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読書録 『ガダラの豚』

文庫本山崩し (←古書店に持って行けないまま、実験室にたまった本を片付けてます)
 イメージ 1
集英社文庫 中島らも 『ガダラの豚』 (1)~(3)  
 
これはきっちり読んだ時を覚えてます。
娘がまだ胎児で、母親を悪性悪阻 (平たく言うとつわり) 
で苦しめていた時に、入院先で読んだのです。
そのちょっと前に、大学の先輩に勧められたんだったかな。
一巻だけ買って持っていて、読む時間が出来たので、
そのあとは、夫に買ってきてもらってたような気がします。
                   
              ミニ豚 (BBC on line NEWSに出ていた画像です)
以下、amazon よりあらすじ。
一巻
  アフリカにおける呪術医の研究でみごとな業績を示す民族学学者・大生部多一郎はTVの人気タレント教授。
  彼の著書「呪術パワー・念で殺す」は超能力ブームにのってベストセラーになった。
  8年前に調査地の東アフリカで長女の志織が気球から落ちて死んで以来、大生部はアル中に。
  妻の逸美は神経を病み、奇跡が売りの新興宗教にのめり込む。
  大生部は奇術師のミラクルと共に逸美の奪還を企てるが…。
  超能力・占い・宗教。現代の闇を抉る物語。まじりけなしの大エンターテイメント。
二巻
  大生部一家はテレビ局の特番取材で再びアフリカへ旅立つ。
  研究助手の道満、スプーン曲げ青年の清川、大生部の長男納、テレビのスタッフ6名。
  一行はケニアウガンダの国境沿いを北上しスワヒリ語で「13」という意味の不吉な村、クミナタトゥに着いた。
  村民に怖れられる大呪術師バキリの面会に成功した一行は最大の禁忌を犯す。
  バキリのキジーツの少女を攫ったのだ。 危機一髪。 ケニアを後にする。
三巻
  通訳のムアンギ、テレビクルーたち。6人もの犠牲者を出して大生部は娘を取り戻した。
  「バナナのキジーツ」 の志織を奪いに呪術師バキリは東京に来ている。
  番組関係者の回りでは次々奇怪な事件が起こる。司会者嬢の惨殺、清川の変死。
  元・プロデューサーの馬飼は大生部一家と大呪術師バキリが対決する生番組を企画した。
  光と影、呪いと祈り。テレビ局の迷路でくりひろげられる世紀末スペクタクル大団円。
 
 
一言、全部面白かったです。
 
第一巻は、普通のエンターテイメントとして、楽しんで読んだが、
筆者がアルコール中毒で、主人公もアルコール中毒で、と、共通点があるのは知っていたから、
リアルにこうなのかなあ、と、興味深い部分も多かった。
また、新興宗教をやっつけるシーンも、普通にトリック解明みたいで、楽しかった。
話としてはジェットコースタータイプであっという間に読み終わってしまう。
一応完結はしているが、次の巻をぜひ読みたいという気にさせてくれた。
 
第二巻、読後、あんまりダレないなあ、と言うのに感心したのを覚えている。
三部作の第二作は、映画でも小説でも、ダレているのが当たり前みたいに評価される。
トリックを暴く、「超常現象なんてないんだよ」 というスタンスの第一巻に対して、
この巻では、老舗のアフリカ呪術が出てくる。 三部作の中では、一番面白みがなかった (**) とは思うが、
緊張感をつなげたまま、次の作品に続けられるのは、すごいなあ。 
今でこそ、呪いや、呪術と、超能力・手品・トリックなんていうものとの絡み合いを描いた作品が多いが、
これは、その走りでありながら、どれとも違うすごさがあった気がする。
 
  注**  この少し前に、レズニックの 『キリンヤガ』 を読んだのが、マイナス評価につながったのかも。
 
第三巻
なぜか一般的にこの巻は評価が高くないのだが・・・・・・・・・・
確かに、話を広げ過ぎていたり、単なる超能力戦闘少年漫画になり下がった感じがしてたり、
グロテスクな描写が多くなっていたりと、全二作に比べてちょっと毛色は違うのだが、
一気に読むと、ここはこれでいいのではないかと思う。
そもそも、私はこういうタイプの戦うホラーが好きだ。 大生部が、どんどんかっこよく見えてくる。
ここで戦わずして、このシリーズが終わるか! と思っていたので、満足です。
 
三巻まとめて、お勧めです。 多分、子供(中学生くらい)でも面白く読めるかと。
 
 
 
ちなみに・・・・・・・wikiを見ると、中島氏は亡くなっているらしい。
wikiの経歴をサラサラと読んで、マリファナだの薬中だのアル中だの、その中での執筆活動だの、って
バロウズ(***)かよ」 と、思って読みすすんでいたら、バロウズファンで、敬愛していた、と書かれていた。
 
薬物中毒は、冷静に考えればいただけないが、
才能ある音楽家の感情の激しさから来るわがままが許され、それが良い演奏に繋がる場合があるように、
彼のようなクリエイティブな仕事に繋がる、トリップなら、まあ、許せるのではないかとも思った。
大学の頃の心理学の教授が、医者の下で、マリファナだかLSDだかの体験をやったそうだが、
本来、色彩や芸術に対する才能がエンハンスされるということだったのに、
自分は天井の蛍光灯が伸び縮みしただけだったので、その程度の才能か、と、素面になってショックを感じた、
と、言っていたが、そういうわけで、ごく普通の人間には、何のメリットもないんだよな~ 
 
などなど・・・・・あれこれ思い出しつつ。
                          もうすぐ乗り換えです。 ゼブラ@
 
 
  注*** 『裸のランチ』 の原作者。
クローネンバーグが映画化したから、内容を知ってる人も多いかと。