ハムスターの匂い

つまみ簪を作るのに、縮緬や和の布を引っ張り出した。
正絹の古布は、ドイツ人の友人に依頼されて集めたが、一部彼の研究所に送ってしまった。
高分子研究者の彼は、テキスタイルの町の研究所に転職し、多忙な日々を過ごしている。

いや、つまみ簪だ。

以前、吊るし雛を作ろうとして、途中で吊るしハムスターに変更した。
頭に紐をつけるのがいやで、小さなバッグに詰め込むタイプにした。

2014年のお正月時点でここまで。そのまま封印。

そのとき、ハムスターの抱える布製のかぼちゃや布製のキャベツの中に、ヒマワリの種を一つずつ入れた。
完成しなかったので、縮緬のケースに一緒に入れたままになっていた。

つまみ簪を作るために、縮緬の箱を開けた。
ほのかに、ハムスターの香りがする。少し香ばしくて、暖かい。
きっと布と、中に詰めた綿と、ヒマワリの種の匂いなのだろうな。

ついでに行った２年越しの追加工作は、鈴をつけただけ。

そういうわけで、娘の成人式の髪飾りからは、
きっとほのかにハムスターの香りがするんだと思う。