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読書録 『KAPPA』

地下鉄も30分乗れば記事のひとつもかけるのだな...... 
今日はいつもの東京タワーのお隣でセミナーでした。

危うく東大に行ってしまうところでした、やあねえ(涙)

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徳間文庫 柴田哲孝 『KAPPA』  あっという間に読了
    ついでに、 島田荘司 『都市のトパーズ』
           高橋克彦 『写楽殺人事件』 の感想も混ざってます。

あらすじ他、書籍情報   http://www.jbook.co.jp/p/p.aspx/3714514/s/
おや、ご本人のブログ   http://weeklyshibata.jugem.jp


おお、いいじゃん♪ というのが総合的な感想。
職場 (学園都市) 近くの牛久沼に河童が出るという話なので、「あそこに?」 というのもなくはなかったが。

 #職場で、牛久沼に河童が出る小説を読んでる、というと、
 #「ああ、あそこには、居ますよ」 と、普通に返事されるのが笑えました。
 #本当に牛久沼には河童伝説があるようですね。
 #説明を聞く限り、河童とは、「手足の長い亀?」 という感じだったので、
 #そう言う形のものが、居てもいいかなあ、という気はしました。

 !! 以降、犯人がバレます。 
           小説を読んでみようという気のある方は、お控えください !!


ラブクラフトやスティーブン=キングなどのホラーが好きな割に (好きだからこそ.........かも)、
エッセンスみたいな感じで、ご都合主義的に化け物を使われるのは嫌いだ。
また、既存の生物の亜種を、いかにも化け物に見えるように勿体ぶって描かれるのも嫌いだ。
中途半端な科学考証なんてつけられてたら、目も当てられない。
ついでにいうと、異世界を作ってそれと現世が不完全にリンクするという異世界ものも、いいかげん飽きた。

結果として、気に入るホラーものはほとんどない。

さて、『KAPPA』 はそのどれでもない。
主人公たちの職業や、日本の環境、業界の実情をうまく加味しつつ、UMAをうまく作り上げている。
見かけ上は殺人事件だから、犯人探しをする警察がいる。
河童記事を書こうという、釣り好きのルポライターがいる。
牛久沼で消えゆく漁を、細々と続けていた老人がいる。
ブラックバスに家族を奪われた、不登校の少年がいる。
みんな、それぞれにプロフェッショナルだ。個性的で、魅力がある。
UMAであるKAPPAまでもが魅力的だ。
新本格とも見まごう謎ときの部分と、元気いっぱいの冒険小説の痛快さが、ハイブリッドに両立している。
久々の、大当たり。

強いて残念な場所をあげれば、3か所ばかり、書き過ぎの部分があるところだ。
異国の生物を輸入して、日本の野に放つことは、確かに罪悪だ。
キャッチ&リリースも、たしかにフィッシングの基本なのかもしれない。
そういうことを、地の文章...... 登場人物のだれの言葉でもなく 著者が主張してしまっている。
それらのことは、文章ではっきりと書かれていなくても、登場人物たちの動きで十分に伝わってくる。
登場人物たちの動きで、それを伝えられるだけのテクニックを持っている作者だと思う。
だから、いらない。 
なのに、取材先へのエクスキューズだろうかと思うくらい、過剰に書かれている部分もあるので、
そのあたりが、興ざめで、残念でした。

くれぐれも、島田荘司みたいに、一方的視野と、偏見にあふれた遅くなった青年の主張.......
みたいなことはしないで欲しいと思う。

ちょっと 『KAPPA』 の感想からは外れるが.......
島田荘司は、初期の本格推理小説は良かったのだが、
それ以降はトリックも論外だったり、ストーリーに無関係に、所々、青年の主張ごっこみたいになってきて
『都市のトパーズ』 の途中で見限って、それ以降、読むのをやめてしまった。

彼 (島田荘司) は小説のストーリーや謎解きによって、読者を楽しませるというより、
小説という形を使って、自分が主張したいことを叫んでいるだけだったような気がする。
環境問題も、日本人の公共心のなさも、彼の言っていることは間違ではないと思うが、
それは彼の小説を読む上で必須のものではない。
環境問題を論じたものを読みたければ、データに基づいて現状をはじきだした、
ジャーナリストの記事か、その道のプロの論文を読む。
彼はジャーナリストではないから、環境問題を論じたものとして読むには物足りない。レベル外である。

だから小説家は、小説に徹するべきだと思う。
初期の本格推理が悪くなかっただけに、もったいない気がしている。 

  #もっとも、それらは著者の勝手であり、小説が売れればいいんだろうけどね。

小説の中に、自分の論理というか、考え (場合によっては学説) を埋める小説家として、
高橋克彦を同じ系統に考えている。
ただ、彼の場合は、それをトリックとしてうまく処理している。
科学考証を追求したSF作家みたいな感じだ。
科学考証は、青年の主張に比べて、否応なしにフェアだ (笑)。
データと、反論...... それ以外に入り込む余地がないという結論に導かないと、
SF読者は納得しない。

また、高橋克彦の生真面目なところは、(小説に必要な) 実験データをでっちあげた場合に、
小説の中ですら、それはでっち上げである、と、処理することだ。
写楽殺人事件』 は、古文書が一つ見つかって、
それが、写楽の正体を考える上で大きな意味を持つという話だったのだが、
後半であっさり、それが犯人の捏造であるとばらしている。 
美術史に愛着があるのかな、と思ったら、学生時代の専門だったらしい。

そういうわけで、高橋克彦はとても気に入っている。


さて...........他の作品も読もうと思って、柴田作品を検索した。
なんと、ノンフィクション出身........ というより、ジャーナリストなのか★

『KAPPA』 の主人公、有賀と同業である。
               (↑ この人が河童なわけではない)
なお、驚くのはこの作品が1980年代後期に連載されていたことだ。
今でこそ、ブラックバスミドリガメなど輸入動物の生態系への影響が
当たり前な問題として一般にも知られているが、
その当時だったら、決してポピュラーではなかったろう。

その点においても、先行して社会問題を取り上げるジャーナリストの目で
この小説の骨組みが作られたのかもしれない。

久々に、大当たり作家を見つけた気がする。 他の作品も、探そう♪