ブログ引越し検討中 (仮住まい)

yahooブログからの引越しを検討中です。現在テスト使用中。

昔の読書録 『サロメ』 『ヴェラ』 『幸福の王子』

歌鳥氏のコメントで思い出した。 オスカー=ワイルドがすごく好きだった。
高校時代には、もう私のワイルド好きがネタにされるほど知られていて、
それは当時、漫画で流行っていたボーイズラブなんかの傾向と、
同性愛好者だったワイルドの性癖のせいで、一時的に、彼の名が知られていたせいもあるのだけど、
代表作である 『ドリアン・グレイの肖像』 を私読んだのは、実はかなり後になってからだった。

 イメージ 1
きっかけは、『サロメ』 という戯曲だった。
中学生の頃、日本語の小説を読むにはまだ少し語学力の足りなかった私は、
親の本棚にあった戯曲を読み倒した。
読んだ時、『サロメ』 に出てくる登場人物たちは、全員愚かだと思った。
ヘロデ王も、エロディアーテもサロメも、
そして予言者のヨカナーンも自分勝手でバカだと思った。
が、それらが組み合わさった舞台は、何と幻想的で魅惑的なんだろう。
退廃的、という言葉すら知らなかったが、その映像イメージに幻惑された。
静寂、音、薄衣をまとって踊る少女と、血。
小心者の暴君と、高笑いする王妃、狂人のような予言者、
すべてを照らす、青い月明かり。
なお、右のビアズリーの挿絵の女は、長らくエロディアーテだと思っていた。
13歳の私にとって、同世代のサロメは、もっと子供だったんだよ (苦笑)
 
 
その後ワイルド作品に凝って、親に頼みこんで 『オスカーワイルド全集』 を購入してもらう。 
これによって、多分、ファンのモードが変わってしまったのだと思う。
      『オスカー・ワイルド全集』 西村孝次訳、(時代的に、これの旧版の方かと思う)
      私のワイルド感は、この訳者の影響を多分に受けていて、
      そういえば大学生の時に、モグリで、明治大学まで彼の講義を聴きに行った。
      ワイルドの話をしていなかったので、ちょっと残念だったけどね。
 
全集の中で気に入ったのが、『ヴェラ ; Vera, or the Nihilists』 
難しい単語がたくさん出てきて日本語の本では手に負えなくなり、
途中から洋書を探した。 洋書でも分からんかった
Socialism(社会主義)だのCommunism(共産主義)だの、Czarism(帝国主義?)だのの言葉が飛び交ってた。
ググってみても、あらすじさえ簡単には見つからないマイナー作品のようなので、記憶を頼りに書くと、

専制君主の父親に反発してレジスタンスに入った皇太子が、
そこで出会ったヴェラというレジスタンスの女に惚れ、
父親の死後、まるで 「この国を君にあげる」 とばかりに、自らが皇帝になる。
皇帝となった皇太子と、かつての恋人のヴェラは、「皇帝vs暗殺者」 として会うのだけど、
ヴェラは土壇場で恋人だった皇帝を信じ、自らが盾となって仲間の暗殺者たちに殺される。

このあと、皇太子は、ヴェラを死に追いやったレジスタンスとその背景の共産主義を憎むと思うんだわ、
で、ヴェラの最後の望みとは逆に、民衆を憎む独裁者になっていくんじゃないかと思うんだよね。
結局すべてが逆効果になる……何て皮肉な話だったんだろう。

同時に、理想や主義主張や国がどうこう言っても、人間は所詮、個人の愛憎を駆動力に生きてんだ、
と、国籍の違いと担任教師の外国人嫌いの被害を受けた私には、
皮肉でありながら思いっきりピンと来るろころがあったんだろうな。
                  なんだかんだ言って、自分の反抗期とシンクロしていたのかもしれない。
 
ナイチンゲールと赤い薔薇』 っていう作品もそうだ。命がけの自己犠牲が、まったくの無意味になる話。
でもさ、その中に出てくる、満月に白薔薇のとげで心臓を刺すと白い薔薇が赤くなる、って逸話と、
自分を犠牲にして薔薇を染める小鳥(ナイチンゲール)は、すごく綺麗なんだよ……… 
 
   #なお、あまりポピュラーじゃないようなのだが、ワイルド作品の中には、
   #『社会主義下における人間の魂』 (The Soul of Man under Socialism) なんてのもある。
 
多分、ワイルドの作品の中で一番有名なのは、『幸福の王子』 なんじゃないだろうか。

意識を持つ王子像が、肩に止まったツバメから、苦しんだり悲しんだりしている人の話を聞き、
自分の体に貼られた金箔や、飾りとして付けられた宝石を剥がして分け与えていく話。
でも、その自己犠牲のあげくに、醜くなった王子の像は捨てられてしまうし、
やっぱり自己犠牲で宝石を配達していたツバメは、南へ渡るタイミングを逸して、死んでしまう。

綺麗で、切なくて、悲しい話だ。 
溶鉱炉の中で、王子の鉛の心臓部が溶けなかったとか、天使がツバメの死骸とその心臓を持っていったとか、
そういうのは、ワイルドの作品としてはおまけみたいなもんだと思う。(子供の絵本には必要だろうけど)
 
私は、ワイルドの矛盾と皮肉に満ちた、それでいて綺麗な作品世界が好きだったのだ・・・・・・と、思う。
ワイルドはオックスフォードのモードリンに進学する前に、ダブリン大学のトリニティカレッジに学んでいる。
墓地はパリのペールラシェーズにある。 (……ショパンのお墓もここにあったような)
男色家であるとされているけれど、「男に惚れたかもしれない」と、七転八倒して悩みまくったという逸話がある。
常に必ず、年齢詐称していたとか、実は喧嘩(舌鋒ではなく腕っ節)が強かったとか、
父親のスキャンダルの後に母親の姓で執筆活動に入った息子(ヴィヴィアン・ホーランド)の書籍も読んだから、
彼のエピソードは山ほど覚えている。
(そういえば、ヴィヴィアン・ホーランドの作品で、和訳されてるのはないような気もする)
 
 

 
.       ところでさ、金のばら撒きをするには、きちんとしたツバメの報告が必要なんだよな、と、思う。
.       ツバメの声に耳を貸さずにばら撒いてちゃ、効果がないんだよ。
.       なんてことをどこぞの政治家に対して思う。
.       だいたい、ばら撒き終わった後、何もなくなった自分が溶鉱炉に投げ込まれる覚悟が、
.       彼らにあるのかなあ、と………  (テレビを見ながらこれを打っているので、つい、連想) 
 
さて、脳を緩和したところで(埋め記事とも言う)、学会準備~♪