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読書録 『完四郎広目手控』 あるいは、広重&鳥獣戯画の日

集英社文庫 高橋克彦 『完四郎広目手控』
以前、『天狗殺し』を読んで気に入った、完四郎シリーズの第1巻。
 
 私がこのシリーズを探すきっかけは、どの話だったのだろうか。
 江戸の瓦版屋&イベントを仕掛ける広告代理店みたいな集団の話で、
 心の中で、江戸の電通ホイチョイか、と、思って読んでいた。
 駅構内の書店で、『天狗殺し』をぱらぱらめくって、この面子だ、と思った時にはうれしかった。
 
 すぐに読み終わり、同シリーズのほかの本を探したのだが、なかなか見つからない。
 amazonに頼るのもなぜか今回は気が引けて、だから、区の図書館で借りてきた。

 落語で客席からキーワード3つを出してもらい、
 それを入れ込んで即興で咄を作る三題咄というのがあるが、
 これは広重の絵画を二枚選び、それに合わせて小説を綴っているそうだ。
 それぞれの話の中に、広重の江戸百景のページが入れ込んである。 
 
 これは、左が第一話の梅……の一枚。 右が第二話の桜の一枚。
 借りた本で、返してしまうから、各話ごとの一言感想を書いておこう。
 
イメージ 1
 
第1話 梅試合 
 さりげないが、おもしろい。
 ワトスン役になる仮名垣魯文と、ホームズ役である完四郎の出会いの話になるので、
 謎解き自体はシンプルだか、完四郎の明晰さとシニカルさが、余すところなく書かれている。
 
第2話 花見小僧
 イベントを仕掛けて、成功させて、ちょっとだけ儲けて。
 学園祭の実行委員みたいな気分になる。 とても楽しい。
 
第3話 化け物娘
 謎解きは面白いが、普通に怪談
 高橋克彦作品であることを思い出した。
 謎解きに超常現象は使わないが、普通に超能力者や幽霊が出てこれるのだ。
 
第4話 雨乞い小町
 『天狗殺し』にも活躍(?)するお映が彼らの仲間になるきっかけの話。
 うん、ホイチョイ(←こら)の人たちは、仕掛けることに意義があって、
 だから小金程度は欲しいけど、政治や莫大なお金には興味がないんだろうな、と。
 
第5話 花火絵師
 …………不覚にも泣いてしまいました。
 江戸の花火の描写も、ビジュアルだなあ。
 江戸の絵師や、戯作者の名前がたくさん出てきて、ワクワクします。
 
第6話 悪玉往生
 そうか、ここでこの人を出すのか。
 ネタバレになるので軽くしておくが、政治舞台の歴史人物たちが出てくる。
 魯文達がいるのだから当たり前と言えば当たり前だけど、時代小説なんだよな、と、思い出した。 
 ところで、剣士な娘のオタク加減が伝染したらしく、剣術の流派が出てきた時点で、
 何気なくその先の展開が思い描けてしまった……
 
第7話 かぐや御殿
 完四郎に謎解きされる前にトリックがわかったぞ★
 一点、ちょっと推理物としては卑怯かな、と思ったのだが、
 完四郎を卑怯者(?)にすることで、ラスト一行で、推理小説としては限りなくフェアに落とした。 
 さすが高橋克彦、と、「写楽殺人事件」のファンである私は思う。
 
イメージ 2
 
第8話 変生男子
 だから……これって怪談。謎は本格推理で解いてもやっぱり怪談。
 最後に、泣かせる。
 
第9話 怪談茶屋
 ………で、こっちは怪談じゃない。
 
第10話 首なし武者
 う~ん。首なしで甲冑を着た遺体が出てきても、これも全然怖くない。
 いや、歴史好きだと、時代の流れとして暗澹たる気分になるのかな。
 9,10話は、少し高橋克彦っぽくない気がするが。
 
第11話 目覚まし鯰
第12話 大江戸大変
 二話連続で、安政の大地震の話。
 謎解きはないが、お映の予知したシーンから、地震の日を割り出そうとするのは
 ディックのマイノリティリポートを読み解くようである。
 武士に背を向けていただけの完四郎が、広目屋(新聞屋?)としての将来を自覚する話でもある。
 
 
     とにかく、とにかく、とにかく、すごく面白かったです。
 
 
                          
 
 
さて、そういうわけで、ほぼ今日一日の電車の中で読み終わってしまったのだが、
なぜかというと、今日は出勤前に常磐線で土浦まで行き、いったんもめんさんのお店にうかがったのだ。
 
ご実家の呉服屋さんで鳥獣戯画の柄の反物を仕入れたと伺い、「私も長襦袢を作っていただこう」、と。 
 
イメージ 3
 
日本最古(平安末期)の漫画みたいなこの巻物に描かれた動物たちを、可愛らしく、かつ、粋に散らした反物で。
 
 実をいうと広重にしても北斎にしても、面で描く西洋画ほどには魅力を感じていなかったのだが、
 線描メインでしかも印刷を前提とする版木でこれを描き出すのは、すごいことだな、とは思っていたのだ。
 ふと考えれば、江戸よりはるか昔、平安時代鳥獣戯画が、こんな動きのある動物たちを描いている。
 
 白黒で、線描で、擬人化された動物は、ちゃんと兎は兎、カエルはカエルになっている。
 広重も雪の境内や、木の根元の狐火や、ちょっと調べてみれば、富士山ばかりの絵師でははないのだな。
 こんな昔から、日本には漫画文化の下地があったのだろうか、と、思う。
 
 
鳥獣戯画の反物は、結局、淡い黄色のものを選んだ。
          http://blogs.yahoo.co.jp/maenogofuku/25633874.html  
出来上がるのが楽しみ~
 
他にも、自分のサイズに直したかった母の着物を持ち込んだり、いろいろお願いしてきました。
家に戻って、持ち込んだ帯などをしまおうとしたら、母の着物をもう一枚発見。
洗い張り+私のサイズに仕立て直しの候補♪
 
      「・・・・・・・・・・・・・(って、いきなり散財しまくるのもなあ)」  
 
ええ、と。 いったんもめんさん、今後ともよろしくお願いします。