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読書録 『だましゑ歌麿』

仕事が立てこんでいたせいもあって、時間がかかってしまったが、
文春文庫 高橋克彦 『だましゑ歌麿』 読了
水谷豊主演(?)のドラマにもなっているし、思いっきりエンターテイメント時代劇、だ。
 
高橋克彦は、木版画や浮世絵にとてもとても造詣が深い。
絵画の描写も、版元や江戸の芸術も、リアルに生き生きと描かれている。
また、時代劇の謎解きは、現代のサスペンス小説のそれに比べて、単純であることが多いのだが、
この作品に限ってはそんなことはない。
彼の作品は舞台が江戸であるだけで、これは普通の刑事ドラマだ。
 
主人公は融通の利かない南町の同心(刑事)で、
派手さはないものの地に足の着いた名探偵でもあるので、謎解きに一本筋が通っている。
また、火付盗賊改の長谷川平蔵は他のテレビドラマの鬼平みたいだし、
後半活躍する北町奉行は、頭脳派なのに、街中を歩くためには変装したりして、まるで遠山の金さんだ。
贅沢を禁止し出版物に目を光らせる松平定信は、理想に燃えすぎて過剰な締め付けで迷走する、
どこぞの国の政治屋政治団体にそっくりだし、
それを出し抜こうとする蔦屋は読売新聞社集英社がドッキングしたみたいな感じだ。
役所には頭脳明晰でも閑職に追われた役人がいるし、サボる奴もいるし、賄賂を受け取る奴もいる。
町奉行所と南町奉行所の連携が十分でない所を、犯人に突かれて出し抜かれたり、
時代劇とはいえ現実味のあるトラブルとなっていて、キャラクターもそこら辺にいそうなのだ。
 
        なお、ブロ友さんの中には、完膚なきまでの地理音痴・歴史音痴の私が、
        時代劇キャラ(実在の人物)をよく覚えてられるな、と、いぶかる方がいるかもしれないが、
        浄瑠璃・浮世絵・茶道などは、私が唯一愛着を持つ歴史分野なのだ。 
        ちなみに、この時代だと蔦屋が好きだ。
        もっと前なら今井宗久、それより古くなると、後白河法皇かな。 
        彼らの共通点がわかった貴方は…………オタク仲間です
 
 
推理物としてだけみると、続編の短編集 『おこう紅絵暦』 『源内なかま講』 の方が謎解きが洒落ている。
『だましゑ歌麿』は刑事が主人公なだけに、直球勝負のハードボイルドだ……
政府の要人が絡んでくること、味方と敵が入り乱れていること、
悪意や私利私欲ばかりの犯罪ではないこと、などは、テレビドラマの『相棒』っぽいかな。
(テレビシリーズの水谷豊が本の帯に印刷されていて、それに引っ張られたせいもあるかもしれない)
 
面白かったです。
キャラクターたちを、つい、絵に描きたくなる小説でした。
 
 
…………明日(今日か?)も、会議で外出です。
何やら雑誌の取材も入っているようですが………