読書録 『エージェント6』
新潮文庫 トム・ロブスミス 『エージェント6』 読了
………このあらすじ、変じゃないか? と、思いつつ。
『チャイルド44』、『グラーグ57』のつづきで、『レオ・デミドフ アメリカに行く』、って感じの小説。
ご都合主義的な九死に一生が繰り返されるグラーグ57よりは、いくらかいいかなあ、と思って読んでいたのに、
最後の拍子抜け感はなんだろうーか。 ここまで引っ張って、犯人の告白オチ
しかも、この突放し加減はどーよ。
ロブスミスさん、小説書くの飽きたんじゃないでしょーね?
タイトルだって、無理に似たようなものつける必要ないんじゃないの?
いや、まあ、レオは相変わらず魅力的なんだけどね。
大抵の小説のヒーローの性格はまっすぐで、行動は正義に突き動かされていて、
その正義が多少考えなしで愚かなところがあっても、小説の中で成長していくのに対し、
レオの正義感や考え方は、(資本主義社会の視点云々を抜かしても)、
読者から見ていてどこか間違っている。
「間違っている」、「違うんじゃないか?」、「違うだろ、それはっ」、 「いくらなんでも身勝手すぎるだろっ」、
と、思いつつも、彼のドライビングフォースに引っ張られて読んでしまう。
資本主義社会の我々から見て、彼の正義と行動は、彼が自覚していたとしても、愚かだし身勝手だ。
かと言って、資本主義社会の側にも、黒人や共産主義者への嫌悪感をあらわにする人物が出てくる。
読者と同じ視点を持っているからと言って、正義ではないのだ。
まあ、なんていうか………
そのせいで、当時は共産主義にはあこがれる事もあった気がする。
レオのシリーズには、資本主義者にも共産主義者にも、善人も悪人も犯罪者もいて、
彼らの持つ正義感も、両者に共通するものも、食い違う者もあって、と、
その辺の距離感が、『チャイルド44』 は良かったんだけどなあ……
『エージェント6』 途中までは面白いです。
モデルになった人たちも、なんとなくわかります。
だからこそ、ラストへの持っていきかたと、レオの最後が、残念だなあ。
とはいえ、ジェットコースター的に読み進めるので、お勧め度は50%くらいです。