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読書録 『看守眼』 & 『半落ち』

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新潮文庫 横山秀夫 『看守眼』 読了


オレンジ色の表紙が綺麗だったので、キオスクで購入。
いきなり、読みやすい (←初めて読む作家の文章は、慣れるまで読みにくいことが多いのに反して)。
短編集で、女性が主人公の表題作から始まるのだが、
警察にいる女性であっても、その考え方や態度など、決して突飛な感じでない。
ディテールに突っ込みどころがないわけでもないが、奇をてらったり大仰ではない文章がいい。

表題作を読み終わる前に、この小説家の作品を他にも読んでいることを思い出した。
講談社文庫 『半落ち』 だ。
あまり映画を褒める人がいたので、小説を見かけて読んでみたのだ。
    半落ち http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062751941/

半落ち』 の方は、読んでずいぶん経つのであまりはっきり覚えていないが、
これもディテールには疑問が残った作品だ (ったと思う)。
たとえば (取材マニアの) 真保裕一なら、絶対やらなそうな地位や性格設定が出てくる。
それでも、それを無視しても許せるくらい、気持ちのいい作品だった。
人の、さりげない善意がうまく組み合わさって、一人の人間が精神的に救われる話だ(ったような気がする)。
結果論やただの善悪なら、「だからどうなんだ?」 の話かもしれないし、
それぞれの登場人物が、とりわけ積極的な行動をしたわけでもない。
さりげない、些細な行動、何人もの人のちょっとした好意の積み重ねばかりだ。
こんなにうまく、多くの人の好意が集められるもんか、タイミングが良すぎ、と思わないでもなかったが、
主人公の姿勢(の表現)に、それらの他人の好意を引き出してもおかしくない説得力があった。

いま一つ この作家の作品を続けて探さなかった理由としては、
オチの盛り上がりのセンスが野暮ったい気がしたからだろうか?

 #おしゃれだったり痛快だったりするエンターテイメント系の作品が好きなのです。
 #「さあ、感動しろー!」というようなストレートなお話は苦手。
 #たとえば浅田二郎なら 『鉄道員』 より 『プリズンホテル』 の方が感動的だと思ったりします。

おや、『半落ち』 って、直木賞候補作品で 受賞を逃したときに何かあったんですね。
 まあ、私も林真理子のエッセイよりは、『半落ち』の方がはるかに面白かったけど、
 『半落ち』はきっと、彼のベスト作品ではないと思うな。
 直木賞関連の顛末  http://www5a.biglobe.ne.jp/~katsuaki/sesou49.htm

たとえば、今回読んだ 『看守眼』 は、半落ちよりはるかに良かったと思う。
さりげない謎と さりげない謎解きばかりの話だが、
短編だからか、半落ちの時ほど「こんなに都合いいもんか」感がなくて、
綺麗にまとまっていて読みやすかったのだと思う。

それに、この中には、そのへんにいそうな軽微な悪人も出てくる。
           何かで得をした人、損をする人……  いいなあ……

ラストの議員秘書の話が一番好きです。
単純で、複雑で、人の心が絡み合って、それぞれに魅力的だし謎解きも伏線もあったし
終わり方まで、文句なしでした。



……トップ画像は、自分で春に撮影したアジサイを画像処理したものです。
綺麗な写真をそのまま綺麗になるようにと処理して、フレームに入れると、
こんなにつまらなくなるもんなんだなあ、という典型だと思います。

小説も、いいたいことを直球で描くのではない方が、面白いのかもしれませんね。