログなので直観的な書き方をしてみると、
固いものは、その物質を作っている原子たちが、隣と強くくっついて、離れようとしないから固いのであって、
ある原子が振動したら、隣もそれと同じ動きをしようとする。
その隣、その隣、と、同じ動きが伝えられていくから、早く、また長距離まで振動が届く。
柔らかいものは、隣の原子が動いても、すぐ隣の原子は少し遅れて動いたり、少し小さく動いたりする。
だから振動が伝わりにくいし、いつの間にか立ち消えてしまう。


イメージ 2

端っこにをつけた豆っぽいものを押してみることを考えると、レベルにもわかりやすいかも。
豆がスライムばりに柔らかければ、押しても真ん中に指がのめりこむだけで、の場所は動かない。
でも、それが固めのグミだったら、全体がつぶれての場所も沈む。

振動とは何度も指でつんつんされて動かされ続けているような状況だから、
その影響が印まで出ている場合には、振動が伝わってきている、
影響が出ない場合には振動が伝わってきていない、つまり、音が届かない、と言う状況だ。

もちろん、軽石やスポンジのように、固体の中に空気や別の材質が混ざりこめば、音は伝わりにくくなる。
建造物の非破壊検査の一つで、振動伝搬測定、というのがあるのだが、
それは途中に亀裂が入っていたら、伝わってくる音速が遅れたり乱れたりする、という論理によるものだ。


だから、机の上に乗せるのでも、卓上にテーブルクロスが敷いてあったらうまく共鳴しないし、
スチール机と木製の机では音が違う。
もちろん、音の質が変わるのは言うまでもない。楽器メーカーが木材を厳選するのもわかるだろう。
それから、楽器の中の亀裂に耳で気付く音楽家もいるという。


<空気の振動と反射>
さて、固体から離れて、今度は空気中に伝わる振動だが、音が伝わる速度を音速という。
気体の中の振動の伝わる速度は、気体の種類(分子の重さ)と、温度で決まる。
温度が高い方が速く、気体分子が軽い方が速い。
普通の室内の伝搬の場合は、湿度(←水分子という不純物の混入)なども影響する。


   空気なので、酸素と窒素だけ考えておけばいいが、参考までにいうと、
   分子は一つの分子が動いたからと言って、固体中ほど隣にその振動を伝えやすいものではない。
    (固体中では原子と言ったが、O, N など2つの原子で分子を作って動くので、分子という言葉を使う)
   一つ一つがバラバラに動けるものが気体や液体なのだから。
   その代り、分子の重さや軽さで、動きやすさが変わったりする。
   動きやすさが変わって振動数も変わり、軽くて動きやすいヘリウムは、酸素や窒素より振動しやすく、
   振動数が高くなり、結果ヘリウムヴォイスみたいに、同じ人間の声(同じ振動数の音源)でも高音になる。


次は反射と方向性を考えよう。
この言い方も正確ではないのだが、音源から出る音をボリューム(体積)としてとらえ、総量を考えた時、それが
①360度の全空間に広がる場合と、
②片側は床や壁にさえぎられて反射し、結果的に半空間に拡がる場合、
③部屋の角や床の隅で、4分の1の空間、8分の1の空間に拡がって行く場合には、届く距離が変わるだろう。
  扇型の中心角の角度を小さくしたときに、同じ面積にしたかったら、半径を伸ばすしかないのだ。
④まわり中抑えられて、音が一方向にしか進めなかったら、それはメガホン状態だ。
                       (もちろん反射率の話もあるし、壁の内部に伝わって音量が減る分もあるし、
                       それから実際には3次元だけど、小学生でもわかるように、と言うことで2次元で説明してます)

イメージ 5

当然だけど、メガホンは聞く人に向ける。 ぐるたみんさんだってそうしてる。イメージ 4
グランドピアノはオーケストラの向かって左手に、
右を向いて(演奏者が指揮者を見る向きに)置いてあって、
斜めにあけた蓋に反射した音が、客席に向かうようになっている。

入射角と反射角を考えて、壁を使って反射させる場合にも、
反射が聞き手に向かうようにすると、大きな音が聞こえるわけだ。


さて、だから音を大きくするためには、壁で囲って反射しまくらせればいいのだが、
耳という 「定点で音を聞く」、と考えると、そんなに簡単ではない。

音が空気中を伝わるには、時間がかかる。
えらく遅れて、さっきの音が反射して来たりしたら、聞き取りにくくてしょうがない。
街中の災害放送が、ビルに反響しちゃって何を言ってるんだか聞こえない、
なんていうのは、遠方の反射の弊害だ。

だから、
①タイムラグのない、音源のすぐ近くで反射してくれるのは歓迎だし、
②複数のスピーカーから同時に出てきた音に包まれるのも良い感じだが、
③遠くの壁に反射して、音が遅れてやってくるのはいただけないから、遠方では反射しないでほしい。


イメージ 3

音の反射に関しては光と同じに考えて、また直感で考えても大体当たるんじゃないかと思う。
固くてつるつるしてればよく反射して、凸凹していたら反射しにくい、柔らかかったら吸収しそうだ。
多分、こんなことを考えて、音楽ホールの内装が反射防止の布っぽい壁になっていたり、
あえて木の椅子にしていたりするのだろうな。

いや、この辺の話は私の専門ではなくて、
バイロイト音楽祭に使うというホールで、ゴタクを聞いてきただけなんだけどもね。
ちなみにそこは、床を固くしたくないのでいまだに木製で、だから踵の小さいハイヒールは禁止なんだそうだ。

まあ、そんな感じで、屋外でちっちゃな音源を使って踊ろうと思ったら、
音源を力学振動を伝えられる一回り大きなものにきちんと固定して、
鏡の前で踊っているなら、鏡前の床に置くのが一番いいんじゃないかな、と。

そんなのを知っていると、ちょっとだけ便利だ

イメージ 6
ちなみに…… この記事を書くきっかけになったブログには、
演奏者の背後に、聴衆がいる場合の音の拡げ方が書かれていた。
先ほど書いたように、通常のピアノの開け方は、右図の形である。
演奏者の右手に聴衆を置く形だ。

では、聴衆が背後の場合はどうするか?

おお~ 背後に向かって音を反射することもできるようだ。 (件の記事にこれが出ていて感動したのだ)

イメージ 7

ピアノの手前の天板を少し開けて、反射板にしている。
原理がわかっていれば、こういう使い方もできるのだな。 さすが、プロは違うもんである。




大学院で受講した音響学は、それまで私が聞いた中で、一番面白い講義だった、と、思う。

山下充康という教授の講義で、集中講義だったかもしれない。 
受講学生数が非常に多かったように思う。 
学生数から考えて、お隣のW大からもやってきていたのかもしれない。
   (隣接する私立大学同士で、受講可能で単位交換できる講義が複数あった)
2度受けたような気がする。 面白かったから二度受講したのか、単位を落したのか謎だ。

教授は 「戦闘機の騒音を測りに、○○基地に行から、誰か手伝ってくれ」と、バイトを募集してらして、
当時、戦闘機が大好きだった私は、真っ先に参加しようと思ったのに、
「男子学生のみね」と言われて、打ちひしがれたのを、強烈に覚えている。


あの講義、まだあるのかなあ……