寛ぎを得るために考えること---異国の水屋---
考え方や生き方・姿勢に共通点があって、「心の友」的な人が居る。
一般的な意味の「友」と違うのは、趣味も専門も住む場所も違うこと、一緒に居ることはほとんどないこと、
常に気が合うわけでもなさそうだし、社会環境の中で同じ側に居るとは限らないこと、
たとえば、議会の席やディベートで、反対側に居そうなイメージがある――― からだ。
でも、根の部分の何かが一致しているのは、確かなんだと思う。
異国に居る彼女に送るものを考えている。
こういうことは嫌いなんだろうな、怒るだろうな、というのは知っていても、
どんな食べ物が好きなのか知らないし、
どんなものがかの地で手に入りやすいのかわからない。
大きなものを送りつけると、帰国時に持ち帰るのに迷惑になりそうだ。
何にしようかな。
そういえば、異国で日本茶や抹茶を飲むのはなかなかに難しい。
日本茶好きのドイツ人が居るので、たまにお茶を贈っていたが、
ドイツで淹れると日本で飲んだときほど旨くないのだ、という。
まあ、水が違う、ガス含有量が違う、抽出温度で味が変わる、と、旨い日本茶を飲むのはなかなかに難しい。
日本人は当たり前にお茶の淹れ方を知っていると思っていると、それも間違いだ。
異国では同じ淹れ方をしたら同じ味にはならない。
北欧の硬水では、すべての茶が渋くなる。
抹茶にいたっては、もっと味が変わる。
海外に和菓子(日持ちする干菓子)を贈るのは簡単だが、それにあう日本茶を準備するのが難しい。
不味い日本茶を飲むくらいなら、珈琲のほうが合うのだ。
というわけで、なんちゃって水屋(抹茶を飲む茶室の裏方)情報をまとめておこうと思う。
オタクの化学になってしまうのは習性だから、見逃しておいてくれ。
■水を準備する■
水道水には、消毒のために微量の塩素が入っているので、茶が濁った味になる。
市販の飲料水も、硬水だの軟水だの色々で、カルシウム、マグネシウム等の金属イオン含有量が違う。
それらの含有物を除去するためには、蒸留すればいいのだが、
蒸留中の結露のさせ方で、今度は水の中の酸素や窒素の含有量が変わってくる。
イオン含有量。
水1ℓの中に金属イオンが 0~120 mg 含まれていれば『軟水』、120mg 以上を『硬水』という。
英語で言うなら、Soft water, Hard water そのまんまである。
上で金属イオンと書いているが、それらはマグネシウム炭化物、カルシウム酸化物など、
鉱物(セラミック)由来のことも多く、これらを鉱物が含まれている、と言い換えることも出来る。
ミネラルウォーターと書かれたものを購入すれば、硬水であることが多い。
エビアンの硬度は304mg/l の硬水、 http://www.evian.co.jp/water/type/04/
ボルヴィックは予想外に60mg/lくらいで、軟水である。 https://en.wikipedia.org/wiki/Volvic_(mineral_water)
クリスタルガイザーも軟水(ただしアルカリ)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Crystal_Geyser_Water_Company
海外では手に入りにくいだろうけど、いろはすは超軟水だ。(←こういう言い方はない)
北欧の水は硬水が多い。ドイツも硬水。南アメリカも硬水が多かったか。
超硬水は飲料には適さないといわれるが、エスプレッソと肉料理にはいいらしい。
一方、日本はほぼ軟水である。 (沖縄と関東の海辺が硬水だが、もちろん水道水は調整されている)
煎茶や抹茶は茶の苦味の奥の甘みを楽しむものなので、
金属酸化物由来で作られる余計な苦味や渋みは、邪魔者でしかない。
pH。
