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読書録 『模倣犯』

なんだか久々です。
まずは本編に関係ない画像...........自宅でのアイスクリーム♪

イメージ 1

トッピングは、シドニーではhundred&thousandって名前で、すごくメジャーだったのだが、
日本の店で買えるようになったのは、10年くらい前からかな。
            アイスクリーム店ではもっと前から見かけたけど。


さて、宮部みゆき模倣犯』読了。

全5巻。読み始めたのはひと月くらい前で、1,2,3巻あたりまでは読む方にも勢いがあったのだが、
4巻あたりで飽きてきて、5巻に入ったのはドイツ出張の前。
飛行機の中で読めばいいや、と思いつつ、その気にもならず、1ページも読まずに閉じた本を持って帰国。
そうは言いながら持ち歩く状態のまま昨日に到り、昨日と今日の通勤時間をかけて、やっと読み終えた。

5巻全部読み切らせるのだから、悪くはないのかもしれないが........


う~ん (^^;

必ず読ませてくれる宮部みゆきとしては、な~ 

他の作品がノンストップで読ませるだけのテンションがあるのに比べると、これはイマイチな気がする。

そもそも、5巻も必要な内容かね?

ネタとしては悪くない。
あらすじはちょいとググるとどこからでも出るが
   (未読で、かつ、これから読もうかという人はネタばれするので注意ね)


ウィキペディアの、この概要の書き方が読了感に一番しっくりきました。

感想で真っ先に言えるのは、イメージ 2
  
   犯人の最後(逮捕のきっかけ)が実にあっけない。
  
『ボーンコレクター』の頭脳明晰&ミステリアスな犯人が、
ラストシーンで寝たきり病人に伸された時と同じ脱力感を感じる。
冷静で計算だかかった網川(主犯)が、
あんなとこで激昂して尻尾を出すかね?
それまで、どれだけ彼は冷静だった?
  
布石が全くなかったとは言わないが、終盤までに彼の冷静さが壊れて行ったというなら、
もう少しそれを書き込んでくれないと、
  
           なんだこれは? な状態になる。
  
TVスタッフや一般聴衆が急に彼に対して懐疑派・反対派に回るのも、ご都合主義的な印象を持ってしまう。
そもそも、網川は頭が良くずるがしこいことになっているのだが、説得力が足りない。
島田荘司御手洗潔探偵に石岡君が毎度感心して見せているだけで、
       読者モードでは「それほどすごいかなあ」と思ってしまうのと同じように、
網川のすごさは作品中の他の人物には十分でも読者には説得力不足なのだ。
  
網川の家庭の事情が複雑であることが彼のトラウマとしていることも、この小説には不要だ。
トラウマは免罪符でないし、むしろ、ありきたりな原因をつくっておくことで
性格や犯罪の特殊性が、一気に削がれてしまっている。
栗橋ヒロミも網川浩一も、両方とも幼少期のトラウマが原因だなんて、手抜きじゃないのか? 
こういうタイプの犯人には、出生時のゴタゴタとか、幼少期の家庭の事情、とかを
歪みの原因にしてほしくなかったな~
  
ちょっと解釈を社会派みたいに大げさに拡大して考えてみると.....
週刊誌やワイドショーなんかで特にそういう傾向が見え隠れするのだが、日本人の常として、
  「異常なことをするのは、異常な環境にいたり、異常な育ち方をした人間だ。
   だから、自分はそういう羽目にならないに違いない」
という、安心感が欲しいあまり、異常殺人などの派手な犯罪をした人間の過去に、
異常性を探し出そうと躍起になる傾向がある…………なんてことにつながってくる気がする。
アニメオタク然り、暴力映画然り、親の不仲や離婚、祖父母の死や、子供のころに書いた作文やら。
まあ、何らかの原因を探せば、ノンフィクション的にもフィクション的にも気が済むのかもしれないが、
この小説も、そういう社会風潮をトレースしているように思えてならない。
テクニカルなことを言えば、彼が主格の章を作ったのも、敗因なのではと思うのだが………

     つくづく、宮部氏は悪人を書けないのだな、と思う。

「天使の囀り」の細菌(もっともこれは人間じゃないが)や、
「ダーティ・ホワイト・ボーイズ」のラマー=パイのクラスの悪人を描けとはいえない。
しかし....もう少しどうにかならなかったものだろうか?
ルックスが良くて、金持ちで、悪人なのにあそこまで魅力がないというのは、いかがなものか?

     真保裕一に「無気力な人間」や「根本的な馬鹿」が書けないのと共通かもしれない。

しかしその一方で、悪人のふがいなさに比較して有馬義男や真一の、どれだけ鮮やかなことか。
老人と、子供が常に純粋で強くて正しいとは思わないが、
宮部氏の中には、そうあって欲しいとか、そうに違いないという意識があるのかもしれない。
真一と有馬が組んで、なぞ解きをしていく部分、真一の控えめな聡明さと、有馬の純朴な抜け目のなさは、
どちらかといえば淡々とした小説の中で群を抜いて輝いている。イメージ 3
  
この小説で最も魅力的なキャラクターは、
文句なしに有馬義男だ。
 その次は、個人的には建築家が好きです (^^)
  
なお、真一は凶悪犯に家族を惨殺された生き残りの高校生で、犯人の娘である少女も出てくるのだが
そのあたりはあってもなくても良かった気がする。 
そうすると、これだけの長さは必要なくなっちゃうのかな。
でもまあ、宮部みゆきの作品だから、もっと面白いはずだと思うだけで、
一般的にはかなり楽しく読んだ部類だと思う。
そうそう、模倣犯というタイトルは、全5巻中の2巻あたりで気がついた。  
気付いた理由は、私が研究者だからかもしれない。