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過去の読書録 『夢見る宝石』 & 『人間以上』

前記事にいただいたコメントにリプライしていて思い出した。
シオドア=スタージョンの 『夢見る宝石』 と 『人間以上』。
『夢見る宝石』 は高校生の時に、『人間以上』 は大学に入ってから、友人に勧められて読んだ。

世の中の仕組みや、割り切れなさがわかりはじめた若者は、

1.これではいけない、と、世直しの決心をしたり、
              自分はそれに染まらないでいようと頑張るタイプ。

2.世の中は所詮こんなものなのさ、面白おかしく生きりゃいいんだから、
              俺のことは放っておいてくれ、と拗ねるタイプ。

(何も感じない人も時にはいるとは思うが)たいていは両方を行ったり来たりして、
どっちかに振り分けられていく人が多いのではないかとと思う。

私は2だったので、美しいだけの芸術や、世紀末文学に傾倒した。

イメージ 1

スタージョンは、ちょうどその頃に読んだ本だ。
当時の印象だから、今読むとまた違うのだろうが、鮮烈なイメージを伴ったまま記憶しているので、
読み直すのは怖いような気もする。
そもそも、アマゾンのレビューを読んで、確かに小説のどの部分へのレビューか思い当るのだが、
そんなに難解な本だったろうか、とか、こんな内容だったろうか、と首を捻っている。
極端な誤解のもとに読み進んだのかもしれない。
その上で、勝手な感想を書かせていただくことにする。 (← まあ、いつものことかもしれないが)


とにかく、美しいイメージとグロテスクなイメージが交互に押し寄せて、
(深読みはしなかったので) オスカー=ワイルドの唯美主義を絵に描いたような作品だなあ、と思ってた。
水晶は夢を見ているというより、まどろんでいる感じで、はっと目を覚まされたら裏切られてしまうような
そんな危うさも感じた。
人間であること、人間でないこと、人間のようなもの、人間の定義を揺り動かされるという意味では、
『電気羊』 にも通じる何かがあったのではないかと思う。




もう片方のスタージョン作品、 『人間以上』

非常に難解な小説だと言われていて、そういうわけでレビューも解説もそれぞれに違う (苦笑)。
アマゾンのレビューがバラバラなので、違うものにリンクしておく。
人間以上: http://store.shopping.yahoo.co.jp/7andy/00885210.html

集合体としてはじめて形をなす生命体の一員が 
それぞれ個別に悩んでいたらこんな風になるだろうな、と思う様な主人公たち。
多くの平均的な人々や、世間に入り込めない人々、あるいは単に世間に入り込めないと思っている人間への
多大なメッセージを含んでいる小説だったと思う。
集合体として意識を持つ生命、と言うだけなら、SF小説の設定としてはさほど珍しいものでもなく、
フレドリック=ブラウンの赤と黒の蟻さんたちや、銀河ヒッチハイクのネズミさんとか、
鉄腕バーディ (これは小説ではなく漫画) のフォルテ捜査官とか、即座にあれこれと思い浮かんだりする。
だから、上記のメッセージ性と、描かれている世界のグロテスクさ、美しさがなければ
それほど印象に残る小説でもないのではないのかもしれない。

私の頭の中には、1シーンが映像化されて残っている。

  雨の中、路肩の泥にスタックしたまま、朽ちているトラックが一台。

  トラックには、人類初の反重力装置が組み込まれているのだが、そんなことは誰も知らない。
  誰にも知られないまま、錆びて、朽ちていく。
  その反重力装置は、超能力 (or素晴らしい科学知識) を持つ幼児が、
  足の弱くなったお爺さんのために、作り上げたものなのだ。

  でも、お爺さんがいなくなったら、反重力装置もいらない。 
  トラックもいらない。 
  だから、雨の中、トラックは朽ちていく。   


価値あるものが、その価値を認められず、無駄に消えていくのは、十分に退廃的、世紀末的で美しい。
だが、その美しさの根底に、人外の者が抱く、自分を守ってくれた人への、柔らかな感謝の心がある。
 
ずいぶん昔に読んだ本だし、記憶だけで書いているので、
小説の本文とは多少違ってしまっているかもしれないが。
そんなわけで、この小説は 退廃的だけど、暖か..... という、他にないジャンルの本として、
私の記憶に深く残っているのだ。



冒頭の写真は季節も内容も関係なく、雨をキーワードにググったときに、
一番美しかった写真を素材にさせていただきました。 ありがとうございます。
              http://haira.halfmoon.jp/photo/plant/hana-akihuyu/