中性以外の水を使って、茶を点てることは想像しにくいが、
アルカリイオン水などのペットボトルが出ているため、ちょっと言及しておく。
抹茶を点てるならば中性(pH7.0)か、わずかに酸性(pH 6.0~7.0)がいいといわれている。
味は知らないが、アルカリ寄りの水で淹れると、色が黒っぽくなるんだそうだ。
だから、上記の中だったら、ボルヴィックがいいんじゃないかと思う。
ガス含有量。
その昔、東大名誉教授で真空学会重鎮の富永五郎先生が言っていた。彼はグルメで、お抹茶も好きだった。
「茶を淹れるなら、沸騰させるな」 …まあ、これはよく言われることだ。
「高温で長時間キープすると、不味くなるぞ」 …その後、水面からの脱ガスや平衡蒸気圧の話に突進するのだが。
要は、水中には酸素や窒素のガス分子が含まれていて、含有量が高いほど、柔らかい口当たりになる。
15分も沸騰させたお湯で茶を淹れても、うまくないだろう? ガスが出きっちゃってるからだよ、と。
残念ながらガスと茶の味の比較は統計的に処理されておらず、
一方積極的にガスを入れたスパークリングウォーターや、炭酸水で茶を淹れると、これはまた別物になる。
蒸発しない金属イオンが濃くなっていく―――蒸発で量が三分の一になったら、軟水が硬水に化ける。
実験室ならガスを入れるためにバブリングさせるのも可だが、
一般的には沸騰する直前で止めたお湯が、たぶん一番美味しいんだろうと思う。
■抹茶を準備する■
抹茶アイスファンは海外にも居るし、抹茶味に惹かれる外国人は多いようで、海外からも抹茶を購入できる。
が、それが日本人の口に合うかどうかは(日本から輸入したことがないから)わからん。
高温・多湿・光線・移り香に弱いため、プルトップ缶詰で売られており、そのまま異国に持っていくことが出来る。
抹茶を保管する。
さて、開封してからは冷蔵庫に入れておくのだが、いくつか留意点がある。
缶の蓋をしっかりしておいても、においを吸収するので、ジップロックに入れるかタッパーで二重保管する。
これらの説明のために、湿度と飽和蒸気圧の話をすると、
温度が下がると飽和蒸気圧が下がり、空気中に居た同じ量の水蒸気のはずなのに、湿度が高くなり、結露する。
冷蔵庫から出したビンに、水滴がつくのはそのせいである。
抹茶も同じことで、すぐに使う分はいいとしても、冷蔵庫から何度も出し入れしているうちに、湿気を集めてしまう。
だから、対処としては、タッパーやジップロックのまま冷蔵庫から出して、室温になってから開封する、
初めに乾燥した場所で薬包紙やチャック付アクリル袋に小分けしてから、冷蔵庫に入れておく、などがある。
冷蔵庫に戻すときも、ジップロックには空気を極力入れないようにし、
タッパーの中に室温の空気を入れないよう、タッパーの蓋は冷蔵庫に入れてから閉める。
ふるい付の缶などもあるが、そんなことで時間をかけるよりも、手早くやるほうが効果がある、と思う。
■茶道具■
茶碗と茶筅があれば、どうにでもなる。分量を見るのに、茶杓もあったほうがいいか。
茶筅は消耗品だし、茶碗だって、抹茶茶碗でなく碗型であれば普段使いのお茶碗でいい。
逆に、抹茶茶碗を普段別のものに使っていたり、安物ならば帰国時においてきてしまうこともありうる。
個人的に、古袱紗が好きなので、濃茶でも薄茶でもその上に茶碗を乗せていただく。
袱紗はハンカチサイズだから、持ち運ぶにもかさばらないし。
釜? 薬缶でも、ティファールでもいいよ。
■抹茶を点てる■
お茶の先生にぶっ飛ばされそうだ。
これから書くのは、正しい抹茶の点て方ではなく、初心者や久しぶりに茶を点てようとする者が、
最良ではないが、失敗しない方法――である。
新鮮な抹茶を、缶を開けてすぐに使うとか、茶会前に抹茶が玉にならないよう、ふるいにかけて細かくするとか、
