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読書録『生存者ゼロ』

宝島社 安生正『生存者ゼロ』読了。

京都の友人に貰ったまま、しばらく読めずに積んでいた小説だ。
バイオパニック物。 でも、たぶんホラーではない。
特徴としては、隕石物SFレベルに大量に人が死ぬところか。

全く何の予備知識もないまま読んだのだが、正体の分からない物に向かう既視感は、
どことはなく、『天使の囀り』に似ている―――と、思う。
そして、読了後に思ったのは、私は冒頭からネタバレまっしぐらの読み方をしていたのか、と言うことだ。
(確かに面白かったんだけど)読み進んでいてどんでん返しはないし、
わざと科学者が真相に近づかないようにしているようにさえ見えてしまうし。

その上、富樫(←主人公2号)以外のキャラクターがピンとこない、
廻田(←主人公1号)を含めて自衛隊員が描き分けきれていなくて混乱する、
黙示録だの神だの、どうしてあんなに何行も使って引っ張り出すのか、意味不明。

ちょこっと出てくるだけなら宗教はSF小説のエッセンスになって良いと思うし、
確かに、富樫を背負って階段を登る廻田とゴルゴダの丘のキリストは、ダブルイメージなんだけども
いくらなんでも、本筋と融合しないままの宗教話が多すぎる。

と、悪い点ばかり列挙できてしまう。
それでも全体としては、ジェットコースター的に読み進めるんだけども。

前半と後半がガラッと変わるのも、『天使の囀り』と同じだ。
天使の囀りは(私の感想では)前半が面白くて、後半に失速するが、
こちらは、前半の微妙な矛盾(実在の研究所で実在の地名で住所が違うなど)や
サイエンスとしての突っ込みどころでいまいち乗り切れないものの、
後半のB級ホラーみたいになってからが(何も考えない小説として)面白い。


緻密なホラー小説やSFを期待すると駄目だが、軽いパニック物を読むつもりならお勧めである。
褒めてるんだかけなしてるんだか自分でも分からないが、

午後ロー的な小説。


以下、ゴタク。
私は名探偵のそばに助手や一般人を配して、事件や謎解きの質問をさせるのはいいと思うのだが、
名探偵を目立たせるために、あえて「普通そのくらい分かるだろ」レベルの知識すらない
お馬鹿さんばかりを配し、名探偵のごく普通の推理を、「名推理」「天才」と驚きまくるのとか、
政治家や企業代表が、ステロタイプに嫌な奴と愚かな奴ばかりで、
国や人民を思う主人公たちを苦境に立たせるのは、リアリティがないと感じる。

大臣に、菅直入5人と卜ランプ3人(←地味に伏字なんですよ、これ――みたいな政権は、
パンデミックが起きる前に崩壊していると思うぞ?

ま、それはそれで、小説の設定としては許すとしても。

もうひとつ、致命的な突っ込みどころ。(もろにネタバレなので、読む人は反転して読んでください)
森の中で蜂に刺されて亡くなる人はいるし、蜂の集団に襲われる話もあるのだけど、
断末魔でのた打ち回るときに人間は沢山の蜂をつぶす。
だから、人間の遺体の周りには、蜂の死骸が転がっている。
まして、体内に入り込むシロアリが、一匹も(アリの手足も)皮下に残ってないわけねーだろ。
ちゃんとした医者が解剖してんだろ。
水泡や糜爛と虫に齧られたのを区別できないなんて……そんな。


ないわ~ と、思った。 
ああ、でも、SFってわけじゃないんだよな。仕方ないか。

ただ、それでも面白かったです。
ほら、私は午後ロー好きだし。


明日から九州です。