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読書録 『22年目の告白 -私が殺人犯です-』

講談社文庫 浜口倫太郎 『22年目の告白 ―私が殺人犯です―
先月公開で映画になっているので、その辺にポスターだの書店のポップだのが上がっている。

少し行き過ぎ感があるぐらい、エンターテイメントだなあ、と思う。
そしてその行き過ぎ感は、小説を読み進むと、なるほど(あるいは「やっぱり……」)と落ち着く。
ああ、しかし、文庫本の表紙が藤原竜也になっていたから、それ以外で曽根崎をイメージできねぇ

小説を読んだものの、映画は観てないのにこんな風にいうのは何だが、
藤原は安定した演技力というか、こういう役をさせたら絶対ハマるという安心感がある。
正義にも悪にも振れる顔、ってあるんだよなあ、と思う。

(この映画の刑事役、伊藤英明は『悪の経典』のハスミン役だったわけだけど、ハスミンは藤原竜也がいいよなと思ってた。
ついでに、『模倣犯』の網川ピースも、最後までがんばってくれれば、藤原竜也でよかったんだと思う。
途中でヘタレたから中居正広でちょうどだったのかもしれないけど)


もうね――私が殺人犯です――は、アテ書き(演じる俳優を想定して小説を書く)したみたいに
藤原竜也がぴったりなんだ。


ただ……少なくとも原作を読む限り、どんでん返しがどんでん返しになってなかったんだナ、私には。

<以下、ネタバレるので読みたい人だけ反転してどーぞ>

サイコキラーの被害者遺族たちの職業が、とてもとても作為的な気がした。
遺族に、やくざと、医者がいて、それから刑事がいる。
絶世の美男である主人公(自称殺人犯)が、小説を下げて出てきて、
しかもとにかく人前に顔と名前を晒したいといってきたら、そりゃあ誰かに見せて、真犯人を炙り出すためで、

見せつけるために顔を作ったんだろうな、とわかるし、
ああ、そういえば都合のよいことに医者もいたじゃん。となる。

警察しか知りえない情報を書いているから、犯人に違いない、というのも、
警察が小説を書いていれば、警察の知りえた情報が書かれているのは当たり前で。

そういえば刑事さんもいたな、と。

しかも、被害者遺族の刑事さんは読書大好き、となりゃあ、もう、からくりは見えた、と。

    ――私は殺人犯ではありません、被害者遺族です―― というのはすぐに想像がつく。

真犯人のキャスターも、若いころの相棒の死の話が、
あまりにも事件をトレースしすぎていて、こいつ怪しくね? となる。

だから、唯一のこの小説の引っ掛けは、 牧村刑事記述部分の、叙述トリックなんだよ……



さて、これは読まれてもいい部分なので、黒文字に戻す、が。

この小説のマイナスポイントを探すとすると、
もう一人の主人公である編集者に、年齢相応の若さや、こだわり、意地を感じなかったことだ。
ハイミスの変人女でもよかったし、入社したての本オタクなら、もっと活動してほしかった。
主人公にしては中途半端な気がした。
それは藤原……じゃなかった、曽根崎や刑事が目立ちすぎるせいもあるんだけど。

もう一つは、犯人の被害者の選び方。どこかに一言、くだらない理由でいいから、
「目に入ったやつならだれでもよかった」 「○○が気に入らなかった」 とでもつけておいて欲しかった。
じゃナイト、ものすごくご都合主義的に被害者遺族が揃いました、になっちゃうと思うんだ。


でも、とにかく、面白かったです。映画向きだと思います。
すばらしいキャスティングなんだろうな、とも思います。