茶碗サイズにあっててに馴染んだ100本だての白竹茶筅があるとか、
そういう細かな配慮がめんどくさい、難しい場合の点て方だと思ってくれ。
湯を用意する。湯沸しポットなら設定温度95度か98度。薬缶だったら、底に泡がくっつき始めるあたり。
茶碗にお湯を入れて温め、お湯を捨て乾いた布で拭く。
正しくは乾いた布ではなく、固く絞ったガーゼだが、キッチンペーパーも可。
中途半端に湿気が残っていると、その気化熱で冷めてしまうので、私はきっちり拭く。
茶碗に、茶杓で適量の茶を入れる。
濃茶(2.5~3杯)のつもりでも、お薄(1杯)のつもりでも、以下のプロセス。
ごく少量の湯(大匙1~2杯程度)を入れ、茶筅で抹茶を練る。
本来お薄ではこれをしないが、ふるいにかけていない抹茶なら、
ココアの要領で練ってしまったほうがうまくいく。
温度が下がるとうまく練れないので、茶碗の底に広げないように。(←熱伝導で冷めやすい上に、気化熱も取られる)
茶碗に茶筅を置き、茶筅を洗うように熱めのお湯(90度以上)を入れる。
本来は湯温は70~85℃といわれるが、経験的に熱い湯のほうが次のプロセスでうまく泡だつ。
カシャカシャと茶筅を前後に動かして茶を点てる。
上が広がっている夏茶碗と、丸っこい冬茶碗では、冬茶碗のほうがこぼさずに茶筅を動かせる。
茶碗の底を掃くように直線的に動かすのがコツだというが、あまり意識したことはない。
抹茶が茶碗内で流れるプール風に回ると泡が立ちにくいのは確かだし、また、湯温は高いほうが泡立ちやすい。
泡が立っていない冷めた抹茶は、最も旨くないから、私が高い温度のお湯を使ってしまうのは、
泡だっていない適温点ての抹茶と、ちょいと味は落ちるがふんわり泡だった抹茶の選択ってわけだ。
ものすごく乱暴に言うと、熱いお湯で、湯量少な目、抹茶多目で、
細かな(100本立て)の茶筅でカシャカシャやれば、
テクニックがなくても、それなりに美味しいお茶が点てられる、と思う。
抹茶味に慣れていなくて、薄いほうが良い人には、練るときの抹茶を減らし、より少量の湯にすればいい。
羊羹などの重いお茶菓子と合わせるなら、濃い目のお茶が美味しいだろうし、
落雁なら、薄いお茶がいいと思う。 この辺はルールどおりだ。
異国で茶を点てるのは、その地での生き方の姿勢を決めるものでもある、と、思う。
日本文化の一部を、あえて持ち込む拘りなわけだし
茶席の正座じゃないが、背筋を伸ばす、という生活態度でもあると思う。
一方で、代用品を探すことや、代用品を用いるゆえに、所作やプロセスを変えるとか、
アレンジと工夫を繰り返す作業になることは言うまでもない。
日本に居る茶道の先生は眉を寄せそうな抹茶の点て方になったり、
着物ポリスならぬ抹茶ポリスなら、「それは間違ってますわよ」 と、指摘してきそうなやり方でも、
口に入るものが、自分に満足のいくものであれば、私はそれでいい。
「日本茶が不味いのは、ここの水が硬水だからなのよ、キー!!」 となる大使館婦人よりも、建設的だ。
プロセスが大切なのか、最終的に目的のものを手に入れるのが大切なのか、
それは仕事の仕方にも繋がるものなんじゃないかな。
物事をなしうる、という最終目的に向かう行動をせず、プロセス重視だったり前例重視だったり、
世の中が変わっているのにこれまでやったことがない方法には手を出さなかったり、
そういう会社員や役人は思いのほか多いものだ。
それは仕事に対する身の入れ方とか、真面目不真面目と完全に一致するものではないのだが―――
何処の国に居ても、彼らを動かすノウハウに頭を悩ませるのは、同じことなんではないかと思う。
新しい状況に対処したり、目的のためにプロセスを変えたり、
そう、そのプロセスを変えるための手続きを速やかに行うことが出来たり、
そういう人が、「仕事の出来る人」なんだろうな~
