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読書録 『ストロベリー・ナイト』

光文社文庫 誉田哲也 『ストロベリーナイト』 一気読み。
一気に読めたことを考えれば、この手の小説としては成功なのかもしれない。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88-%E5%85%89%E6%96%87%E7%A4%BE%E6%96%87%E5%BA%AB-4-1-%E8%AA%89%E7%94%B0-%E5%93%B2%E4%B9%9F/dp/4334744710%3FSubscriptionId%3D0C760DFJTH2FN8YG3CR2%26tag%3Dasahicom-book-22%26linkCode%3Dxm2%26camp%3D2025%26creative%3D165953%26creativeASIN%3D4334744710
       ........アマゾン、長い。

マキャモンやクーンツを愛読していた身としては、グロテスクなシーンは迫力に欠けるが、
キングが近未来やパラレルワールドの舞台でやっている殺人ショーも、
日本の東京の地名をバンバン入れて身近に持ってくれば、ネタとして十分使える。
叙述トリックがメインではないが、ああ、ここひっかけようとしてるな、という部分も多々あったので、
推理小説を読み慣れていると、刑事達より先に真相に辿りついてしまうかもしれない。

それに気づかずに読んでいれば、帯の煽り文句のように、
スト20%は、どんでん返しの連続―― になっているかもしれない、とは思う。

黒幕は、当たり前すぎて意外といえば意外だったかも。。。。(ネタばれの部分で後述)。

ただ------

主人公の警部補の女が、変(涙)
これはもう、この人の書く女性の特徴で、どうしようもないのではないかという気もする。
ステロタイプでありふれてて、それなのに現実感がない。
おまけに犯人を憎んだり同調したり、ストーリーの都合で感情が揺れまくること、
彼女のモノローグのセリフが前後から浮いてしまうこと (コメディじゃないのだ)、
この女は、男に関して、好感か不快感以外の何物もないのかっ とか、
職務中でもひとまず恋愛対象か否かを真っ先に考えるのか、とか (『ジウ』 の美咲さんもそーか orz)
好きか嫌いか決め難いほど、感情移入がしにくい。

『ジウ』  のときもそうだったが、この小説は普通の刑事ものとしても、十分成り立つのだから、
無理に女を主人公にすることないのにな、と思う。

それでも、いいシーンはたくさんある。
裁判の傍聴席で、多くの警察官が敬礼するシーンは (かなりベタだと思いつつも)、
証言台の少女の発言の不自然さを凌駕する魅力がある。
大塚と辰巳ライン、(ある意味地道な警察官のプロと、チンピラのプロ(?))
そこにやり手の警部補である勝俣が入り込んでくるあたりも、刑事ものとして読みごたえがあった。
彼ら3人は、いずれも自分の仕事を遂行するプロフェッショナルで、揺らぎがない。
キャラクターが伝聞ではなく、手探りでもなく、オリジナルな気がする。
井岡、勝俣のラスト近くの活躍も楽しかった。
正直、読みながらこの作者の小説をこれ以上買うことはないだろうな、と思っていたのだが、
井岡、勝俣の活躍を見てから、もう一作くらい続編を読んでみてもいいかな、と思い直したくらいだ。
情報屋の辰巳がまた出てきてくれると、面白いだろうな、とも思う。
辰巳は玲子とツルませるより、悪徳刑事の勝俣とカップリングさせたほうが断然いい。

・・・・・・とまあ、だからこそ、女を主人公に持ってきてしまったこの小説を、残念に思う。


以下、ネタばれだらけなので、黄色文字に。反転させて読んでください。

冒頭から、ここでミスリードさせようという作者の意気込みがよくわかる(苦笑)。
孤独で虐待されててでどうしようもなく不幸な環境にいる、主格の中学生 「ぼく」 が、
  (小学生かとも思ったが、制服を着ているらしいので中学生。あるいは精神障害者であると予測できる)
ヤク中の両親を殺して放火するのだが、その章の最後で、誰かがそれをかばうシーンが出てくる。
友達はいない風なので、兄弟であろうとの推測がつく、しかも、年上だ。

