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書いてなかった読書録 『怖い絵』

角川文庫 『怖い絵』 中野京子  たぶん2年位前に読了。
上野で展示会が開催されているので、それでテレビなどで取り上げられているのだと思う。

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ドラローシュの 「レディ・ジェーン・グレイの処刑」 が来ているから、それがメインだろうか。
本来は英国においてある絵だと思うが、どこか他に貸し出されていたときに見た気がする。

さて、この本の読書録を書きそびれた理由もなんとなく思い出した。
前に毒舌読書録を書いた久世光彦の 『怖い絵』 の時と違って、
この本には知らない絵がなかったんだよ……
久世光彦の本は、絵以外のサイドストーリーのほうは蕁麻疹が出そうになるくらい気持ち悪かったけど、
こっちの本はこっちの本で、絵画を趣味にしていない人のための導入本のようで。
そもそも、怖いのは絵ではなく歴史のほうだし、
特定層に興味をもたれそうな絵だけ選んで、解説しただけみたいになってるし。

つまり、絵画大好き人間にとっては、内容が薄い。

たとえば上のドラローシュの絵画の説明も、すでにどこかで見知っている有名なものだ。
いわく、断首するときに刃こぼれしないようにアクセサリーを外させてるとか、
足元に血を吸わせるための藁が敷き詰められているとか、次女が横で嘆いているとか処刑人が辛そうだとか、
反逆罪で殺される王妃は17歳だとか、王妃の座について一週間だとか。(←記憶で書いてるのでいい加減)

なお、ドラローシュで一番好きなのは、入水して死んだ娘【若き殉教者の娘】だ。 
ルーブルで観たときは、この絵のタイトルを知らなかった。作者を見るのも忘れた。
いろんなパターンを描いているようだが、一番有名なのがたぶんルーブルにあるものだ(下の絵ではない)。

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怖い絵というと、キリスト教系宗教画が、どれも強烈だ。
ルーベンスは特に好きではなかったのだが、ドイツで見たときに、
その残酷さと説得力に、後頭部をぶん殴られたみたいな衝撃を受けた。

これまで、一番怖いと思った絵も、宗教画だ。
ブリューゲル(父)の絵が、一番怖いんだが……
絵には、壷や小麦粉の袋を奪われる村人の様子が描かれている。犬が袋を引っ張ったりしている。

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実はこれは、聖書に書かれた、新しい王(キリスト)がベツレヘムに生まれたと聞いて怯えたヘロデ王が、
ベツレヘムの2歳以下の男児を全て殺害させた、というエピソードの絵だ。

ブリューゲル(父)はデッサンの状態で赤ん坊の遺体を小麦袋に変えたのか、
描きあげた後に、上から描き足して隠したのか知らないが、そのせいでなにやら不自然な絵になっている。
小麦袋を槍でつつく必要はないし、犬も袋を引っ張らないだろうし、
膝に小麦袋を乗せ、まだ奪われてないのに号泣する女は意味がわからん。

案の定、ブリューゲル(息子)が模写した絵から、父親の絵のオリジナルが判ることになる。

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小さい袋は、みんな赤ちゃんだったんだよ……



って、この絵も 『怖い絵』 シリーズに取り上げられていますね。
今は、ブームに乗って、中野氏は簡単な解説を書きまくっているのではないかと思います。

こういうブームのおかげで、美術館が儲かって、鑑賞環境が良くなるのは良いことではないかと思います。
いっそ、欧米みたいに閉館30分前は無料とか、学生は無料とかにしてもいいのではないかと思います。
でも、日本がはじめそうなのは、高齢者無料かな…… いや、いいんですけども、静かなら。

美術館でしゃべりかけられるのは嫌いだし、
混雑してしかもざわついているのはもっと嫌なんですけどね。



そうそう、そのうち、絵金(弘瀬金蔵)を入れてほしい、と思ったり。 
地方再生にもなるし(謎)。