読書録 『アイズ』
文庫本山崩し (←古書店に出さないまま、実験室にたまっていた文庫本を、片づけてます)
山からこの本をピックアップして、まず思った。
短編集なんだけど、けっこう全部覚えてるなあ。
(小池真理子と違って )
しかも冒頭数行でそれを思い出す。
この人の作品は、色が濃いのかな、と、思う。
まあ、最近読んだものだということもあるのだろうが。
鍵のブローチ (1920頃 フランス)
この作者の 『リング』 や 『らせん』 は比較的、王道のホラーで、その分順当に先が読めちゃうんだけど、
『アイズ』 の短編はみんなオリジナリティが高くて、ページを繰ると必ず新しい展開があった気がする。
『リング』 のヒット以降、“あの”鈴木光司の作品・・・・・・みたいな帯がつけられてしまい、
帯を読んで惹かれる購買者達の期待が、飛びかかる系ホラーになっているせいで、
(amazonなどを見ると) この作品の評価はかなり低いように思う。
もともと、こういうあっさりした中の怖さが、ジャパニーズホラーなんじゃないかと思うんだが。
私は、ジャパニーズホラーは、あまり得意ではない。(←怖いから苦手なのではなく、怖さが良くわからない)
幼少期に日本の怪談に親しんでいなかったせいかもしれないが、
日本の幽霊は自分には襲いかかって来ないので、所詮、他人ごとな気がする。
突如やってくる、霧の中の怪物や、遊びに行った湖にいるジェイソンの方が怖いのだ。
そうはいっても、私がベストオブホラーにしてるのは
キングの 『ペットセメタリー(英タイトルは、ペットセマタリー)』 と、貴志裕介の 『天使の囀り』 で、
双方とも、襲いかかってくる何かとともに、もうひとつ、エッセンスがある。 ホラー + α なのだ。
ペットセメタリーが怖いのは、蘇った死者が人間を襲うからというのも確かだが、
死んでしまった肉親を諦めきれずに、怪物になってしまうかもしれないと知りつつ、
いわくつきの霊園に埋めに行かずにはすまない、家族や愛する者への執着心だ。
(映画になったら、その辺は弾き飛ばされて、殴ってやりたい出来でしたが )
『天使の囀り』 もそうだ。
人間の快と不快の脳内神経を繋ぎ換えてしまうウィルスが(この辺うろ覚え)
人々を謎の自殺・殺人へと追いやる。
そりゃあもう、B級映画 『悪魔の悦び』 みたいな勢いである。(←エロホラーだが、ネタ的には同じ)
人間の弱さを浮き彫りにするホラーは多いし、細菌類が襲ってくるバイオホラーも多いくて、
そういう意味で、このホラー部分は比較的順当に進んで行って、それはそれで佳作だと思う・・・・・
終末医療に、“天使” を使えるんじゃないかと、登場人物や読者が気付き、
その方向に進みそうなラストシーンが、あの作品で一番、恐ろしい場所なんじゃないだろうか。
『アイズ』 は、すべての短編にホラー + α をつけているような気がする。
いろんなところにレビューが出ているようなので、一つ一つの感想は書かないが、
私は最後の 『櫓』 の話が好きだったりします (時代ものはよくわからないのですが )。
自殺の理由なんてさ、他人もさておき、後の時代の人から見たら、こんなものなのかもしれないな、と。
参考
ペットセメタリー
http://www.amazon.co.jp/product-reviews/416714803X/ref=dp_top_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&showViewpoints=1
天使の囀り
http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4041979056/ref=dp_top_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&showViewpoints=1
悪魔の悦び (18禁と言うか、気持ち悪くないのをリンクしたけど一応、クリック注意、って言っておきます )