しばらく読むと、精神異常の妹を持つ兄貴が出てくる。
で、彼は17歳のときにヤク中の親を殺して放火の前科があり、
更生しているようだったのに、誰かの殺人の死体処理をしたあげくに、沼の細菌に感染して死亡。
刑事たちにとっては事件の始まりだが、読者にはこれが冒頭パラグラフの兄弟だろうをいう推測は容易に付く。
ああ、「ぼく」 は、実は女の子だったのか、精神病院と養護施設を行ったり来たり、というのも
年齢層も、初めの予測にパシッとおさまる。
「ぼく」 がギャング団に入り、ボスの美人の妹と仲良くしても警戒されなかった理由もわかる。
女の子だからだ。

こうなってしまうと、あとは殺人ショーの黒幕を追いかけるだけだ。
で、この黒幕も・・・・東大出の若い警察官僚というのは.....ううううう
しかも共犯者たちも東大をそろえておくというのは.....
こういう人を犯人にしたいのもわかるし、彼らが歪んでいると思われがちなのもわからないではないのだが、
特定アジアで日本バッシングの小説書くと当たる、ってこととの共通点が、なんとなく見えてしまう。
つまり、こいつを犯人にしておけば、まあ間違いないのだ。
しかも、この黒幕、彼である必要----彼でなければ犯人をできない理由----は、なにもない。

そうそう、掲示板へのアクセスから、IPアドレス、自宅などを割り出すのは、
いくらいい大学だって、学部学生がサクッとできることではないです。
また、仮にそれができる人なら、自分のIPをを隠すくらいのことはします。
ハッカーに学歴は必要ないし(笑)

...キャッシュディスペンサーで1日に250万円は下せないと思う。
この小説の書かれが時代は、今よりはマシだったかもしれないけど250万は無理なのでは?
多額の引き落としができなくて困ったことのある人は大勢いると思うんだけど・・・・・・・・

とまあ、こんなふうに細かい取材がちょっとずつ足りない感じ。

主人公も女はこんな風なんだよ、という話を誰かから聞いて、そこに適当なイベントを付け加えた感じ。
ありふれたイベントを複数もつけるから、どんどん作りものっぽく白けて行ってしまう。
作りものなら思い切り強烈にすればいいのに、目指しているのが普通(?)の女なので、そうもいかない。
キャラクターがステロタイプに陥ってしまったのも、調査や観察の不足なんじゃないだろうか?



ラストの勝俣の病院訪問から井岡といっしょにビルに突入するシーンはとても楽しい。
強面の勝俣はモデルガンだけ、コメディアンの井岡は拳銃を忘れてきている。
誰が犯人で、誰がどこにどうなっているのかも分からず、動きもコメディタッチである。
賛否両論あるとは思うが、私はこの小説の重さ的には、ここもこれでOKでした。
ドタバタ風..... 
でも、それが終わってからのとってつけたような和解シーンは、どーよ(涙)


というわけで、少し悩んだものの、続編の 『ソウルケイジ』、を先ほど購入して、読み始めました。

ストロベリーナイト』 の主人公のイマイチ感の理由の一つに、思い当りました。
登場人物たちのモノローグや、一部のおふざけが、とってつけたように浮きまくってて、
作りものっぽい気がしてしまうのでは.....
とはいえ、こっちも一気に読み進みそうな気がします。


P.S.コメントはありがたいのですが、できれはご自分が小説を読んだ時の感想や、
   この作家に対することなどにしてください。
   また、あまり長くなるようでしたら、ご自分の記事にして、トラックバックなさってください。
   そうしていただければ、極力読みに行きます。
   本を読んでいない方の“私の感想に対する感想”や“おふざけコメント”は、精神衛生上良くないので
   鍵コメント、オープンコメント含めてご遠慮いただきたいと思います。