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読書録 『迷宮』

研究所で売っている、ツインチョココロネ。(←研究所で開発作成の意味ではないです。)
とてもとても小さいのだが、たまに食べたくなる。

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新潮文庫 中村文則 『迷宮』 職場までの一往復で読了。
朝、小銭が欲しくて駅構内の書店(例の北陸新幹線のブックカバーをくれる店)に寄って、
とても薄い文庫本を手に取った。

手に取った時点では、刑事ものだと思っていたが、
裏表紙の説明を見たら、若い芥川賞作家らしい。
推理小説でも刑事ものでもないが、この人の作品って、たぶん一冊も読んでないな、と、購入。

胎児のように手足を丸め横たわる全裸の女。周囲には赤、白、黄、色鮮やかな無数の折鶴が螺旋を描く。
都内で発生した一家惨殺事件。現場は密室。唯一生き残った少女は、睡眠薬で昏睡状態だった。
事件は迷宮入りし「折鶴事件」と呼ばれるようになる。時を経て成長した遺児が深層を口にするとき、
深く沈められていたはずの狂気が人を闇に引き摺り込む。
善悪が混濁する衝撃の長編。                Bookデータベースより。



えええええええ………
嘘はついてないんだろうけど、このあらすじは変だなあ。

私小説のような流れなのだが、文体は比較的平たい口語文で、読みにくくはない。
中2病風のひねくれた主人公の心証が語られるが、ギリギリのところで不快でないのは、
冴え冴えと冷たいだけで、中二病特有の顰感がないからだろう。 
精神の腐敗臭がない。

この感性は嫌いじゃないな、と、思う。

主人公は幽体離脱したみたいな視線で周りを見ていて、それは病んでいる風にも描かれているのだが、
諦めを飼い慣らしている世間というものににスポイルされていないだけで、
いっそ彼のほうが病んでいない気もする。
その証拠に、冷たいままの文章のなかに、不意に、グッと熱いものがあったりする。
面白い。

さすが芥川賞…… 芥川龍之介太宰治三島由紀夫のような、芸術方向のピリピリ感といおうか、
この方向で研ぎ澄まされたら、きっとあんなふうになるよね、と思う。
この人も自殺しちゃうんじゃないか、という、バランスを欠いた綺麗さが伝わってくる。

出版社のこの作家の担当はいろいろ気苦労が絶えないんじゃないだろうか
なんて、余計なことを考える。


ところが。

きわどいところで繊細さとオリジナリティを保っていた小説は、後半、見る影もなく崩れてしまう。
面白くなくはないし、迷宮入りだった事件を解決(謎解き)しなければ、話が落ち着かないこともわかるのだが、
生き残りの当事者が謎解きを説明してしまうのも(推理小説だったら)許しがたいし、
心の奥に押しとどめていた見えない分身が、性交の際に出てくるのは心理小説としてありふれている。
主人公のギリギリ感も、後半になると影をひそめて、少し現実感がなくて気難しい人に成り下がってしまう。

何よりも、誰の作品にも似ていないオリジナリティが、後半に消えてしまったことにより、
それぞれの分野での有名作家と比較されることになり、この作品の突出感が消えてしまう。

現実の迷宮(謎解き)だけをメインに持ってくるか、
主人公の心の迷宮(二重人格的な深層)をメインにするか、どちらかにすればよかったのに、
何となく双方ともが中途半端になってしまっている。

もったいない。実にもったいない。


とはいえ、この人の文章は気に入ったので、
評判のいい 『掏摸』 でも探してみようかな。 と、思う。




なお、今日はお抹茶BOYの遠足でした。
朝早く起きてお弁当を作ったから、もう眠い………

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小学6年生、たくさん食べるようになってきてます。

遠足なのにおにぎりじゃないの? とか、
ご飯にパスタって、バランス悪そう、とか思うんだけど、
いずれも本人のリクエストです。