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読書録 『クリスマス・プレゼント』

ここ何年か、つくばの街って、駅まわりのクリスマスイルミネーションが、中途半端に派手なんだけども、
その割に歩行者がほとんどいないので、なんかかえって寂しげなんだよね。
せめて、ドイツのような蜂蜜色のライトにすれば、暖かな感じがするのになあ、と、毎年思います。
自宅付近も、青のLEDだけど、都内住宅街で人が多いせいか、雨が降ってても寒々しくてもかなりマシ。
 
やっぱりクリスマスは、暖色系がいいと思うのは古いんでしょうかね?
 
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さて、読書録の予告までしていた、ジェフリー=ディーバーの 『クリスマス・プレゼント』 文春文庫 を読了。
amazonがあまりにも長いので、レビューの方で。
私はしろねこさんのとこでも、愛する作家、としてディーバーをあげていたのだが、
いやあ、短編一作読むごとに、読書録書けたんじゃないかと思うくらい面白かった。
 
ディーバー作品の中で、多分一番人気があるであろう探偵は、『ボーン・コレクター』 の寝たきり探偵・・・・・・
アームチェア、ならぬホイールチェア・ディテクティブの リンカーン=ライムではないかと思う。
邦訳表題作の 『クリスマス・プレゼント』は彼の推理短編である。
もっとも、原題は 『Twisted』 で、捻り、ねじれ、などの意味の言葉なのだが。
『捻り』、というだけあって、どの話も一筋縄ではいかない。
 
   私が一番好きなのは、ライムではなく、『ブルー・ノーウェア』 のジレットで、
   ライムが半身不随の ホイールチェア・ディテクティブ なら、
   ジレットは小説中ほとんどの時間を警察に拘束されてる プリズン・ディテクティブ だ。
   どちらにしても、数少ない手がかりを決して見落とさず、最短距離で真相にたどり着く様子は圧巻である。
 
ライム好きな人なら、彼の出てくる表題作だけで、この本の価値があるのではないだろうか?
 
私は収録作品第一話の 『ジョナサンがいない』 で思いっきり叙述トリック(?)に引っかかった。
でもそのラストシーンは単なるトリック解きのどんでん返しじゃなかったのだ。
どんでんがえしでそれまでの記述の裏がわかり、でも、主人公の決意と悲しさがジワリと伝わってくる。
感動巨編ではなく、読みやすさとウィットを追求する短編でありながら、さすがはディーバーの作品だなあ、と。
 
  なお、ウィットと、毒の効いた短編については、ジェフリー=アーチャーと似てなくもないのだが、
  この辺の悲しさを残す部分なんてのは、やはりディーバーならではなのだ。
  そうそう、出世作の 『ボーンコレクター』 は、このやるせなさ部分や、悲しさの部分が弱い気がする。
  話自体は面白かったし、探偵役のライムも魅力があったが、
  やっぱり 『ボーンコレクター』 を彼のトップには上げられないな。
 
どれもこれも珠玉で、でも、そのなかで一番好きなものを選べと言われたら、
『この世はすべて一つの舞台』 を、あげたいと思う。 シェイクスピアの出てくる話だ。
日本庭園の借景のように、シェイクスピアの生涯の一部にこの短編が填まり込むようになっている。
 
    良いなあ  いや、シェイクスピア好きだっていうのも、原因の一つにはなっていると思うけど。
 
時代や世の中の流れや、あるいは金銭や法律によって、正義が執行できない時、悪が守られてしまう時
主人公たちは、ちょっとしたズルをして、自分たちの正義を貫く。
気に入った話は、これ以外も同様のようだ、 『ノクターン』 しかり、『被包含犯罪』 しかり。
 
やっぱりいいなあ♪ ディーバーは。
というわけで、お勧め太鼓判です。
 
 
なお・・・・・・ 何でもない文章と言うか、宮部みゆき的キャラ説明のうまさと言うか、
話の流れにほとんど関係ないのに、気に入っちゃった部分がありました。
検事の部屋にやってきた刑事が、事件の話をするついでに、机の上のクッキーを勝手につまんで、
 「・・・・・・・・・・・・・・ところで、このオートミールのやつは美味いな。レシピをもらえないか?」
 「クッキーなんかやけないくせに。 それよりコニー(奥さんの名)に頼んであんた用に一箱分焼いてもらおう」
二人の距離感と親しさと、刑事のちょっとしたずうずうしさ、検事の社交性も数行で伝わってきて、
なかなかうまい一撃でした。