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昔の読書録 『鳥啼村の惨劇』

朝浅比奈耕作シリーズ…吉村達也氏が死去
作家の吉村達也(よしむら・たつや)氏が14日、進行性胃がんで死去。60歳。
                                  亡くなったのか……・
 
   就職した頃、同世代の同僚達の中で、新本格という小説分野が流行っていた。
   吉村氏は、新本格とみなすには文体も謎解きも柔らかく、有名でもあったので
   友人の結婚式でのスピーチで、名探偵を列挙する時に朝比奈耕作を使う事もよくあった。
   名探偵たちを、同僚にあてはめると、
 
   御手洗潔タイプ: 研究者っぽい偏屈や無愛想に酔うことなく、少しは人付き合いを考えろ。
   金田一耕介タイプ: 博識なのもわかるし、いい人なのもわかるが、ちゃんとしたものを食べて風呂に入れ
   朝比奈耕作タイプ: この調子で頑張って。ちょっかい出されることもあるかもだけど、浮気しないでね
 
   朝比奈耕作は、適度におしゃれで社交的で、理想の結婚相手(?)タイプとして使わせていただいた。
   新婦に向かって、「金田一タイプだった同僚を、結婚したことによって朝比奈タイプに変えてください」、とか。
   
                    しかし、名探偵さんがた、みんな独身だなあ。
 
 
実をいえば、吉村氏の文章は軽くて、あまり好きではなかった。
多作の氏の作品で読んだのは、多分10冊程度だと思う。
 
ただ、一作だけ、非常に深く記憶に残っているのは……・
 
   『鳥啼村の惨劇』  徳間ノベルス
 
10年以上前の読了だから、謎解き部分は覚えていない。
どこかの島でおきた殺人事件に、父親の自殺の真相を追っていた朝比奈が巻き込まれる。
でも、連続殺人が起きるわけでも、緊張感ある謎解きがあったわけでもなかったのだと思う。
覚えているのは、その島の歴史として出てくる1シーンだけだ。
 
大量の村人が島から脱出しなくてはならない状況(地震か噴火か疫病か)になるが、絶望的に船が足りない。
少ない船に無理に乗り込もうと、船に手をかける村人の腕を、先に乗った村人が切り落とす。          
                (この手のシーンは、天災の悲劇なんかをネタにした映画や小説でよく出てくる)   
鳥啼き村には、大量にオウムがいる。                                             
平和な頃に教えられたか天災に恐れた人達が唱えるので覚えたのかは忘れたが、オウムが念仏を唱える。  
色鮮やかな大量のオウムが一斉に念仏を唱え、その鳴き声のもとで、村人が殺し合う。                          
 
すごいシーンだな、と、思った。 このシーンだけでも、映画かドラマで撮影してくれないかなあ、と。
おかげで、朝比奈の謎解きも事件もすっ飛んでしまったけど。 
 
惨劇の村・五部作の中の、一つです。
   花咲村の惨劇 徳間ノベルス、1992 のち文庫 
   鳥啼村の惨劇 徳間ノベルス、1992 のち文庫  
   風吹村の惨劇 徳間ノベルス、1992 
   月影村の惨劇 徳間ノベルス、1992 
   最後の惨劇  徳間ノベルス、1992 
 
少なくともこのシリーズは全部読んだはずなんですけどね………
もともと、吉村氏の小説は、ビジュアルに変換しやすいように思っていました。
朝比奈も 「カフェオレ色の髪」 だったし。
 
結婚式スピーチに使った三人の名探偵、今はいずれも読まなくなってしまいましたが、
吉村氏の新作が出てこないと思うのは、ちょっと残念な気もしたりします。