一般的な意味の「友」と違うのは、趣味も専門も住む場所も違うこと、一緒に居ることはほとんどないこと、
常に気が合うわけでもなさそうだし、社会環境の中で同じ側に居るとは限らないこと、
たとえば、議会の席やディベートで、反対側に居そうなイメージがある――― からだ。
でも、根の部分の何かが一致しているのは、確かなんだと思う。
異国に居る彼女に送るものを考えている。
こういうことは嫌いなんだろうな、怒るだろうな、というのは知っていても、
どんな食べ物が好きなのか知らないし、
どんなものがかの地で手に入りやすいのかわからない。
大きなものを送りつけると、帰国時に持ち帰るのに迷惑になりそうだ。
何にしようかな。
そういえば、異国で日本茶や抹茶を飲むのはなかなかに難しい。
日本茶好きのドイツ人が居るので、たまにお茶を贈っていたが、
ドイツで淹れると日本で飲んだときほど旨くないのだ、という。
まあ、水が違う、ガス含有量が違う、抽出温度で味が変わる、と、旨い日本茶を飲むのはなかなかに難しい。
日本人は当たり前にお茶の淹れ方を知っていると思っていると、それも間違いだ。
異国では同じ淹れ方をしたら同じ味にはならない。
北欧の硬水では、すべての茶が渋くなる。
抹茶にいたっては、もっと味が変わる。
海外に和菓子(日持ちする干菓子)を贈るのは簡単だが、それにあう日本茶を準備するのが難しい。
不味い日本茶を飲むくらいなら、珈琲のほうが合うのだ。
というわけで、なんちゃって水屋(抹茶を飲む茶室の裏方)情報をまとめておこうと思う。
オタクの化学になってしまうのは習性だから、見逃しておいてくれ。
■水を準備する■
水道水には、消毒のために微量の塩素が入っているので、茶が濁った味になる。
市販の飲料水も、硬水だの軟水だの色々で、カルシウム、マグネシウム等の金属イオン含有量が違う。
それらの含有物を除去するためには、蒸留すればいいのだが、
蒸留中の結露のさせ方で、今度は水の中の酸素や窒素の含有量が変わってくる。
イオン含有量。
水1ℓの中に金属イオンが 0~120 mg 含まれていれば『軟水』、120mg 以上を『硬水』という。
英語で言うなら、Soft water, Hard water そのまんまである。
上で金属イオンと書いているが、それらはマグネシウム炭化物、カルシウム酸化物など、
鉱物(セラミック)由来のことも多く、これらを鉱物が含まれている、と言い換えることも出来る。
ミネラルウォーターと書かれたものを購入すれば、硬水であることが多い。
エビアンの硬度は304mg/l の硬水、 http://www.evian.co.jp/water/type/04/
ボルヴィックは予想外に60mg/lくらいで、軟水である。 https://en.wikipedia.org/wiki/Volvic_(mineral_water)
クリスタルガイザーも軟水(ただしアルカリ)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Crystal_Geyser_Water_Company
海外では手に入りにくいだろうけど、いろはすは超軟水だ。(←こういう言い方はない)
北欧の水は硬水が多い。ドイツも硬水。南アメリカも硬水が多かったか。
超硬水は飲料には適さないといわれるが、エスプレッソと肉料理にはいいらしい。
一方、日本はほぼ軟水である。 (沖縄と関東の海辺が硬水だが、もちろん水道水は調整されている)
煎茶や抹茶は茶の苦味の奥の甘みを楽しむものなので、
金属酸化物由来で作られる余計な苦味や渋みは、邪魔者でしかない。
pH。
中性以外の水を使って、茶を点てることは想像しにくいが、
アルカリイオン水などのペットボトルが出ているため、ちょっと言及しておく。
