読書録 『人狼』
夏休みが終わって、通勤時間が長くなると、小説を読む時間が戻ってきます。
整体院を営む美崎照人のもとへ黒岩という男が訪ねてきた。
美崎がかつて所属していた空手道場の元指導員だ。
最近噂になっている狼男ー狼の面をつけ、繁華街で暴力をふるう非行少年たちを、
素手で、しかも一人で痛めつける男の正体が、黒岩の弟子・真島ではないかというのだ。
黒岩とともに独立した真島は試合に出られず自棄になっていたらしい。
真島を止める手助けを依頼され、困惑する美崎だが…。 (楽天BOOKSより)
今野敏と言うと、私はごく普通&真面目な警察小説である 『隠蔽捜査』 をベストにあげるのだが、
ジュブナイルのように軽い、警視庁科学特捜班(←カラー戦隊♪)も嫌いではない。
読み方が違うだけだ。
この、『人狼』は、文体から察する限り、前者のノリの本かな……と、読み始めた。
文体は落ち着いているが、平易なためにサクサク読める。
作者が格闘家なためか、ストリートファイトのシーンは、やっぱりワクワクする。
文体が隠蔽操作の方で、内容がカラー戦隊の感じだ。
なお、探偵や刑事が出てくるので、謎解きや犯人探しはあるのだが、
加えて、ちゃんと推理して、裏があったりもするのだが、
サクサク読めすぎて盛り上がりに欠けたのが難だろうか?
一つ一つをもう少しふくらませて長く(回りくどく)書いても、よかったのではないかと思う。
また、美崎が、行きがかり上とはいえストリートギャングみたいな少年達を手懐けてしまうところや、
その少年たちが、美崎を助けようと協力するシーンは、心が温まるようで、
この作者の根本が性善説だからなのかな、と思った。
普通に面白かったし、読後感も悪くないので
警視庁科学特捜班の方のファンには、文句なく受け入れられるのではないだろうか?
一つだけ、めちゃくちゃくだらないけど、気になった点が
話の中に、狼男が出るのだが………で、それは狼のお面(カツラ)をかぶっているらしいのだが、
人間の頭にすっぽり狼キャップを被った場合、
アヌビス神みたいになる、よね?
ぱっと見、犬って思わないかな?
かといって、一般的な映画の狼男みたいのだったら、例えばデル・トロのウルフマンなら、こんなのだよね?
ゴリラに見えるんじゃないかな?
場所は池袋、少年ギャングにタコ殴りにされて朦朧とした頭で見ても、
「狼ですっ」 って思ってもらえるカツラって……・どこで手に入れたんだ?
まさか作ったの?
ねえ、どんなの? どんなの? どーゆー形なのよ? と、最後まで気になっていました。