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美しい科学、論理的な工芸

先日、仕事中にちょっと説明が必要だったので、紅型(びんがた)について調べてみた。

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リソグラフィとか、ステンシルマスクとか、自然科学の言葉で美術用語、工芸用語と共通なものは多くある。
半導体バイス製造過程に必須なリソグラフィ技術は、美術用語で言うとリトグラフである。

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ステンシルも、いろんな所で体験講座などのあるステンシルと同じだ。
真ん中に浮かせた型紙を、絵の具が通るようにメッシュで固定する方法もあるんだね。

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江戸小紋も細かな型紙を利用して繰り返し模様を作っているので、ステンシルということができる。
江戸東京博物館に、江戸小紋の型紙が展示されていたことがあって、とても感動したのを覚えている。



さて、リトグラフや、ろうけつ染め、紅型になると、もうひと手間かかる。
絵の具を通さないマスクとして、ロウや糊を紙面・布面に置き、その上から色を置き、
最後にロウや糊をはずす。これが絵の具の枠になることもあるし、ロウや糊ごと塗料が外れる場合もある。
                           どうでもいいが、科学用語としてのリソグラフィのとき、この過程をリフトオフ、という。

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ろうけつ染めの工程を見てみよう。筆で染めるのではなく、藍色の液に漬けるのだが、
染めの途中でロウに罅が入ると、そこにも染め液が染みて、白部分に美しく細かなラインが入る。

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さて、もう一度、琉球紅型の模様を見てみる。

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白い線の周りはもちろん、色が染まった部分の淵すべてが、とてもくっきりしていないだろうか?
実験室でもこれと同じことが起きる。マスクのエッジに当たる部分の反応が強くなるのだ。

   「それさ、ステンシルとか紅型の端っこって、色が濃くならん?」
            (学生さん) 「ビンガタイメージ 8 ビールとか―――ですか?」
   。o O *1 イメージ 9
        


ゴミでもホコリでもそうかもしれないが、
液体は角に集まりやすいし、細い管の中に入り込もうとする。
メスシリンダーの端っこの液面が高くなるのを、
どっちを読むべきか、などと、小学校で習わなかったろうか?

表面張力とか、凝集現象とか、いうものだ。
同じことが、ステンシルやろうけつ染めでもおきている。
端で盛り上がった液体は、その状態で乾き、盛り上がり部分の色が濃くなる。

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だから、色の端部分が濃くなって、くっきり見えるのだ。  (赤縁ピンク花も青い花も、端の端が線状に濃い)
実験室ではそれが薬品になったり反応性溶液になったり、ガスになったりするが、要は同じことだ。


個人的に、この手の模様や色づけが好きなようだ。
好き嫌いの分かれる版画だが、アルフォンス=ミュシャの作品を眺めるのも好きだ。
彼の作品もくっきりライン。

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これが好きなのは、塗り絵文化かなあ、とも思うし、
学生時代にやっていたアニメのセル画描きだって、膨大な色染だった、とも思いだす。

でも、現象がわかっていない学生に説明するときには、
物理学云々よりも、絵の描き方や、工芸作品のほうが、直感的にわかってくれるのだよな。


   *説明図を作っていたとき、琉球紅型のページに見入ってしまい、ブックマークを入れました*

*1:紅型、知らんのか…… 説明、めんどくせ~~