抹茶を点てるならば中性(pH7.0)か、わずかに酸性(pH 6.0~7.0)がいいといわれている。
味は知らないが、アルカリ寄りの水で淹れると、色が黒っぽくなるんだそうだ。
だから、上記の中だったら、ボルヴィックがいいんじゃないかと思う。
ガス含有量。
その昔、東大名誉教授で真空学会重鎮の富永五郎先生が言っていた。彼はグルメで、お抹茶も好きだった。
「茶を淹れるなら、沸騰させるな」 …まあ、これはよく言われることだ。
「高温で長時間キープすると、不味くなるぞ」 …その後、水面からの脱ガスや平衡蒸気圧の話に突進するのだが。
要は、水中には酸素や窒素のガス分子が含まれていて、含有量が高いほど、柔らかい口当たりになる。
15分も沸騰させたお湯で茶を淹れても、うまくないだろう? ガスが出きっちゃってるからだよ、と。
残念ながらガスと茶の味の比較は統計的に処理されておらず、
一方積極的にガスを入れたスパークリングウォーターや、炭酸水で茶を淹れると、これはまた別物になる。
(別物と考えると、これはこれで美味しいが)
なお、沸騰しているうちに水が蒸発していき、ちょうど色水が煮詰まって濃くなっていくように、蒸発しない金属イオンが濃くなっていく―――蒸発で量が三分の一になったら、軟水が硬水に化ける。
実験室ならガスを入れるためにバブリングさせるのも可だが、
一般的には沸騰する直前で止めたお湯が、たぶん一番美味しいんだろうと思う。
■抹茶を準備する■
抹茶アイスファンは海外にも居るし、抹茶味に惹かれる外国人は多いようで、海外からも抹茶を購入できる。
が、それが日本人の口に合うかどうかは(日本から輸入したことがないから)わからん。
高温・多湿・光線・移り香に弱いため、プルトップ缶詰で売られており、そのまま異国に持っていくことが出来る。
抹茶を保管する。
さて、開封してからは冷蔵庫に入れておくのだが、いくつか留意点がある。
缶の蓋をしっかりしておいても、においを吸収するので、ジップロックに入れるかタッパーで二重保管する。
これらの説明のために、湿度と飽和蒸気圧の話をすると、
温度が下がると飽和蒸気圧が下がり、空気中に居た同じ量の水蒸気のはずなのに、湿度が高くなり、結露する。
冷蔵庫から出したビンに、水滴がつくのはそのせいである。
抹茶も同じことで、すぐに使う分はいいとしても、冷蔵庫から何度も出し入れしているうちに、湿気を集めてしまう。
だから、対処としては、タッパーやジップロックのまま冷蔵庫から出して、室温になってから開封する、
初めに乾燥した場所で薬包紙やチャック付アクリル袋に小分けしてから、冷蔵庫に入れておく、などがある。
冷蔵庫に戻すときも、ジップロックには空気を極力入れないようにし、
タッパーの中に室温の空気を入れないよう、タッパーの蓋は冷蔵庫に入れてから閉める。
ふるい付の缶などもあるが、そんなことで時間をかけるよりも、手早くやるほうが効果がある、と思う。
■茶道具■
茶碗と茶筅があれば、どうにでもなる。分量を見るのに、茶杓もあったほうがいいか。
茶筅は消耗品だし、茶碗だって、抹茶茶碗でなく碗型であれば普段使いのお茶碗でいい。
逆に、抹茶茶碗を普段別のものに使っていたり、安物ならば帰国時においてきてしまうこともありうる。
個人的に、古袱紗が好きなので、濃茶でも薄茶でもその上に茶碗を乗せていただく。
袱紗はハンカチサイズだから、持ち運ぶにもかさばらないし。
釜? 薬缶でも、ティファールでもいいよ。
■抹茶を点てる■
お茶の先生にぶっ飛ばされそうだ。
これから書くのは、正しい抹茶の点て方ではなく、初心者や久しぶりに茶を点てようとする者が、
最良ではないが、失敗しない方法――である。
新鮮な抹茶を、缶を開けてすぐに使うとか、茶会前に抹茶が玉にならないよう、ふるいにかけて細かくするとか、
