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読書録 『クトゥルー神話の本』

エソテリカ別冊 『クトゥルー神話の本』 恐怖作家ラブクラフトと暗黒の宇宙神話入門 読了
 
うんざりするほどURLが長いので、幾分でも短いアマゾンのレビューをリンク
 
とっても変わった本だ。 でも大好き。
 
イメージ 1
 
昔のヒロイックファンタジーの挿絵並みの、シンプルな線のカラー挿絵と、
小論文みたいなラブクラフト談義が交互に続く。
ラブクラフト談義やクトゥルー神話に関する読み物の方は、著者の技量にかかわるから
(小説は良くても解説は「?」な人がいる、と知った) 玉石混交だったが、
その中の情報はみな興味深く、面白かった。
 
読んで感じたことを一言でいうと、ラブクラフトって変な奴だったんだな、ってことだ。
 
  変な文学、退廃的な文学、世紀末的な文学の作者は、
  その通り実践する人だと思われることも多いけれど、
  ウィリアム・ブレイクアンブローズ・ビアスも病的な奇人ではない。 
 
ラブクラフトは、現実世界と二重写しになった神話の中にいたのかもしれない。
幼少期に見たという、空中に開いた穴を、大人になってからも見ていたのかもしれない。
かといって、彼の小説はおどろおどろしい不可思議なものを、結論(謎解きの答え)にはしない。
科学的な分析眼を持ちつつ、幼少期から超常現象にのめりこんでいったのだからこそ、
筋金入りのホラー作家(超常現象作家?)になったのだと思う。
 
この本の中に、とても印象的なQ&Aがあった。
 
 質問:私もクトゥルー神話を書きたいのですが、誰かの許可は必要なのでしょうか?
 
 回答:おそらくあなたがラブクラフト及びその後継者たちをリスペクトする限り、
    誰もあなたがクトゥルー神話作品を書いたことをとがめないでしょう。
    その代り、あなたのクトゥルー魂や遊び心が見えなければ、それは空虚な作品とみなされるでしょう。
 
だから、クトゥルー神話の世界にのめりこむ作家は多くなったし、愛されたんだよな、と、思う。 
ラブクラフトですら、後期にならないとクトゥルー神話の統合化をしていない。
オリジナルの旧支配者を作る作者も多いし、邪神や魔道書さえあれば神話作品扱いだし、
それがなくてもクトゥルー神話的なものはたくさんある。
ギリシャ神話をネタにしてるとか、アトランティスをネタにしているのと同じように、
ああ、これはクトゥルー神話ネタだな、と、思いながら読む小説がある。
ラブクラフトに捧げたホラー作家の作品が、それはそれは大量にある。
 
 
阿部公房の水中都市はどうだったんだろう、とふと考える。
『水中都市』では、父親の体が膨らんで、爆発して、魚になる。 町が水中に変わっていく。
魚となった元人間に、人間が喰われていくコメディ(←偏見)だ。
とてもクトゥルー神話的なのだが、検索の好きな私が、こればかりは調べないでいる。
 
あの中の一説が好きだ。
読んだのがはるか昔なので、おぼろげだが
普通のおじさんがタバコをつけようとして、なかなかつかず、「大分水っぽくなってきたな」、と、言うシーンだ。
水中都市に呑みこまれていく彼らは、とても潔い。
 
化け物が出てきても、パニックホラーではなく、静かに他の生物になるのを受け入れているようで、
案外こんなものかもしれないね。 なんて、言いたくなるのだ。