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読書録 『漂流者たち』 ――犬を連れた探偵――

祥伝社文庫 柴田哲孝 『漂流者たち』 今朝の通勤電車の中で読了。

   大地震発生直後、いわき市に打ち上げられた無数の車。
   その一台の持ち主は、同僚の議員秘書を殺害し、6000万円の現金を手に逃走していた。
   男は津波に呑まれて死んだのか。
   金はどこへ?捜索を依頼された探偵・神山健介は、愛犬・カイを連れ、被災地を北上し始める―。
   やがて浮上する、権力の影とは!?
                   (Bookデータベースより)


探偵・神山健介のシリーズらしいが、私はこのシリーズを読むのは初めてだ。
犬を連れた探偵、ということで嫌でも 『RYU』の有賀とジャック(犬)を思い浮かぶ。

柴田哲孝はジャーナリストならではの視点で、東日本大震災で被災した三陸を描き出していく。
震災に関しては、人を描く部分は少なく、風景を、むしろ淡々と書いているのだが、
実際に被災した人なら、これを読むのは苦しいんじゃないかというリアリティがある。
              (人間や避難所の様子をクドクド書かなかったのは、さすがこの人の筆力だと思う)

ジャーナリストとはいえ、これは社会派のルポではなく小説なので、
原発派にしっかり視点を据え、原発推進派の中に悪人&真犯人を置いている。
そのおかげで小説としての落ち着きを作るのに成功しているとはいえ、
もうちょっと社会派寄りにして、原発の扱いの難しさとか、やるせなさまで描いて欲しかった。

もっとも、この作品が書かれたのが2013年で、
書いている最中はもっと震災に近かったことを考えると、
この内容とオチは、無難なところだったのかなあ、とも思う。


というわけで、神山健介シリーズのほかの作品を探しにいくとしよう。