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読書録 『203号室』 『ふたたびの加奈子』 『アイ・アム』 他

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移動途中の簡単な夕食。まあ、しょうがないです。
 
軽いものばかり何作か読んだので、一気にw
まず、京成小銭文庫、じゃなかったw 光文社文庫 加門七海 『203号室』 読了
   http://jugem.jp/mono/amazon/4334737587/

思いっきりネタばれのあらすじを書くと、
大学に入って上京し、一人暮らしを始めた女の子のアパートで、あれやこれやの怪奇現象が起きる。
ホーンテッドハウスのワンルームバージョン。
で、代々繋がる、部屋に取り込まれた若者と同様に、主人公も魔のものに取り込まれ、
(そうとは自覚せずに) 新しい居住者に襲い掛かって行く、というのもお決まりのパターン。

    漫画で、まさに恨みの連鎖が重なって、
    前回憑り殺された人の幽霊の後ろに、その人を憑り殺した亡霊が、
    そのまた後ろにそいつを殺した亡霊が、そのまた後ろに……と、亡霊が並んで連なり、
    一匹の巨大な蛇となって新たな犠牲者に飛びかかるシーンがあった。
    ビジュアルで、一枚の絵だけでそれが説明出来てた。 一目瞭然、画像の勝利(笑)
    何だったかなぁ..... JETさんの、『倫敦魔魍街』 か 『奇譚倶楽部』.....

    そういえば倫敦の主人公はホームズという名で、奇譚の主人公は金田一さんだ。
    彼女はよほど、推理小説が好きと見える。

さて、自分でも意外に思うのだが、私は加門七海だの新津きよみだのの、ゆるーいホラーが好きだ。
ページに文字が少ないせいで、文庫本の重量が軽いと思うまでの印象もあるのだが、
主人公たちのさりげないしぐさや、登場人物のせりふが、妙にピンと来たりする。

たとえば『203号室』 では、地方から出てきた主人公の性格の重苦しさというのか、
やみくもに友人関係を作りたがり、すがりつこうとする言動の鬱陶しさは (←違う意見もあると思うがw)、
彼女の周りの人間たちのそっけなさを、さもありなんと思わせるのに十分だったし、
その一方で、主人公が追い詰められて、壊れていってしまう様子にも説得力があった気がする。
主人公を、バカだなあ (頭が悪いと言っているわけではない) と思いつつ、
そうなんだよ、こういう人っていっぱいいるんだよね、
でも時には私にもこういう面があるのかもね、と思えもする。
だから気に入らない主人公でも、苦境に立てば一緒にハラハラできるし、シンクロできるのかもしれない。

小池真理子の小説の主人公たちが強烈すぎて 「???」 なのと対照的である。


新津きよみも実はたくさん読んでいたりする(笑)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%B4%A5%E3%81%8D%E3%82%88%E3%81%BF
あ.....この人作品多いんだな。
『隣の女』 『さわらないで』 『震える家』
みんなステロタイプの設定と登場人物や事件で、話も軽いけれど、
通勤途中に読むぶんには、間一髪のところで (?) 好評。

好評の原因は、加門七海と同様、平易な文章と、主人公の無理のない性格設定にあると思う。
ただ、母親との確執と、夫の昔の浮気....というのはこの人の作品でよく出てくるパターンだ。
霊や人外のものがちょこちょこ出てくるのも、この人のパターン。 
ま、気楽な作品だからその程度の使い回しはOKかな。

彼女の作品では、多分この作品↓を一番はじめに読んだ。
新津きよみ 『ふたたびの加奈子』 ハルキ・ホラー文庫
      http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4894567415/sukisukijulie-22
  五歳になる一人娘の加奈子を交通事故で亡くした相原容子は,夫の信樹と”加奈子の魂”と三人で
  暮らしていた。容子は,食事の時も,外出するときも,いつも”加奈子の魂”と一緒だった。
  だが,そんなある日,”加奈子の魂”は転生の場所を見つけたらしい。
  妊娠三ヶ月の主婦,野口正美の身体だ。容子は,ひたすら正美の出産を心待ちにするが……。
            (門川春樹事務所 『ふたたびの加奈子』 書籍情報より)

読んでいた時、作品の中身とは別に、“性格の歪んでなさそうな作者だなあ...” と思ったりした。
話は単純だし、ラストもすぐに思い描けそうな数パターンのうちの一つにすぎなかったんだけど、
容子の行動や、話の本筋とは別に、容子にかかわった人が、
(容子は全然そっちを見ていないのに)考え方を変えたり、幸せになったりするのが、
ディズニーアニメの背景のに出てくる、小動物の恋愛のようで、なんかいいな、と思った。
(具体的にどれとは言えないのだが、
 ディズニー作品では背景で小鳥が他の小鳥に求愛したりふられていたりして、
 ラスト付近では、その二匹がカップルになって赤ちゃんが生まれていたりする。
 話の本筋とは関係なく、どこかで (読者が読んでいない) 別の物語は走っている感じ。)

もっとも、なにかもうひとパンチあったら、宮部みゆきクラスのベストセラー作品になるかと思うと、
少し物足りない気がしないでもない。


菅浩江 『アイ・アム I am.』 (祥伝社文庫)
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%A0-I-am-%E7%A5%A5%E4%BC%9D%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E6%B5%A9%E6%B1%9F/dp/4396328850
円筒形のボディに人間型の手、顔はホログラムの、介護のために作られたホスピスロボットが、
自分は何をするべきなのか、何を考えてはいけないのか、もしかすると自分が人間だったのではないか?
などと自問自答しつつ、重病の子供や、意識の混濁した老人、植物状態の患者などと接して、
自分が生まれた (作りだされた) 謎にに迫って行く話。
この人の作品を読むのは、これが初めてだ。

末期医療、ホスピス植物状態、寿命、尊厳死、最先端医療、科学.........
いろんな問題を突きつけてくるような、それなのに、とても柔らかなSF作品。

ちょっとSF小説を読んだ人なら、突っ込みどころはあるだろうあるし、パターン化された物語の一つだと思う。
看護婦や患者、ほかの病院のスタッフも基本的にはきれいごとしか書かれていない。
最近よくある病院小説とは、真っ向から対立するような、贅沢な職場環境と医療環境の病院が舞台だ。
個人個人の感情の突き詰め方は物足りないし、感情表現もストレートの直球ばかりだ。
おまけに、真ん中あたりで、ああ、やっぱり、とネタに気付くので謎解きの難しさもない。
テーマ的にも盛りだくさんだから、(掘り下げれば)この中の一つをとって長編にだってできるだろう。
が……

この作品では、SFにすることによって、ただひとえに、柔らかく、思考と生命の問題を伝えてくる。
考えるポイントはたくさんあるので (既に私は考えたことがある課題が多かったが)、
これを読んだ誰かが自問するきっかけになるのではないかと思います。
細かいところは無視して、子供 (中学生くらい?) が読むのにいいんじゃないかな。

ありきたりだけれど、良い作品でした。 

wikiを見たら、ジュブナイル作家なんですね、この人。おまけに配偶者はガイナックスの人かあ(笑)
いっそアニメ化してくれないかな、と思う。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%85%E6%B5%A9%E6%B1%9F