茶碗サイズにあっててに馴染んだ100本だての白竹茶筅があるとか、
そういう細かな配慮が
湯を用意する。湯沸しポットなら設定温度95度か98度。薬缶だったら、底に泡がくっつき始めるあたり。
茶碗にお湯を入れて温め、お湯を捨て乾いた布で拭く。
正しくは乾いた布ではなく、固く絞ったガーゼだが、キッチンペーパーも可。
中途半端に湿気が残っていると、その気化熱で冷めてしまうので、私はきっちり拭く。
茶碗に、茶杓で適量の茶を入れる。
濃茶(2.5~3杯)のつもりでも、お薄(1杯)のつもりでも、以下のプロセス。
ごく少量の湯(大匙1~2杯程度)を入れ、茶筅で抹茶を練る。
本来お薄ではこれをしないが、ふるいにかけていない抹茶なら、
ココアの要領で練ってしまったほうがうまくいく。
温度が下がるとうまく練れないので、茶碗の底に広げないように。(←熱伝導で冷めやすい上に、気化熱も取られる)
茶碗に茶筅を置き、茶筅を洗うように熱めのお湯(90度以上)を入れる。
本来は湯温は70~85℃といわれるが、経験的に熱い湯のほうが次のプロセスでうまく泡だつ。
カシャカシャと茶筅を前後に動かして茶を点てる。
上が広がっている夏茶碗と、丸っこい冬茶碗では、冬茶碗のほうがこぼさずに茶筅を動かせる。
茶碗の底を掃くように直線的に動かすのがコツだというが、あまり意識したことはない。
抹茶が茶碗内で流れるプール風に回ると泡が立ちにくいのは確かだし、また、湯温は高いほうが泡立ちやすい。
泡が立っていない冷めた抹茶は、最も旨くないから、私が高い温度のお湯を使ってしまうのは、
泡だっていない適温点ての抹茶と、ちょいと味は落ちるがふんわり泡だった抹茶の選択ってわけだ。
ものすごく乱暴に言うと、熱いお湯で、湯量少な目、抹茶多目で、
細かな(100本立て)の茶筅でカシャカシャやれば、
テクニックがなくても、それなりに美味しいお茶が点てられる、と思う。
抹茶味に慣れていなくて、薄いほうが良い人には、練るときの抹茶を減らし、より少量の湯にすればいい。
羊羹などの重いお茶菓子と合わせるなら、濃い目のお茶が美味しいだろうし、
落雁なら、薄いお茶がいいと思う。 この辺はルールどおりだ。
異国で茶を点てるのは、その地での生き方の姿勢を決めるものでもある、と、思う。
日本文化の一部を、あえて持ち込む拘りなわけだし
茶席の正座じゃないが、背筋を伸ばす、という生活態度でもあると思う。
一方で、代用品を探すことや、代用品を用いるゆえに、所作やプロセスを変えるとか、
アレンジと工夫を繰り返す作業になることは言うまでもない。
日本に居る茶道の先生は眉を寄せそうな抹茶の点て方になったり、
着物ポリスならぬ抹茶ポリスなら、「それは間違ってますわよ」 と、指摘してきそうなやり方でも、
口に入るものが、自分に満足のいくものであれば、私はそれでいい。
「日本茶が不味いのは、ここの水が硬水だからなのよ、キー!!」 となる大使館婦人よりも、建設的だ。
プロセスが大切なのか、最終的に目的のものを手に入れるのが大切なのか、
それは仕事の仕方にも繋がるものなんじゃないかな。
物事をなしうる、という最終目的に向かう行動をせず、プロセス重視だったり前例重視だったり、
世の中が変わっているのにこれまでやったことがない方法には手を出さなかったり、
そういう会社員や役人は思いのほか多いものだ。
それは仕事に対する身の入れ方とか、真面目不真面目と完全に一致するものではないのだが―――
何処の国に居ても、彼らを動かすノウハウに頭を悩ませるのは、同じことなんではないかと思う。
新しい状況に対処したり、目的のためにプロセスを変えたり、
そう、そのプロセスを変えるための手続きを速やかに行うことが出来たり、
そういう人が、「仕事の出来る人」なんだろうな~